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環境課題への取り組みを評価するCDPとは?
質問書の内容から対応のメリットまで詳しく解説

GXコラム

CDPの質問書に回答することで、自社における気候変動リスクとその影響を認識するだけでなく、環境経営の取り組みに対するポジティブなイメージを投資家に与えることができるといったメリットも期待できます。本コラムでは、CDPの目的やスコアの算出方法、質問書の内容、そして実際にNECでCDP回答を行うにあたっての課題感と、課題解決に向けた取り組みについてご紹介します。

INDEX

  1. CDPについて(目的、開示対象、スコアの公表方法)
  2. CDPスコアについて
    最終スコアの算出方法と必須要件
  3. CDPスコア質問書の内容
    質問回答のメリット
    日本におけるCDP質問書送付対象企業とセクターごとのスコア概略(気候変動分野)
  4. CDP回答に向けて
    CDP回答の実務対応における課題
    課題解決に向けたNECのクライアントゼロの取組み

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1. CDPについて(目的、開示対象、スコアの公表方法)

CDP (Carbon Disclosure Project、旧称:カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト) は、質問票を通じて企業の環境関連情報の開示とパフォーマンス評価を行う国際NGOです。CDPは「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」ことを目的に活動しています。そして、その目的の達成に向けて企業に対して質問書を送り、その回答でスコアを付与しています。

一方、企業に投資する投資家は、より健全な環境活動をおこなっている企業かどうかを見極めて投資を行うために、データの開示を要請し、適切に開示されたデータに基づき意思決定を行っています。そのため、未回答の場合、最低スコア「F」が付与され、CDP公式ホームページや年次レポートで企業名が公開されます。そうなった場合、結果的に投資家に対して、「環境経営」や「情報開示」に取り組む姿勢がない企業という印象を持たれかねません。

図1:CDPの情報開示の流れ

さらに、規制当局からの要求には、気候移行計画や森林減少、さらにはサプライチェーンなどに関する義務も含まれます。現在は多くの大規模市場や新興市場で、主要な環境データの報告を行うことが義務付けられています。

<開示対象、ステークホルダー>
機関投資家、サプライチェーン

<スコアの公表方法>
質問書への回答内容(最終的なスコア)は後日CDPウェブサイトで開示されます。
開示先のページ:new windowCDPスコアとAリスト - CDP

2. CDPスコアについて

CDPスコアは、その一環として、企業の水資源管理、気候変動対策、そして森林保全に対する取り組みと透明性を評価するもので、「気候変動」、「森林」、「水セキュリティ」の3つの主要なプログラムが存在します。
また、情報開示・認識・マネジメント・リーダーシップ各レベルのスコアを算出後、各レベルの閾値に従って最終スコアが決定されます。

図2:CDPスコア
出典:PDFCDP2024スコア解説資料.pdf

【最終スコアの算出方法と必須要件】

回答組織には、採点された環境課題分野ごとに、A から D- までの最終スコアが割り当てられます。 各レベルには2つのスコアが用意されており、そのスコアリングレベル内で獲得したポイントのパーセンテージに基づいて割り当てられます。

また、CDPのスコアリングでは、「必須要件」も評価体系に取り入れています。2024年、CDPは気候変動のスコアリングにおいて「認識」「マネジメント」「リーダーシップ」の各レベルでの必須要件とAリストに入るための新たな要件を導入しました。また、フォレストと水セキュリティのスコアの必須要件は、リーダーシップレベルの適格性に対してのみ適用されます。

表1:環境課題分野/レベルごとのパーセンテージとスコア
出典:PDFCDP 2024コーポレート完全版質問書 スコアリングイントロダクション

3. CDPスコア質問書の内容

質問書全体の構造は以下のような構成になっています。(図参照)
スコアは環境課題ごとの基準を用いて環境課題ごとに付与されます。

環境課題へのインパクトが大きいセクターに該当する企業に対して、セクター別の質問が割り当てられます。また、質問書セクターごとに、スコアリング基準やカテゴリごとの重みづけが設定されています。

図4:2024年 質問書セクター(環境課題別)
出典:PDFCDP2024スコア解説資料 2025年2月7日 CDP Worldwide-Japan

<各分野の質問書概要>

(1)気候変動質問書
CDP気候変動質問書は、エネルギー、製造業、運輸、小売、金融など広範な業種を対象に、企業の気候変動対策を評価するためのフレームワークです。

主な質問項目には、Scope 1(直接排出)、Scope 2(間接排出)、Scope 3(サプライチェーン排出)の温室効果ガス(GHG)排出量報告、科学的根拠に基づく削減目標、再生可能エネルギーの導入状況、ガバナンス体制などが含まれます。これらの開示により、企業は気候変動リスクを管理し、サステナビリティ推進に向けた具体的な行動(例:Scope 3削減や再生可能エネルギー100%目標)を促進します。

このフレームワークは、企業の透明性を向上させ、投資家や消費者が環境パフォーマンスを比較・評価しやすくします。特に、ESG投資の判断材料や消費者からの信頼獲得に寄与し、財務リスクの可視化と長期的な安定性を実現します。

