Japan
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大手小売業・大逆転PJ
信頼が生んだ逆転劇。
大手小売企業、発注端末刷新プロジェクト。


プロジェクトメンバー
松下 綾希子
エンタープライズビジネスユニット
第二リテールソリューション事業部
営業
2009年に新卒入社。海外での事業展開と女性の働きやすい環境に惹かれて、NECへの入社を決めた。小売業向けサービスの拡販活動を経験し、現在は営業としてソリューション提案に奔走する。
南井 浩樹
エンタープライズビジネスユニット
リテールシステム本部
システムエンジニア
2005年に新卒入社。選考や面接の中でNECの人間の温かさに触れ、入社を決意。入社以来、一貫して小売業の店舗システムの運用・保守に携わる。
※50音順
※2021年12月公開。所属・役職名等は取材当時のものです。
プロジェクトムービー
プロジェクトストーリー
全てを失ったNECに残されたものは、
誇りと信頼だった。
店舗を全国展開する2つの大手小売企業が経営統合。2つの会社が1つになるのだから、システムもどちらかのものに統合すればよい。それが、ものの道理ではあるが、NECはこの統合でシステム開発案件の全てを失った。業界再編の波は、NECにあまりにも大きなインパクトをもたらした。売上0円、取引0件という状況に追い込まれ、これまであった専任部隊は「解散」の二文字が頭をよぎるほどの窮地に立たされたのだ。しかし、NECは諦めたわけではなかった。「築き上げたものを、何もかも失った状態でした。でも、ふたたび案件のご相談が来たとき、『ついに来たか!』という想いでした」と語るのは、PM(※)を務める南井だ。「私たちは統合前から一緒に納得できるものを作り込んできました。小売業に関する知見も豊富です。いつかきっと、声がかかると思っていました」と胸を張る南井の言葉に、営業の松下も頷く。「今回の案件は、発注端末と業務アプリケーションの刷新、そして発注業務システムの改革でした。店舗スタッフの方からの声が、大きな後押しになったそうです」。歴史のなかで築き上げた信頼関係。それがこのチャンスの呼び水となったと松下は言う。「とはいえ、統合によりお取引はゼロ。お客さま側のご担当者としてもNECに発注することはチャレンジだった思います。だからこそこの信頼を裏切るわけにはいかなかった」。発注業務は、店舗運営の根幹。当然、要求も厳しくなる。南井は「難易度の高さは、期待の裏返し。『NECなら、できる』そんな無言のメッセージを受け取ったような気がしました」と当時を振り返る。
※PM:プロジェクトマネージャー

リベンジマッチだからこそ、
期待を超える、変化と価値を。
システムの刷新。言葉にするとシンプルだが、それは複雑で、決して容易な仕事ではない。新しいベンダーへの依頼となればなおさらだ。担当者の覚悟も相当なものだったに違いない。「業務改革を見据えたうえで、お客さまからは『以前のように、店舗スタッフの目線に立ったシステムをつくりたい。妥協ではなく、“こうあるべきだ”という理想を追求したい』というオーダーを頂戴していました」と語る南井。しかし、と松下が言葉を続けた。「問題は理想を実現するシステムを、いかに短納期で仕上げるか。ここが最大の壁だったと思います」。与えられた期間は約1年半。もちろん、開発だけではない。クライアントの業務理解、現行システムの仕様分析なども必要だ。「システムに関する不明点や課題点の洗い出しは、特に困難を極めました。今、どこの情報が不足していて、どこがボトルネックになっているのか。最大限スピードを上げながらも、一つひとつをつぶしていきました」。さらに松下は営業として、価格面でもメリットを明確に打ち出したかったと言う。「私たちにとっての最終的なゴールは、かつてのようなパートナーシップを取り戻すこと。品質、納期、そして価格でも大きな価値を感じてもらう必要があると考えていました」。わずかでも「しこり」が残れば「システムを刷新する必要があったのか」と厳しく問われる。期待を超える変化と価値を、システムというアウトプットで実現する。その達成こそが、チームの使命である。1つの妥協も許されない、統合後のリベンジマッチだった。

予想外の問題も技術力で突破する。
総力を結集した、ものづくり。
松下と南井は、まずスケジュールを3つのSTEPに切り分けた。「予想外の事態が起きるなかで、お客さまには率直に問題点をお話し、3段階にわけて導入していく方法を提案しました」と語る南井。「通常のやり方では納期に間に合わない。ドキュメンテーションの簡略化など、プロセスのなかで削れるものは削りました。さらに、お客さまにご協力いただけるところは、ご協力いただけるようにお願いしました」。その一方、松下は価格の調整に奔走。「予算の増額が厳しいなか、社内で『全STEPを通じて利益を出すこと』を理由に、一部の価格を抑えられるように社内を説得しました」。週1回、事業本部長との定例会を設けていた松下は、部門トップ層側と同じ温度感で戦略的な議論ができたことが大きかったと言う。「松下と同じく、私も仲間の力強さを改めて感じることがありました」と頷く南井。プロジェクト終盤まで、社内他部署の有識者も巻き込んで、システムのブラッシュアップを続けた。「画面表示や処理速度などが以前と同じ、ましてや遅いということは許されません。ソフトウェアの処理速度を最大限まで高速化するために、あらゆる面のブラッシュアップを入れていきました。日に日に理想に近づいていく様子を見て、改めてNECの技術力、スピード感に凄みを感じました」と南井は当時を回想した。

顧客のビジネスを永続的に成長させる。
パートナーとして、さらなる高みへ。
NECのプロジェクトチームは、今回のシステムで、発注業務にかかる時間を30%も短縮することに成功した。店舗スタッフの多様な発注シーンを想定した新機能など、ユーザーの使い勝手を意識したインターフェースも高く評価された。「今のところ大きな障害はゼロです。店舗で働く方々から『やっときたね、NEC』という声が上がっていると聞いたときは本当にうれしかったですね」と語る南井。松下も「次の商談につながったことは非常に大きな一歩になっています。実は今、すでに次のプロジェクトが動きはじめているんです」と笑みをもらす。しかし、華々しい成功を収めたにも関わらず、二人の表情から安堵の様子は窺えない。「今回のプロジェクトは、スタート地点にすぎません。私たちの目標は、ゼロになった地点から、真のパートナーシップを取り戻すことですから。ゆくゆくはクライアントの広範にわたる業務を理解したうえで、NECの最先端技術を土台にしたソリューションを提案していきたい」と南井は姿勢を正した。松下は「まずは新たなプロジェクトを成功に導くことが大前提。その上で、お客さまのビジネスを永続的に発展させるパートナーになりたいと思っています。でも、まだまだ先は長いですね」と笑顔で言葉を付け加える。今回のプロジェクトを通じて、お客さまから「さらなる高みを目指してほしい」という激励を受け取った二人。経営統合により全てを失ったNECは、リベンジマッチを勝ち獲った。しかし、2人が肩の荷を下ろす日はまだまだ先のようだ。南井と松下はクライアントと、ともに未来を見据えているのだから。
