CAREER STORY

挑戦の風土と事業の幅広さを成長の糧に。
法律とビジネスをつなぐ知財のスペシャリスト

河島 寛和

プロフィール

河島 寛和
法務・知財職
グローバルイノベーションユニット
知的財産本部
2016年にNECに新卒入社。 入社時より知的財産部門の渉外部に配属され、グローバル5G等契約、標準化団体参画審議を担当。

※2023年2月公開。所属・役職名等は取材当時のものです。

日本電気株式会社(以下、NEC)の技術や製品を法律の観点から保護・活用する知的財産部門。その中でも渉外統括部は、知財を戦略的に活用するため、対外的な知財に関する交渉を担っています。新卒で入社して以来、同部で経験を積んできた河島 寛和に業務内容とやりがいを聞きました。

キャリアストーリー

法律だけじゃない。知財業務に求められるビジネスセンス

私が所属する知的財産部門は約100名の組織です。そのうち6割程度が特許の出願申請など知財の権利取得に関する業務を、3割程度が知財の渉外業務を担っています。私の場合は、NECが保有する特許のライセンス交渉や事業部門・研究所からの契約相談などが主な仕事です。

近年、NECが力を入れているグローバル5G事業を例に契約相談業務の説明をします。5G事業の普及に欠かせない基地局製品を取り扱うNECは、国内外の通信キャリアをクライアントに契約を交わしますが、契約の際、知的財産関係の条件を慎重にチェックし、クライアントと交渉する必要があります。それは、知財には、たったひとつの条件によってその事業の将来に大きな影響を与える可能性があるからです。

たとえば仮にクライアントをA社として、NECがA社の要望に応えるために、新たに基地局に関する技術を発明したとします。このときにA社との契約で、A社のためだけに開発した技術だけでなく、それに関連する技術全体の知財も含めてA社に帰属するとなっていることがあります。その条件を看過した場合、A社以外の会社に基地局を販売する際に関連技術の知財は全てA社に帰属しているため、支障が生じます。すると最悪の場合は、事業機会の損失につながるため、事業に与えるインパクトはとてつもなく大きいでしょう。

一方で、すべての知財はNECに帰属する、としてしまえば、当社にとっては有利な条件となりますが、クライアントからすると自社のために開発した製品と同一の製品をNECが競合他社にそのまま販売することが可能となってしまいます。また、開発に際してクライアントのノウハウなどの提供も受けている場合もありますので、クライアント側としては受け入れられず、ビジネス交渉が停滞してしまいます。

それを回避すべく、営業部門の担当者から将来的に事業をどのように広げていきたいのか、技術開発の担当者から技術の要点を確認し、どういった観点で守ればいいか、どういったリスクであれば許容できそうか、どうすれば将来の事業につなげられるかを考えます。そしてクライアントとの交渉で均衡点を探りつつ交渉しながら契約条件をまとめていきます。

このように知財業務はビジネスに直結したものであるため、法律の観点でのみチェックをするのではなく、NECのビジネスパーソンとして事業をともにつくりあげるのだという当事者意識を持つことを大切にしています。法律家としてただ事業部門にアドバイスをするだけでは、会社のビジネスに十分貢献することはできないと考えています。

もちろん、その逆で知財担当として、看過できないリスクがある場合には、「NO」と言うときもあります。実際、ビジネスのスピード感を重視するあまり、事業部門において知財関連のリスクは軽視されがちです。そのため、知財に関するリスクの発生可能性や事業に与える影響をできるだけ具体的に説明し、事業判断の根拠を提供するよう努めています。知財の専門家として、ビジネスパーソンとして、知財の観点からNECのビジネスに貢献することが私のミッションと考えています。

入社の決め手はフィールドの広さと知財業務への興味。
NECでスキルアップできる喜び


知財の仕事に興味を持ったきっかけは、NECとの出会いでした。

大学時代は、法学部で学んだことを活かしつつ、ビジネスパーソンとして活躍したいと思い、法務部のように企業内で法律の知識を活かせる仕事を中心に探していました。そんな中、NECの知財担当者による知的財産の仕事紹介という講義を受け、NECの多様な事業のもとで行う知財の契約や訴訟を専門的に取り扱う仕事に興味を持ちました。

