多様性を生かせる場でエンジニアとしてのスキルが「価値」に
田中 秀和 | Tanaka Hidekazu
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入社以来エンジニアとして、ソフトウェアのUI開発にも関わってきた田中さん。エンジニアのスキルを持ってデザインセンター(現コーポレートデザイン本部)に異動し、異なる視点でいろいろなUIデザインの設計に関わり、内外から注目を集めています。そんな田中さんに、自らのキャリアデザインと仕事に対する思いを語っていただきました。
UIデザインへの思い
私がNECに入社したのは、「自分の作ったものを多くの人に利用してもらうことで社会貢献したい」という思いからです。それはエンジニア時代も、コーポレートデザイン本部にいる今も何も変わりません。
入社してから、Javaのエンジニアとして10年ほどやってきました。特にチームでは、クライアント回りの技術を担当していたこともあり、UIに携わることが多かったのです。しかし、Java という技術がだんだんコモディティ化(一般化して付加価値をなくすこと)して、Java技術の専門家の必要性が薄れてきました。次のステップとしてどんな活動をしていくかを考えていたタイミングで、自社ソフトウェア製品のUIをもっと使いやすくしようという「UI改善プロジェクト」に参加しました。そこで、デザインセンターのデザイナーたちと一緒に仕事をする機会が生まれたのです。
新たなステップに
UI改善プロジェクトに一定の目処が立ち、そのまま前の組織に残り別の仕事をするか、他の組織に移って UI デザインの仕事を続けるかという選択になりました。そこでソフトウェアの UI デザインだけじゃなく、様々なデザインと関われる横断組織のデザインセンターへの異動を決めたのです。
その判断には、UI デザインのスキルを上げようと一時期出向していたグループ会社、NECソリューションイノベータでの経験も影響しました。そこでは自社だけでなく、他社の製品・サービスの UI デザイン・評価を行えました。例えば工作機械の UIデザインとか、自社にはない製品に対してのデザインやその評価などに関わらせてもらえました。自分はこういう組織でやった方がいろんな活動ができるかなと思ったのです。
開発者とデザイナーとのブリッジに
私は実現可能なデザインかどうかの判断、技術視点でのデザイン提案、デザインの検証(プロトタイプ制作)などを主に受け持っています。コーポレートデザイン本部には、これまで私のようなエンジニア出身というデザイナーはいませんでした。でも、一緒にプロジェクトに関わったことのあるメンバーもおり、違和感はありませんでした。
この組織の中で、自分の価値のひとつは、「開発者(技術者)とデザイナーとのブリッジ的な役割を果たせること」だと思っています。実際、エンジニアとデザイナーが話してみると、やっぱりそこにはギャップがあることが多いのです。自分が両方の見識や内容を理解し、さらに両方の主張を汲んだ上で、話をうまく進めていくことが私にはできると思っています。
エンジニアならではのスキルを活かしてプロジェクトを前に進める
現在担当している具体的な業務をひとつ上げると、「マルチモーダル顔・虹彩認証による決済端末」のUIデザインです。精度よく人を識別するためには、人の虹彩をより精細に撮影する必要があります。精細な虹彩を撮影するために端末側でできることには限界があり、利用者側にも協力してもらう必要があります。利用者に負担をかけず、スムーズに誘導できるようデザインするために、かなり試行錯誤しました。

社内で実証実験を行い、フィードバックを受けてまた修正して、リリースするというプロセスをここ1年で3、4回繰り返したでしょうか。その間、研究者、開発者、デザイナーとディスカッションし、そこから数多くの試作を行いながら、デザインをブラッシュアップしました。
その中で、私がプログラムを組んでパソコンのカメラを使って動作検証できるプロトタイプを作成し、各メンバーのパソコンでも動作確認ができるように共有し、意見を交わすということもやりました。現在、みんなリモートワーク中なので、そういう工夫も必要でした。20パターンぐらいは作成したでしょうか。こういうことができるのもエンジニアである自分の価値かなと思います。苦労の末、その決済端末は大きなイベントで無事お披露目され、大勢の人の目に留まりました。

プロトタイプ
誰でも溶け込みやすい風土
今お話ししたように、リモートワーク下でも、問題なくコミュニケーションがとれ、仕事ができています。もちろん、実際に会って話した方がいいこともあります。そこは機会を増やしつつも、現時点でもリモートでできることは多いので、仕事に障害はないですね。
また、ここ1、2年で若いメンバーがどっと増えました。私が異動したころは、みんなコツコツ自分でデザインしているスペシャリストの集団という感じもあったのですが、現在は多様なメンバーがチームで動く、とても溶け込みやすい組織になりました。自分も若いデザイナーを尊敬しています。だって彼らは私にはないデザインスキルを持っているんですから。
「自分の作ったものを多くの人に利用してもらうことで社会貢献したい」という思い。今はそれをコーポレートデザイン本部で実現しているところです。エンジニアだった自分を受け入れて、その異なる視点を尊重してくれるので、本当に多様性を大切にしているのだと感じます。

田中 秀和 Tanaka Hidekazu
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