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Special Talk

枠を超えたつながりで、
できたらすごいを社会に創る

デジタル化が進み、データを活用したさまざまな取り組みが進められています。
しかし、データの価値を最大限引き出すためには、越境によるエコシステムの構築が必要不可欠です。
都市や産業の領域で新しい取り組みを進める3人が考える、さらに価値を拡げるための「越境」とは――

高橋 広平
高橋 広平
NEC
PSネットワーク事業推進本部
安島 沙希
安島 沙希
NEC
デジタルインテグレーション本部
山下 亜希子
山下 亜希子
NEC
デジタルサービスソリューション事業部

さまざまなデータ活用のかたち

―― 皆さんは企業や産業を越境しながらデータの活用を進められていますよね。それぞれ取り組みの内容は異なっていますが、例えば高橋さんはデータ活用を通じてスマートシティの実現に取り組まれています。

高橋 現在はいくつかの自治体と連携しながら、スマートシティの取り組みを進めています。私は、もともと営業として富山支店に配属されました。そこで、富山市の産官学をつなぐスマートシティ推進基盤の構築に携わったことがデータ活用に取り組むようになったきっかけです。
富山市では、LPWA網とIoTプラットフォームからなる「富山市センサーネットワーク」を整備しています。市内全域(居住人口98.9%)をカバーしており、都市のさまざまなデータを集めて可視化できます。これは、地域の課題解決や新たな防災システムの提供など行政業務へ活用することができます。初年度は行政サービスにつなげるパイロット事業として、小学生の登下校ルートのデータを収集・分析した子どもの見守りの実証実験を富山大学と地元企業と一緒におこないました。また、行政機関だけでなく、民間事業者にも実証実験環境としてこのネットワークを提供することで、地域産業の活性化にもつながります。

山下 高橋さんが進めている富山市との取り組みには、私もネットワーク構築の部分で携わっていました。その時はオープンな仕様で独自エリアにネットワークを構築できる「LoRaWAN」というネットワークを採用しました。街づくりには、自治体だけでなく鉄道会社やデベロッパーなど多くのステークホルダーが関わっているので、その都度目的に合った最適なネットワークを選ぶことが重要だと考えています。現在は、ネットワークに加えて、都市やエリアのデータを収集し、流通させる基盤の展開を進めているので、データを活用したソリューションやサービスをゼロから考え、つくっていくこともあります。

安島 お二人が街づくりに携わっているのに対し、私が取り組んでいるのは産業の新しいかたちを創ることですね。AIによる需要予測で、製造や卸・流通、小売、物流などサプライチェーンを横断する需給最適化プラットフォームの構築を進めています。出荷実績や販売実績などのデータから需要と供給のバランスを分析し、個々のプロセスの効率化をおこなうとともに食品ロスの削減や企業の収益向上に取り組んでいます。

さまざまなデータ活用のかたち さまざまなデータ活用のかたち

3つの「つなぐ」の重要性

―― 自治体や業種の枠組みを超えてデータを収集・活用するのはなかなか大変そうです。どのような部分がデータ活用のポイントになるのでしょうか?

山下 3つの「つなぐ」がポイントだと思っています。まずは、リアルの世界のさまざまな情報や事象をデータ化するために、リアルとサイバーを「つなぐ」。集めたデータはそのままだと活用できないので、加工したり他のデータと組み合わせたりすることでデータを価値化して「つなぐ」ことも重要です。さらにはただデータを可視化するだけでなく制御などのアクションで再びリアルの世界と「つなぐ」必要があります。

高橋 データを集めることが目的ではありませんからね。スマートシティをつくるうえでも、データ活用というより、むしろそこに住む方々が何に困っていて、どんなことに価値を見出すのかを考えることから必要なデータや仕組みをつくっていくようにしています。
NECは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムの委託先の一つとして採択され、多くのステークホルダーがデータを相互に使えるように、スマートシティの“設計書”といえる「スマートシティリファレンスアーキテクチャ」をつくったんです。共通する仕様や規格をつくったことで、今後はさらに連携が取りやすくなっていくはずです。

