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ロケット打上げをトータルに支援するプロフェッショナルたち ──衛星を宇宙に届ける「縁の下の力持ち」の仕事
人工衛星を宇宙空間に届けるには、ロケット打上げという大きなミッションを成功させる必要があります。ロケットが発射される種子島宇宙センターや内之浦宇宙空間観測所などの現場で、その打上げ支援に取り組んできたのが、NECの
スペース&インテリジェンスシステム統括部の 「射場・射点グループ」です。ロケットの打上げと管制に必要とされる技術、設備、システム、運用体制などについて、グループのメンバーに話を聞きました。
ロケットの飛行とミッション完了を地上から見守る
──はじめに、「射場・射点グループ」の役割についてご説明ください。
井上 ロケット打上げに関連する地上設備の設計、製造から維持・運用までするのが射場射点グループの役割になります。ロケットの打上げ前のフェーズで使われる「射点設備」や、打上げ後にロケットを追跡するために使われる「射場設備」があり、私たちのグループの業務はそのどちらにも対応しています。
打上げ前の衛星やロケットの状態をチェックするためには、衛星やロケットと地上の試験装置間を回線で接続する必要があります。私たちは有線や無線の回線設備を整備しており、それらの回線設備が「射点設備」の一例になります。「射場設備」としてはロケット追尾局があります。ロケット管制とは、打上げ後のロケットから送られてくる信号を受信しロケットが予定通りに飛んでいるかどうかを確認するものになります。
ロケットは打上げ後、段階的に分離され、最終的に衛星を軌道上に届けます。衛星分離後も役割を終えたロケットの信号を受信できなくなるまで監視を続けなければなりません。
椛谷 ロケット打上げ時には、打上げの1~2週間くらい前に種子島などの現場に入り、念入りなシミュレーションを繰り返して、打上げ本番に臨みます。

エアロスペース事業部門
スペース&インテリジェンスシステム統括部
第四宇宙システムグループ マネージャー
井上 晃治
──射場・射点グループには何人くらいのメンバーがいるのですか。
井上 NECのメンバーは8人で、ほかにグループ企業やパートナー企業のメンバーが加わるので、すべてを合わせればかなりの人数になります。
NECのメンバーには、それぞれ得意分野があります。私と椛谷は、もともと装置設計の分野で仕事をしていました。ほかにも、システム設計、施工、通信などの専門性をもったメンバーがチームにいます。
豊田 私は2025年4月にNECに入社して、このグループに配属になりました。現在はシステムの専門家になることを目指してOJTを通じて経験を積んでいます。システムの専門性を身につけた上で、井上さんや椛谷さんのように装置の知識も身につけていきたいと考えています。
──射点設備と射場設備で具体的にどのような設備がありますか。
椛谷 国内外の各地にロケット追尾局があります。先ほど井上から「ロケットから発信された信号を受信する」という話がありました。その受信をするための施設がロケット追尾局です。そこで受信した信号を、種子島をはじめとした射場設備に送って集中管制を行うという流れになります。NECは現在、竹崎、小笠原、グアムなどのロケット追尾局の技術整備や運用を担当しています。

