Japan
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顔認証技術世界No.1への追求
世界NO.1の顔認証技術を武器に
社会へ新たなソリューションを。


プロジェクトメンバー
今岡 仁
NECフェロー
1997年入社
応用物理学修了 工学博士
入社後、基礎研究所にて脳視覚情報処理に関する研究開発に携わった後、2002年にNECマルチメディア研究所に異動して顔認証技術の研究開発に従事。この領域の研究開発チームのリーダーを担い、米国国立標準技術研究所(NIST)が実施した顔認証技術に関するベンチマークテストで5回連続トップを獲得(2009年、2010年、2013年、2017年、2019年)。2019年5月、役員級のプロフェッショナルとして処遇される「NECフェロー」に就任。
※2020年3月公開。所属・役職名等は取材当時のものです。
プロジェクトの概要
いま世界で最高水準の精度を誇るNECの「顔認証技術」。この技術を駆使したNECの生体認証システムは現在70か国以上で採用され、世界規模でセーフティな社会の実現に貢献している。このNECの顔認証技術を世界トップの座に押し上げてきた立役者が今岡だ。彼はいま、顔認証技術で培ってきたAI(人工知能)などの高度な知見をもとに、社会のセキュリティを支えるソリューションのみならず、さらに新たな領域を切り拓こうとしている。
顔認証技術に関するベンチマークテストで世界一に
2009年、今岡が率いる研究開発チームが「顔認証技術」に関するベンチマークテストで世界NO.1の評価を獲得。この技術をもとに新たなソリューションを生み出すことを掲げる。
顔認証技術をもとに新しい事業を創出する
顔認証技術が活用できる領域をリサーチ。国立がんセンターの医師との出会いにより、人の命を救うメディカルの領域で、AI技術を活用した革新的な診断システムの開発を決断。
チームの叡智を結集し試行錯誤を重ねて解を出す
これまで手がけたことのない未知の領域に対して、開発成功へのストーリーを描いて若手の研究者たちの力を引き出し、試行錯誤の末にがん診断サポートシステムの開発に成功。
人の命を救う革新的なシステムの開発に成功
今岡らが開発したシステムによって、がんの早期発見が容易になり、医療の現場に大きく貢献。さらに顔認証技術を基にした「耳音響認証技術」や「遠隔視線推定技術」も開発。
世界一だからこそ起こせるイノベーションがある
顔認証技術は、まだまだ社会にイノベーションを起こせる可能性を大いに秘めている。それを自らの手でリードしていくためにも、さらに技術を究めて「世界一」であり続ける。
プロジェクトストーリー
世界一の座に輝いた。
新たな野望が生まれた。
今岡が「顔認証」の研究に取り組み始めたのは、いまから15年以上前のこと。当時はまだそれほど評価される技術ではなかったが、2009年、今岡が研究者としてのプライドをかけて挑んだNISTのベンチマークテストで、彼が率いるチームが世界NO.1の精度を実現。そこから一気に風向きが変わった。「“世界一”になったことでNECの顔認証技術への世間の関心が大いに高まり、新たな事業に次々と結びつきました。たとえば、顔認証を使った入出国管理などのセーフティシステムはいまや世界各国に導入されています。その後、私は引き続き“世界一”を追求し続けることはもちろん、この顔認証技術を発展させてまったく新しいソリューションを生み出せないかと、そんな野望を強く抱くようになったのです」。

たとえば、がんの”顔”を
見分けることはできないか?
顔認証技術は、どんな新しい価値を社会にもたらせるのか? 今岡はアメリカやヨーロッパに自ら足を運び、海外でも新事業につながるネタのリサーチを重ねた。さらに、業界で“世界一”の評価を得たことで今岡自身の名前が知れ渡り、顔認証技術についてのオファーが各方面から続々と寄せられるようになった。なかには今岡の興味を大いにそそるテーマもあった。「国立がん研究センターの先生から『がんの“顔”を見分けることはできませんか?』というご相談をいただいたのです。顔認証の技術を使って、内視鏡でがんの兆候をいち早く診断できないかとのこと。多くの人の命を救うメディカルの領域は個人的にも研究する意義が大いにあると感じ、未知のテーマながらもチャレンジしてみようと決意しました」。

確かな信念をもって
未知の難題を突破していく。
今岡のチームが挑んだのは、顔認証で培ったAI技術を活用し、内視鏡による検査で大腸がんの兆候をリアルタイムに自動検知するシステムを実現すること。「当初、チームの若手たちは『本当にできるのだろうか?』と懐疑的でしたが、私がいくつかアルゴリズムのアイデアを出し、ストーリーを描いて『とにかく作ってみよう』と促すと、彼らがそこから手応えをつかんで開発が一気に進展しました」。NECは高度な技術力を持っている。優秀な若手の研究者も多い。発想に枠をはめず、メンバーたちの力を引き出してトライ&エラーを繰り返していけば、どんな難しい問題も必ずブレイクスルーできる。それが今岡の信念だ。そして彼のチームは遂に、医療の現場で実用化できる技術の開発に成功したのである。

医療の分野に革新を起こし、
次のターゲットへ。
この国立がんセンターとの共同研究によって開発されたAI診断サポートシステムは、大腸がんの予防や早期発見に大きく貢献するものとして期待されている。今岡が長年磨き上げてきた世界トップの顔認証技術は、メディカルの領域にも革新をもたらした。さらに、顔認証の技術を応用して、人それぞれ異なる耳穴の形状から個人を認証する「耳音響認証技術」や、離れた場所から人の視線を検知する「遠隔視線推定技術」の開発にも成功。これらも新たなマーケットを切り拓いていく技術として注目を集めている。「NECの研究者は、ただ成果を論文や学会で発表すればいい、というものではない。それがどのように世の中に役立つのかを見極め、新たな事業に繋げてこそ私の存在意義があると思っています」。

社会を変えるためには、
世界一であり続けなければ。
NECの顔認証技術がこうして大きな広がりを見せているのは、やはり「世界一を獲り続けてきたから」だと今岡は言う。「世界一になると世間から注目され、顔認証の活用法についていろいろな情報が私のもとに集まってくる。また、世界一の実績があるから私の提案が受け入れられ、事業化できるチャンスも大きい。だからこそ、我々はこれからも世界一であり続けなければならない。そのプレッシャーは非常に大きいのですが、顔認証はまだまだ無限の可能性を秘めている。医学や心理学とも繋がってイノベーションを起こしたり、将来的には動物や植物にも展開できるかもしれない。こんなに挑戦しがいのあるテーマを、世界のトップでリードできる。研究者としてこれ以上幸せなことはないと思っています」。