山下 実際にデータをつないでいく際に、ネットワークとITのどちらも手掛けていることがNECの大きな強みになると思っています。自治体やさまざまな業種のお客さまなど多くのステークホルダーとのつながりもあるので、それぞれのアカウントが育んできた知見を組み合わせることでさらに価値を大きくできます。

安島 需給最適化の取り組みでも、同じことがポイントになりますね。
2018年にはこのプロジェクトが「経済産業省産業データ共有促進事業」として採択され、データ標準化をおこない、業界を通じたデータ活用のためのルールづくりを行いました。またNECとメーカー、卸、小売、データホルダー企業合わせて11社で実証実験もおこないました。都市と産業がつながれば、さらに価値が拡がっていきますね。

3つの「つなぐ」の重要性 3つの「つなぐ」の重要性
枠を超えたつながりで、できたらすごいを社会に創る 枠を超えたつながりで、できたらすごいを社会に創る

―― 取り組みを進めていく中で、どのようなことが課題となったのでしょうか。

高橋 スマートシティの場合はまだ成功事例と呼べるものが少ないですし、社会課題の解決と地域に寄り添ったビジネスモデルをつくっていくことが課題です。さらに、ステークホルダーごとにやりたいことや目指すゴールの指標もバラバラなので取り組みを進めていくことがより難しいです。

山下 たしかにビジネスモデルづくりは難しいですよね。例えば、これまでは企業の中の効率化やコスト削減が指標になることが多かったので、ビジネスモデルがつくりやすかった。でも街づくりだと住民のQOL向上が指標になることもあれば、エリアの価値向上が指標とされることもある。鉄道や自治体、デベロッパーなど業種・業界が異なるとそれぞれの目的や文化も異なるので連携には苦労することも多いです。

安島 社内を考えてみても、担当する業種・業界が変わると“言語”が変わりますよね。需給最適化に取り組む前は製造や物流、小売など異なる業種を担当する事業部が連携することは少なかったと思うのですが、今は一つのゴールに向かって、これまでにない共創が進んでいることが面白いです。もちろん、業種軸でのそれぞれのビジネスと需給最適化プラットフォーム全体でwin-winの関係をつくることは大変でもあるのですが。私たちの取り組みは個々のビジネスを促進するものでなければならないし、個々のビジネスからも私たちのプラットフォームへフィードバックが生まれなければいけない。今後はその関係性をもっと強めていかなければと思っています。

山下 ITやネットワークなど部署ごとに成り立ちも違ったりしますからね。ただ、最近事業部を越えた取り組みは増えているように思います。担当のお客さまの課題だけでなく、社会課題に目を向けて、より大きな視点で動いていこうとする人も増えているので、これまでよりも柔軟な取り組みが進めやすくなっている気がしますね。

”インクルージョン&ダイバーシティ”、真の共生社会の道筋をつくる ”インクルージョン&ダイバーシティ”、真の共生社会の道筋をつくる

企業のあり方が変わっていくこと

―― 枠を超えていくには、これまでとは異なったビジネスとの向き合い方が求められるとも思います。皆さんが重視しているマインドセットなどはありますか?

高橋 私はもともと富山で自治体を担当する営業として働いていたので、今のような新規事業を推進する立場に移ったことでマインドセットはかなり変わりましたね。とくにスマートシティの場合は、単に新しい事業をつくるだけではなくて、その街が継続して成り立っていくための仕組みをつくらなければいけない。NECがこれまで育んできたお客さまとの付き合い方だけでは成立しないなと思っています。なかでも「ベンダー」ではなく「パートナー」になっていくことはとくに重要です。だから自社の利益だけを求めるのではなくて、リスクを取り地域と利益を共有していくことが必要と思っていますし、パートナーとして認めていただけるような行動や発言を心がけるようにしていますね。

山下 私も同じことを感じます。継続的なパートナーになることが重要ですよね。ステークホルダーが多様化することでNECとの関係も一対一ではなくなっているし、関係性そのものを変えていかなければ、と。