状況に対応しながらすべての力を出し切る
──射点設備と射場設備における任務で、特に難しいのはどのようなミッションですか。

エアロスペース事業部門
スペース&インテリジェンスシステム統括部
第四宇宙システムグループ 主任
糀谷 良太
井上 ロケット打上げの成功が、私たちにとっては必ずしも100%の成功ではないケースがあります。そのようなケースに対応することの難しさをいつも感じています。
例えば、打上げに影響はなかったとしても、事前のシミュレーションとは異なる事象が発生するケースがあります。その事象が、次の打上げに影響しないように、原因を徹底的に解明し、説明する責任が私たちにはあります。
豊田 NECの府中事業場では、種子島の現場の一部の設備を構築して、事前シミュレーションや事後検証を行う環境をつくっています。もし問題が見つかった場合でも、この環境を利用して、事象の解析を進められるようになっています。
椛谷 それでも、予期せぬ事象が発生した原因がなかなかわからず、究明に時間がかかることもあります。めったに起きない珍しい現象が発生した場合、そのメカニズムを解明するのはとても苦労します。
──これまでのプロジェクトの中で、特に印象に残っていることや、大変だったことをお聞かせください。
豊田 私は、昨年初めて打上げ現場を体験したのですが、打上げまでの緊張感と、打上げが成功したときの高揚感は予想以上でした。打上げプロジェクトの推進者であるJAXA(宇宙航空研究開発機構)の皆さん、NECのメンバー、そのほかの会社の皆さん。その全員が一丸となって目標を達成したときの喜びの大きさを実感することができました。
椛谷 ちょうど試験がなかった日の朝に、前日まで未解決だった問題について、NEC府中側から「NEC設備の問題かもしれない」と電話連絡がありました。私は、すぐにJAXAの担当者に連絡を入れ、その旨を報告しました。休日中でしたがJAXA担当者もすぐに対応してくれ、種子島の現地チームと府中にいるチームの双方で検証作業を始め、問題解決に当たりました。
ロケット打上げプロジェクトは、打上げの数日前、場合によっては数時間前に問題が見つかるケースもあります。それにその都度対応し、適切な判断をくだしていかなければなりません。その大変さをいつも感じています。
井上 スケジュール調整で苦労することも多いですね。打上げがあっても、それと並行して関連設備の開発案件は常に進行しています。ロケット打上げは、天候に大きく左右され、悪天候が続いた場合は、打上げ実行が1週間以上伸びてしまうこともあります。予定がずれると、開発案件のスケジュールの見直し、メンバーの配置なども調整しなければなりません。常に柔軟な対応が求められる仕事と言っていいと思います。心掛けなければならないのは、どれだけ状況に翻弄されても、その中で自分たちがやるべきことを100点の精度で達成することです。
半世紀にわたって継承されてきた技術
──ロケット打上げを支援する取り組みにおいて、NECの強みはどのような点に発揮されているとお考えですか。
椛谷 NECは、H-IIロケットの時代から一貫して射点設備や射場設備の回線設置や通信、国内外の送受信局の設置を担当してきました。私自身も、H-IIAロケット時代から受信機開発に携わり、先人からの技術を継承・発展させてきました。それによって、仕様どおりに装置やシステムをつくるだけでなく、仕様の「行間」を読み取り、運用のフェーズまでを想定しながら設計することができます。その点にNECの大きな強みがあると感じています。
ロケット打上げのシステムには、海外メーカーの機器を使うケースもあります。そのような機器を活用する場合は、ユーザーマニュアルや開示されている設計文書を参照しても非開示部分が少なからず存在してしまいます。それに対して、NECがつくるコンポーネントは、ユーザーであるJAXAの皆さんにあらゆる機能やトラブル解決の方法を説明することが可能です。それもまた、NECの強みと言っていいと思います。
井上 ハードウェアをつくる力ばかりでなく、高度な通信技術を持っているのもNECの強みです。ロケットと送受信局の間の通信や送受信局と管制装置との間の通信、またNEC以外の各種設備との通信など、どれが欠けても、正確なロケット管制を実現することはできません。高度なロケット管制を下支えしているのが、NECの通信技術であると考えています。


エアロスペース事業部門
スペース&インテリジェンスシステム統括部
第四宇宙システムグループ
豊田 裕也
豊田 私はまだNECに入って日が浅いのですが、椛谷さんが言うように、技術や知識を継承する仕組みがしっかりつくられていることを日々感じています。現場で学べる体制があるだけでなく、疑問があったときなどには、先輩の皆さんが手取り足取り教えてくれます。そのような「継承の文化」があることも、NECならではだと思います。
宇宙へのチャレンジを支えていきたい
──NECの宇宙事業に携わることの醍醐味についてもお聞かせください。
椛谷 私たちの役割は、地上からロケット打上げをトータルに支援することです。設備をつくるだけではなく、検査やシミュレーションをするだけでもありません。ロケット打上げを成功させるために必要なことを考え、打ち上げたロケットが役目を終えるところまでを見守る。その一連の任務があります。宇宙事業という壮大な取り組みの中で、そのような任務を遂行していることに、大きな醍醐味と誇りを感じています。
井上 地球の周りをたくさんの衛星が飛んでいますが、衛星は最初からあそこにあるわけではもちろんありません。軌道上に衛星を届けるまでには、さまざまなミッションが必要とされます。あまり表からは見えないそのミッションを、縁の下の力持ちとして支えているという自負が私たちにはあります。その責任あるミッションに携わることができているのが一番の醍醐味だと考えています。
豊田 ロケット打上げは、大きな予算を投じて行われる国家プロジェクトです。そのプロジェクトの現場で仕事ができるのは、NECの一員だからこそです。日本の宇宙事業を支え、社会に貢献できている。そんな実感があります。
──このチームで今後取り組んでいくべきこと、取り組んでいきたいことをお聞かせください。
井上 今後はロケット打上げの頻度が上がっていくと考えられます。それに対応する新しいシステムをJAXAの皆さんと一緒に作っていくことが、私たちの当面の目標になります。トラブルの起きにくい、安定したシステムです。例えトラブルが発生しても、それをカバーし運用を成功させることが大事と考えています。
また、発生した問題を迅速に解決できる仕組みや組織体制をつくることを目指していきたいですね。
豊田 私自身は、専門的な知識やスキルを学んで、この分野のプロになることが現在の一番の目標です。システムと装置の両方のスペシャリストとなって、宇宙開発事業に責任をもって関われる力を身につけていきたいと思っています。
椛谷 私たちの役割は、ロケット打上げを数年あるいは数十年にわたり、射場射点設備担当の立場からトータルに支援することです。設備をつくるだけではなく、検査やシミュレーションをするだけでもありません。ロケット打上げという国家事業を成功させるために、私たちが持つ知見やノウハウをフル活用し、ロケットが世代交代して役目を終えるところまでを見守る。その一連の任務があります。宇宙事業という壮大な取り組みの中で、そのような任務を遂行していることに、大きな醍醐味と誇りを感じています。
井上 宇宙事業に携わるNECの他のチームとの連携も欠かせません。自分たちの専門性を磨きながら、NECのトータルな宇宙事業の力を伸ばしていきたい。そう考えています。

2026年7月27日