NECはパソコンのメーカーというイメージがあったのですが、顔認証のソリューションや海底ケーブルといった通信インフラ、小惑星探査機の「はやぶさ」まで、多様なフィールドでさまざまな先端技術を取り扱う会社だと知りました。もともと自分自身が好奇心の強いタイプでしたので、そのフィールドの広さと知財の仕事への興味が入社の決め手となりました。

入社後は、若手のうちから知財の専門家として、NECの数多くのビジネスに触れることができました。そこで営業職や研究職、技術職の社員とのコミュニケーションを通じて、どのような技術でクライアントの価値創造に寄与しようとしているのか、一方でNECとして個々の取引でどういった狙いがあるのかを考え、学ぶ経験ができたと思います。多くの現場の声を聞くことで、知財とビジネスを掛け合わせる勘所も伸ばすことができたと思います。

また、知的財産部門のベテラン社員や先輩を中心とした若手社員向けの勉強会に参加することで、米国の裁判研究や仮想事例を基にした契約レビューなどを通じて専門性を高めることができたと思います。

そのほか、部としても個人のスキルアップのため、積極的に社外のセミナーなどで勉強することを奨励する雰囲気もありますし、会社の海外留学制度を利用して海外のロースクールやビジネススクールに留学した社員が何人もいます。私自身も米国のロースクールのサマープログラムに参加し、米国の法制度や日本との法文化の違いについて学びました。このような環境は、知財の専門家としての成長につながる恵まれた環境だと考えています。

知財の専門家としての印象的な経験──ベンチャー企業の立ち上げに貢献

これまでの仕事でとくに印象に残っているのは、半導体関連の事業をスピンオフしてベンチャー企業を立ち上げるプロジェクトへ参加した経験です。

知的財産の取り扱いも含めて、さまざまな出資条件を綿密に検討する必要がありましたし、ベンチャー企業やベンチャーファンドといったさまざまな利害関係者と折衝をしました。知財はとくに重要な条件だったので、みんなが納得できる出資スキームを構築できるまでに多くの議論を重ねました。この経験で、多くの関係者と交渉を重ねる経験を得られましたし、ベンチャー企業との取引や会社法についても学ぶこともできました。苦労した経験ではありますが、ベンチャー企業が無事に立ち上がったときには、非常に感慨深かったです。

渉外統括部では、このようなスピンオフをはじめとするM&A関係のプロジェクトで知財の専門家としての経験ができることも魅力のひとつだと思います。

挑戦の風土がさらなる成長機会をくれる

これまでの経験を振り返ってみて、NECには「挑戦」を奨励する風土があるので、その中で私は知財の専門家として、そしてビジネスパーソンとして成長できたのだと思います。

経営層からも挑戦する社員に対してバックアップをするというメッセージがしっかり発信されていますし、現場レベルでも若手社員が意見を積極的に発信できる雰囲気があると感じています。

たとえば、契約業務と聞くとルーティンワーク的な業務をイメージされる方もいるかと思います。ところが、先端技術を用いて多様なビジネスを手がけるNECにおいては、さまざまな新しいビジネススキームが生まれてきます。それらを実現する契約を作るには、過去の経験だけでは不十分なこともあり、経験豊富な上司でも、最良の手段が見出せないこともあります。そのため、若手の意見も積極的に求められます。私も自分の意見を発信し、時に失敗したり恥をかいたりすることもありましたが、このような環境で仕事をしていく中で、入社時よりひとまわり成長できたかなと思います。

これからも研鑽を重ねていき、ゆくゆくは世界のトップ企業との知財交渉をリードしていけるような存在になっていきたいですね。

My favorite CoV

「視線は外向き、未来を見通すように」を大切にしています。私の場合は、目先の取引や収益だけでなく、将来のビジネスを意識した仕事を心がけています。例えば、一般に他社への特許のライセンス範囲を広く認めると、その分収益を見込めますが、ライセンスした他社製品などが将来の当社事業と競合するリスクがあります。また取引成立のために、取引先へ安易に知的財産を帰属させた場合、事業の横展開ができなくなるリスクがあります。こうした将来のリスクを解決しつつ、目の前のビジネスをどう前進させるかを常に考えて仕事をしています。

CoV:「Code of Values」。NECグループ共通の一人ひとりの価値観・ふるまいを示した行動基準

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