Japan
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成田国際空港様「Face Express」
日本発の、世界初を。
空港における、旅客体験を変革せよ。


プロジェクトメンバー
石川 真澄
社会公共ビジネスユニット
第二都市インフラソリューション事業部
2004年に新卒入社。大学では映像解析の研究に携わり、その内容を社会に役立てたいという思いでNECへの入社を決意。技術を究めるだけでなく、技術を社会に還元したいという思いがあった。
大谷 巧
社会公共ビジネスユニット
第二都市インフラソリューション事業部
2002年に新卒入社。人々の手に触れてもらえるプロダクトに携わりたいと、モバイル関連の事業部へ。モノからソリューションへという時代の流れに合わせ、現在のプロジェクトに参画。
小野里 宗明
社会公共ビジネスユニット
第二都市インフラソリューション事業部
2015年に新卒入社。大学では真正粘菌の研究をしていたが、内にこもる研究ではなく外に出てオープンな経験を積みたいと就職を決意。顔認証技術を軸にしたスタジアムソリューションを提供していたNECに興味を持ったことがきっかけとなり入社へ。
笹本 武史
社会公共ビジネスユニット
第二都市インフラソリューション事業部
2009年にキャリア入社。航空会社のIT部門やコンサルティングファームで活躍。航空という軸で、さらに広く社会に影響を与える仕事がしたいとNECに転職。
※50音順
※2021年12月公開。所属・役職名等は取材当時のものです。
プロジェクトムービー
プロジェクトストーリー
空港から混雑・行列をなくす。
挑んだのは、旅客体験の変革。
プロジェクトの始まりは、2018年の秋にさかのぼる。新型コロナウイルス感染症の拡大以前、世界の旅行客数は増加の一途をたどり、どの空港でも混雑緩和が大きな課題となっていた。「入国・出国のプロセスが煩雑で、ゲートの行列は恒常化していました。当時インバウンド需要が右肩上がりだった日本も例外ではありませんでした。保安検査場の行列は、多くの人が経験したことがあると思います」と語るのは、プロジェクトマネージャーを務めた笹本だ。世界的な需要増加を受け、航空運用のルールなどを決定する国際航空運送協会「IATA」が顔認証や生体認証技術を活用した搭乗手続き「One ID」を提唱。日本最大の国際空港である成田国際空港もまた、このコンセプトを体現することが大きなミッションになっていた。「お客さまのご要望は、2020年に開催が予定されていたスポーツ世界大会までに、世界に先駆けてOne IDを導入すること。これはNECの世界一の顔認証技術、そして航空事業における実績の高さが大きな強みになると思いました」と当時を振り返る笹本。しかし、どんなに技術力があっても、同プロジェクトは世界の「先例」となるもの。正式受注した後に、その実現がいかに困難なものであるかが浮き彫りになっていく。笹本は「商用稼働しているものとして世界初である以上、どこにも参考事例と呼べるものはありません。つまり自分たちが手探りで先例をつくる必要がある。先日、改めて計算したのですが、サービス開始までの打ち合わせは実に百数十回に及んでいました」と回想した。

「One ID」を実現するため、
数えきれない想いをひとつに。
成田国際空港の運営には、数多くのステークホルダーが関わっている。そして年間の利用者は4100万人(※)を超える。プロジェクトには多種多様な部署のプロフェッショナルが関わり、JALやANAなどの各エアライン事業社もメンバーとして名を連ねる。「ステークホルダーの多さ。これが最大のハードルだったと思います。システム発注元の成田国際空港様だけでなく、システムを利用する航空会社様など、ステークホルダーとの仕様調整が必須でした」と語るのは、笹本とともにプロジェクトマネージャーを任された大谷だ。「それぞれの既存システムとの連携だけでなく、主要な設備をつくっている海外メーカーと共同で開発を進めなければなりませんでしたし、個人情報の取扱いにおいては航空局や個人情報保護委員会の方と協議しなければなりませんでした。もちろん、そのすべてにおいてIATAが定める航空業界の規約に準じる必要もあります」と話す大谷に、顔認証の現場最適化を手掛けた石川が続く。「成田空港は、世界中の人々が利用します。顔の特徴や肌の色も多種多様です。さらに、場所や時刻によって、窓から差し込む太陽光やダウンライトの強さと角度が異なるため、撮影された顔の明るさや影の度合も異なります。空港という特殊かつ複雑な環境のなかで、どのようにして顔認証の精度を高めていくのか。どのようにしてスムーズな旅客体験を創造していくのか。環境が違っても、同じ精度で顔認証を実現していく。そこが非常に重要なポイントになっていました」。
※出展:国土交通省「平成30年度(年度)空港別乗降客数順位」より

