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リモートセンシングを支えるセンサ技術
人工衛星の主要なミッションの一つである「地球観測」とは?
人工衛星の中には、「だいち」や「ASNARO」など「地球観測衛星」と呼ばれる衛星があります。宇宙という遠く離れたところから、対象物に直接触れずに対象物の形や性質などを測定する「リモートセンシング」と呼ばれる技術を使って、地球の様子を観測します。対象物に直接触れることなく観測できるのは、対象物が放射・反射する光や電波等の電磁波の特性を利用しているからです。地球観測衛星には、これらの電磁波を捉えるためのセンサが搭載されています。
電磁波の波長によって、得られる地球の状態の情報が異なります。NECは日本初の衛星搭載用光学観測センサを開発して以来、これまでに様々な波長を捉えられる人工衛星搭載用センサを開発しており、衛星に課せられたミッションの遂行に大きく貢献しています。
ここでは、NECが開発してきた代表的なセンサである「光学センサ」及び「能動型電波センサ」の技術の概要を紹介します。

地球からの太陽光の反射や放射を観測する「光学センサ」
「光学センサ」とは、ここでは光をレンズや鏡等の光学系で集め、観測対象の形状や分光特性を取得する受動型のセンサのことを指します。
この光学センサを人工衛星に搭載することで、地球に対して「地表を細かく見たい」または「物理量※を知りたい」といった目的のもと、継続的に、グローバルに観測を行うことを主なミッションとしています。
- ※物理量:地質や植生等に加え、人の目には見えない温室効果ガスや温度等、観測対象は多岐に渡ります。

「光学センサ」は以下のような機器で構成されています。
- 光学系
望遠鏡で必要な量の観測光を集め、検出器に結像します。必要な波長の光を抽出する干渉フィルタや、測定したい光を各色に分解する分光器を載せる場合もあります。 - 検出器・信号処理部
受信した光を電気信号へ変換し、衛星バスに引き渡すための必要な処理をします。観測波長によっては検出器の発熱によるノイズを抑制するため、冷却機能を有する検出器もあります。 - 光学支持構造
人工衛星打ち上げ時の振動や衝撃、さらには宇宙空間での過酷な温度環境下においても画像がボケないように安定した支持を行います。
センサから放射する電波を使用し、
対象物が反射する電波を観測する「能動型電波センサ」
「能動型電波センサ」とは、自らマイクロ波(周波数:300 MHz~300 GHzの電磁波)を対象物に向けて照射し、対象物から反射されて戻って来るマイクロ波を測定します。雨や雲を観測する場合、光学センサでは雲の表面的な分布の観測になりますが、電波センサでは雨や雲の三次元的な分布を観測できるという特徴があります。また、マイクロ波による観測は昼夜を問わず可能です。
「能動型電波センサ」は以下のような機器で構成されています。
- 送信部
デジタル信号をアナログ信号へ変換し、マイクロ波の周波数へ変換します。さらに対象物の観測に必要な電力となるように、増幅器により電力を増幅します。 - アンテナ
送信部で発生させたマイクロ波を、対象物に向けて照射します。また、対象物から反射されて戻ってきたマイクロ波を受信します。 - 受信部
アンテナで受信された信号を、信号処理できる周波数や電力に変換します。電力の変換は受信信号の電力を検知して変換量を決めます。送信信号もセンサ内を伝って一部が受信部へ入力されるため、送信のタイミングで電力を検知しないように、検知するタイミングを決めます。 - 信号処理部
受信信号をデジタル信号へ変換し、観測データの用途によって定められたファイルフォーマットになるようにデータの並びを整えます。また、送信のタイミングで受信しないように、受信したいタイミングのときだけデジタル信号へ変換します。

全世界共通の社会課題解決の目標であるSDGs達成のために、地球全体で環境監視や被災状況把握などができる「人工衛星からの地球観測」の重要性は更に増してきています。NECは今後も人工衛星搭載用センサを提供し、安全・安心・公平・効率を提供する社会インフラの実現、及びSDGs達成に貢献していきます。