参考リンク:PDFCDP気候変動質問書 導入編

(2)ウォーター質問書
CDPウォーター質問書は、企業の水使用量と水リスクを管理するための包括的なフレームワークです。主な対象業種には製造業、農業、エネルギーなどが含まれ、質問項目には水使用量の測定方法(水源別・用途別の定量化手法)、水リスクの評価(物理的リスク=渇水・洪水や規制リスクの分析)、節水対策(効率的な水利用や再利用の取り組み)、排水管理(水質基準の遵守と環境負荷低減策)、地域コミュニティとの協働(水資源共有や地域プロジェクトへの参画)などが含まれます。

このフレームワークは、企業の水使用の持続可能性を高め、サプライチェーン全体の水リスクを管理するとともに、ステークホルダーからの信頼獲得と社会的責任の履行を支援します。

参考リンク:PDFCDP水セキュリティ質問書 導入編

(3)フォレスト質問書
CDPフォレスト質問書は、企業の森林資源に関連する環境データを収集し、持続可能な管理を促進するためのフレームワークです。主な構成要素には、対象範囲(木材生産や製紙など森林関連業種)、質問項目(持続可能性、生物多様性、違法伐採防止、サプライチェーン管理、気候変動対策)が含まれます。重要な質問項目には、森林面積の管理状況、認証制度の取得、違法伐採防止策、生物多様性の保全、気候変動緩和策、地域コミュニティとの協働、サプライチェーンの透明性などがあり、これらは企業の財務的リスク、レピュテーション、競争優位性に影響します。

参考リンク:PDFCDPフォレスト質問書 導入編

【質問書回答のメリット】

CDP質問書に回答することで、企業内での気候変動リスクとその影響を認識し、環境に配慮した企業へ成長していくためのベース情報となるのはもちろん、以下のメリットも得ることが期待できます。

  1. 投資家からの環境経営への取組みに対するポジティブなイメージ
  2. 規制への対応への準備
  3. 資金調達に有利

【日本におけるCDP質問書送付対象企業とセクターごとのスコア概略(気候変動分野)】

CDPは2022年度からは、気候変動に対する開示要請の対象企業を、東京証券取引所のプライム市場上場企業全社(1,834社:2023年7月末時点)に拡大しています。1,834社に回答要請を出したうち、回答企業数は1,182社(回答率64%)、自主回答を含める全回答企業では1,244社が回答しています。

この表に示されるとおり、様々な業種が回答を示していることから、CDPに回答すること、さらにはより良いスコアを獲得できていることを示せることがその企業にとっての環境価値を可視化するためにますます重要になっていくと考えられます。

表2:プライム市場上場企業セクター別回答企業数・A/A-スコア企業数
出典:PDFCDP気候変動レポート2023:日本版

セクター 回答企業数 Aスコア A-スコア
アパレル 13 0 1
バイオ技術・ヘルスケア・製薬 43 8 5
食品・飲料・農業関係 49 6 12
化石燃料 10 1 2
ホスピタリティ 24 0 2
インフラ関連 90 16 14
製造 352 34 50
素材 143 6 27
発電 14 0 6
小売 142 7 15
サービス 255 20 33
輸送サービス 47 5 7
総計 1,182社 103社 174社

4. CDP回答に向けて

2025年回答スケジュールはこのようになっています。

出典:new windowDisclosure Cycle 2025 - CDPをもとにNEC作成

【CDP回答の実務対応における課題】

CDPは回答が公表されるだけでなく、毎年質問内容に変更もあるなか多岐のカテゴリにわたる質問書に回答していく必要があり、回答を準備する実務者にとっては以下のような課題があるのではないかと考えます。

  • CDPだけでなく、サステナビリティ情報開示では複数の開示基準(ルール)や関連法規制が存在しており、非常に複雑
  • 企業に求められる開示項目も、気候変動のみならず、近年は自然資本影響の開示が求められるなど、より複雑化
  • 開示要請(ルール、規制、格付)に追われ、自社情報を苦労して集めて情報開示を行うも、良い評価を獲得できない
  • このような状況下、多くの企業は開示基準や規制動向に合わせた自社情報の収集・開示、前年の質問からの変更点の分析など“守り”の対応に追われ、質の高い他社の情報開示を参照し、企業価値向上のための“攻め”の対応ができていない
図5:サステナビリティ開示要請に対する課題イメージ

【課題解決に向けたNECのクライアントゼロの取組み】

NECでは、上記で示した課題に対して、生成AIを活用した取組みを行っています。ステップ1として、生成AIの社内活用が可能なNEC Generative AI Service(NGS)を活用した取組みを開始しています。

今後は、生成AIの活用範囲を拡大してサステナビリティ情報開示の効率化・高度化を進めていき、そのノウハウをサービスとしてご提供していくことを検討しています。

さらに、具体的な開示レポート作成業務において、NECではAgentic AIを活用することで、TNFDレポート作成業務の効率化と高度化を目指します。

【関連ソリューション】
環境情報管理 GreenGlobeXシリーズ
CO2排出量、化学物質、廃棄物、水使用量などの環境情報、さらにソーシャル・ガバナンスの内容も含めた非財務情報を効率的に一元管理するソリューション

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