国境を超えた緻密な仕事が、
日本発・世界初を生み出した。
当初から明確な仕様があったわけではない。プロジェクトチームはクライアントと膝を突き合わせて、約1年かけて丁寧に一つひとつニーズを洗い出していった。しかし、仕様が固まったあとも一筋縄ではいかない。「海外メーカーとの共同開発では、言語や価値観が異なるなかでハードなネゴシエーションをすることになりました」と語るのは、サーバーやネットワークの構築を担当した小野里だ。航空業界では、世界中の各航空会社が「コモンユース」という発想で、搭乗システムの共有ができる仕組みを構築している。それゆえ、既にコモンユース環境を提供しているベンダーは欧米企業が中心となっている。「各国に現地法人を展開していることもNECの強みのひとつ。そのおかげで、ゲートなどのタッチポイントごとに世界中の技術力を必要に応じて結集し、インテグレートすることができました」と小野里は語る。日々、イギリスやアメリカ、オーストラリア、香港の企業と協議しながら、「IATAの規約に則っているか」「動作確認でバグが出ないか」と何度も調整していったと言う。さらに言葉を石川が引き継ぐ。「顔認証では、画像品質が均一となるように、120以上のチェックポイントのカメラを適正な露出に調整。光が強すぎる場所では、できるだけ景観を損ねないように遮光カーテンやパーテーションなどで対策を施しました」。早朝のフライトも想定し、ときには朝4時に朝日の状況を確認することもあったと言う石川。こうした緻密な仕事の積み重ねが、世界初のサービスの品質を生み出すことになる。

旅客体験の変革。
そして顧客体験の変革へ。
2021年7月19日、「Face Express」の運用が始まった。そこには立ち止まる旅行客も、エラーに困惑する旅行客もいない。報道陣のカメラには「快適で感動しました」と語るユーザーの笑顔が映し出され、クライアントからも「旅客体験の向上につながりそうだ」「スタッフの省力化も期待できる」という声が届いた。さらに「顔認証の活用は他の業種にも広がりそうだ」と期待を寄せる声も上がった。無事にローンチを迎えることができたプロジェクトチームだが、一息つく間もなく、すでに次の未来を見据えているようだ。「空港はテロ対策などにも力を注いでいますし、今後はよりセキュアな虹彩認証技術を導入していきたい。直近では、新型コロナウイルス感染症への対応としてサーモグラフィなどと組みあわせたソリューションも考えられますね」と語る石川の言葉を受けて、小野里も「インフラ面では、今後システムのクラウド化も提案していければと考えています」とビジョンを語る。今後、国際基準を満たす「Face Express」は、世界の“先例”となっていくだろう。しかし、どうやら笹本と大谷はそれだけでは満足できないようだ。「このテクノロジーは公共交通機関や商業施設、宿泊施設などにも展開可能なもの。近い将来、誰もが手ぶらで買い物を楽しめるような世界がやってくるかもしれません。空港から始まったこの取り組みも、先を見ればSociety 5.0やスマートシティのコアになる可能性を秘めているのです」。旅客体験の変革を、顧客体験の変革へ。プロジェクトチームの夢は、はてしなく大きい。
