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「攻め」「集中」NECの知的財産戦略 評価はトップクラス、中計達成向けビジネス貢献


社運をかけた開発プロジェクトが知的財産戦略のミスで台無しに!知的財産部門を舞台にしたテレビドラマの一場面ですが、これは大げさな話ではありません。知的財産戦略は今や、会社全体の経営に大きな役割を果たしています。NECでも重点領域に力を入れたメリハリのある知的財産戦略を展開し、新規事業創出も支援。第三者機関からも高い評価を得ています。製品・サービスを「守る」知的財産活動だけではなく、新しい活用を積極的に提案する「攻め」の知的財産活動で社会価値の創造に貢献するNECの知的財産戦略とは。
メリハリつけた戦略 「知財リソース」を重点領域に集中
どれだけ優れた技術でも、「パクリ」と言われて使えなかったら意味がない。研究や技術をビジネスとして社会の役に立て、「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会」を目指すNECグループのPurpose(存在意義)実現のために「NECの誇る技術を特許で活かす」。この知的財産戦略が欠かせません。この戦略を詳しく見ると、「メリハリ」と「攻め」、二つのキーワードが浮かんできます。
「メリハリ」は選択と集中です。2025中期経営計画の達成に向けて、成長事業となるDX(デジタルトランスフォーメーション)などを牽引する技術領域を選択し、「知財リソース」=知財の人材や予算などを集中させています。知的財産部門自体も、研究開発や新規事業開発と同じグローバルイノベーションビジネスユニットの配下に。その結果、この領域の特許出願件数が全体に占める割合が45%(2017年度)から74%(2021年度)に増えました。
メリハリをつけた戦略の成果は第三者機関からも高い評価を受けています。例えば、世界で優れた知的財産活動を実施する企業に与えられる「Clarivate Top100 グローバル・イノベーター」を12年連続受賞しており、初回からの連続受賞は世界でも18社のみです。


DXをリードする生体認証×ID連携 出願数でも世界トップクラス
NECが誇る生体認証を活用したID連携またはCX(カスタマーエクスペリエンス)に関する分野では、2023年に日本の特許総合力ランキングでトップ評価に。特許分析会社のパテント・リザルト社が特許の注目度などを調べた結果です。国際特許出願数では、生体認証+映像分析+AIの分野で世界的にもトップクラスとなっています。
第三者からの高い評価は、NECの特許の力が、社会で役に立つサービスを提供することにつながっているからこそ得られたものです。このために集中した知財リソースの代表は「人材」。もう一つのキーワード「攻め」の戦略を担う人材が、NECには何人も存在します。
「NECの技術はすごく優れているのにビジネスに結びついていない。私が生体認証分野の知財担当になったのは、まだそういわれていた頃でした」
こう話すのは、生体認証分野のID連携の高評価に貢献している知的財産部門の森祐輔です。森は、生体認証の中でも特に顔認証を共通IDとして様々なサービスをつなげ、ワクワクする新しい体験を提供する「NEC I:Delight」において、技術を組み合わせたソリューション関連の特許を数多く出願し、取得するという活動を推進しています。

「待っていても来ない」技術を社会価値サービスにつなげるための提案
森が生体認証分野の担当になったのは2017年。NECが「知財リソースの選択と集中」にシフトし始めた時期でもあります。公共交通やホテル、マンション、スタジアムなど、今でこそ顔認証は身近なサービスに導入され始めていますが、この頃はまだ用途は限定的でした。暮らしをもっと便利にする伸びしろが、この技術にはあるはず──。
「事業化の中では特許出願が後回しになることが多い。だからこそ、初期段階で特許出願を積極的に進めれば優位性が増し、結果として事業拡大を加速させることにつながります」と森は力を込めます。
「事業部門から相談されるのを待っていたら遅い。立ち上げ段階からヒアリングをして提案します」。森が生体認証分野で出願に関わった特許は350件以上、審査中の案件もありますが、既に特許になったのは92件。ほとんどが森を含む知財メンバーからの提案です。
例えば、成田空港や羽田空港の「Face Express®」。国際線の搭乗手続きを顔認証で行えるサービスで、2021年に運用が始まりました。初期段階から事業部門や研究所に加え知財メンバーも参画。「導入内容を理解して特許で押さえられるところを見つけ、出願を同時進行で進めました」。データベースの登録が多くなると精度が落ちるのでFace Express®の顔認証精度を維持するためのデータベースの工夫も、森たちの提案で特許になったものの一つです。


NECの知財戦略の強み、それは「横断的に動けること」と森は語ります。かつては部門ごとにいた知財担当者を技術領域ごとに配置。生体認証一つとっても、官公庁や民間、民間でも施設や交通機関など担当する事業部門は異なりながら、サービスに結びつけるための課題には共通する部分もある。そこで、知財が橋渡し役を担うことができます。
「一つの技術や一つのサービスでは生み出せないものも、NECグループ全体の力をつなげれば実現する」。社会価値創造に向けた知財の戦略と人材の活躍から今後も目が離せません。
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