高橋 もちろん、これまでシステムやソリューションを提供するベンダーとしてきちんと仕事をしてきたことでつくられた関係があるからこそ、今の活動ができているんですけどね。ただ、これまでのように一つの分野の中の一つの課題に対応する垂直統合型のやり方では、今後少子高齢化によって「人や金」のリソースが減少していく未来には立ち行かなくなると思いますし、むしろこれからは、官民連携で水平分業的に社会課題に立ち向かっていかなくてはならないと思っています。

安島 私ももともと営業をやっていたので、同じような変化を感じます。企業は自分たちの利益を追求することも重要ですけど、社会のことを考えないとビジネスが成り立たなくなっているのかもしれません。

山下 これまでと発想を変えるには、社外の方々とたくさん話すことも重要だと思っています。とくに新たなビジネスモデルやソリューションを創り出すとき、社内に答えがあるとはあまり思っていなくて。もちろん社内でも十分議論はしますが、そのうえで社会やお客さまにとって何が本当の価値になるかは社外の方々と対話するなかで思考をブラッシュアップしていくしかないと思っています。私自身、オフィスにずっといるのが苦手なタイプでもあるので、なるべく外側に答えを探しにいくようにしています。

―― リモートワークが進むとなかなか人と会うことが難しくなっていきそうです。

山下 意外にもリモート化が進んだことでかえって人と話す機会は増えているんです。リモート会議なら社外の方が遠くにいても簡単に話せますし、移動時間がなくなったことでその分話す時間は長くなっていて。対面じゃないからこそ会議の質を高めようという意識も高まるので、むしろ本質的な議論をおこないやすくなっているかもしれません。

安島 そうですよね。NECだけでできることは限られますし、お客さま・パートナーの方々との連携はますます重要になってきている。最近はスタートアップのようにこれまではあまり連携してこなかった領域の方々と協力することも増えているかもしれません。従来はすでにいるお客さまを念頭に置きながら何を提供できるのか考えていましたが、今は、社会課題を起点としながら、企業にどういう課題があって何が必要なのか考えていくように心がけています。より多くの方々と連携することでこそ、大きな社会課題を解決できるわけですから。

枠組みを越えた「ハブ」をめざして

―― 社会における企業の役割もどんどん変わっていきそうですね。皆さんはご自身の取り組みを通じてこれからどのような「できたらすごい」を実現していこうと考えられていますか?

安島 私は、需給最適化の取り組みを海外にも広げていきたいです。現在は日本国内にフォーカスしていますが、食の問題は海外の方がより深刻化している。食そのものも、COVID-19の感染拡大により、そのあり様が変わってきていると思うんです。例えば家で過ごす時間が増えて家族と食事をする機会が増えた人も多いですよね。一方では、生産や仕入れをされた商品が余ってしまうということも起きています。食って人間の根幹に関わるものでもあるので、一人ひとりの毎日の生活や社会全体の課題をより良く変えていけるような取り組みをNECとして実践していけたらと。そういった活動を続けていくことで、従来の枠組みも国境も越えた新たなビジネスの形をつくっていきたいと思っています。

高橋 私も地域に住んでいる方々のQOLを上げたり社会課題を解決していけたりするようなエコシステムを実現する必要性を感じています。エコシステムの実現を通じて、その街に住みたいと思う人が増えたり、住むとこんなことが実現できますよと表現できるようになるとすごいな、と。データによる可視化という観点では、人口が増えるとか、このくらい健康になれるとか、以前よりも何%幸福度が上がっているとか、いろいろな指標を実現できると面白いですよね。まずは今、住んでいる方々がこの街に住んでよかったなと感じられることが重要ですし、NECが、今以上に地域の一員として住民の方々に貢献できるような仕組みをつくっていきたいです。

山下 私もNECがもっとさまざまなステークホルダーをつないでいく役割を担っていけたらいいなと思っています。ひとくちに「街づくり」といっても、街全体や特定のエリア、あるいはビルなど、さまざまな捉え方がある。その分ニーズも多様なわけで、あらゆるものをつなげる「ハブ」のような存在にNECがなっていけることが理想です。

枠組みを越えた「ハブ」をめざして 枠組みを越えた「ハブ」をめざして