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NEC、ニューヨーク大学とマンハッタン島周辺の洪水対策事業の経済効果を共同で検証
~MOUを締結し、都市や社会の脆弱性解消に向けた取り組みを加速~2026年5月27日
日本電気株式会社
日本電気株式会社(以下NEC、注1)は、米国・ニューヨーク大学(以下NYU、注2)とともにニューヨーク市・マンハッタン島周辺で行われた洪水対策プロジェクトの多様な経済インパクトを、交通インフラや住宅、メンタルヘルスなど5つのテーマ毎に価値分析モデルを構築(注3)することで定量化しました。この結果、最大でおおよそ8億ドル(約1,280億円)相当の損失を回避できる可能性があることを明らかにしました。

本検証は、NECが2025年9月に、NYU・タンドン校工学部より「Digital Adaptation Finance for Urban Resilience」というテーマで採択された、実社会の課題に取り組む「Capstone Program」(注4)に基づき実施されたものです(注5)。
NECとNYUは本検証の成果を踏まえ、都市防災・レジリエンスおよび先端技術分野における検討を推進するための覚書(Memorandum of Understanding: MOU)を締結し、都市や社会の脆弱性解消に向けた取り組みを深めていきます。
レジリエンス強化にむけた課題と取り組み
昨今、気候変動の影響などにより、企業活動や都市のレジリエンス強化が一層求められるようになりました。一方でレジリエンス強化に向けた取り組みにおいて、定量的に効果を示しづらいプロジェクトはROI(投資対効果)の算出が難しく、投資の意思決定がしづらい、プロジェクト組成時のファイナンス手法が限られる、などの課題があります。
そこでNECは、災害対策や予防保全、サステナビリティ、BCP(事業継続計画)といった定量的な効果を示しづらい領域において、独自の価値連鎖モデル構築のノウハウとデジタル技術を活用し、経済インパクトを定量的に示すことで、意思決定やファイナンス組成を促すための取り組みを進めています。
本検証の概要
検証実施の背景
ニューヨーク市では、都市全体に連鎖的な経済損失をもたらした2012年のハリケーン・サンディによる被害をきっかけに、沿岸・内陸洪水が都市経済や地域に与えるリスクが強く意識されるようになりました。本検証の対象としたロッカウェイ半島沿岸では「Greater Rockaway Resilience Plan」に基づいて、2020年から砂丘の造成、護岸の強化、防潮堤の建設などが進められています。一連の取り組みにより生じた経済インパクトを定量化することで、多様な便益を創出する一方で効果が曖昧なプロジェクトにおける「意思決定のフレームワーク」「資金調達手段の多様性」を示せると考え、本検証を実施しました。
検証方法と結果
本検証では、「Greater Rockaway Resilience Plan」に基づいて実施されたプロジェクトの多様な便益の連鎖を可視化する価値関連図を作成し、その中で大きな影響を与える可能性の高い5つについて分析モデルを構築、過去のハリケーンとその被害の情報、洪水リスクシナリオに基づく将来の被害想定などのデータを基に経済インパクトを算出しています。
具体的にはビーチ浸食防止による観光資源の担保、交通インフラや住宅損壊リスクの低下、住民のメンタル被害の回避といったテーマ毎に、土地利用や税務、人口統計、地図などの空間・経済データと洪水ハザードや洪水被害シナリオなどの災害情報を、地理情報システムなどを活用して、空間的に統合し分析しました。洪水が起きた場合に「どこで」「誰に」「どのような影響が連鎖的に生じるか」を定量化・可視化する事で、被害回避や新たな価値、負の影響を金額換算しています。
左図 分析の全体像:各テーマに関わる情報を地理情報システムなどを活用して分析
右図 テーマ別の分析例:洪水対策を行わなかった場合、8割もの公営住宅が浸水リスクがあることを示す試算結果
また、過去事例や既存研究との比較により試算結果の妥当性を検証した他、現地関係者や住民の方に洪水対策プロジェクトの実施前後での変化などについてインタビューを実施、さらにはインパクトファイナンス/投資実務におけるプロジェクト評価の観点より金融機関へ意見を求めるなど、実務的・多面的な検証を踏まえて同プロジェクトの効果を示しています。

両者の役割
NEC:プロジェクトデザイン、ビジネス観点に基づく社会課題の提供、実務観点・社会実装観点での推進支援
NYU・タンドン工学部 Center for Urban Science and Progress:プロジェクトデザイン、枠組み(Capstone Program)・フィールド知見・ネットワーク・技術的知見の提供、学生指導、リスク解析、物理ハザードと都市インフラの連鎖的被害モデリング、意思決定プロセス、成果取り纏め
今後の展望
両者は今回締結したMOUに基づき、衛星画像解析やAI、リモートセンシング等の技術を活用した経済インパクトの定量化を踏まえた新たなファイナンス手法の可能性について金融機関にはたらきかけるなど、考察成果の社会実装機会の探索を深めて参ります。
なお、本件に対する両者のコメントは以下のとおりです。
「どこで、誰に、どれほどの被害が連鎖するか」―この問いが、私の研究室(CERA Lab)の出発点です。今回の検証では、ニューヨーク市のロッカウェイ半島における洪水ハザードデータと、交通・住宅・メンタルヘルスにわたる社会経済データを空間的に統合し、防災投資が生み出す多面的な便益を定量化しました。こうした便益はこれまで「見えにくい」ゆえに投資判断から抜け落ちてきました。本研究はその空白を埋める枠組みを示すものです。こうした「見えにくい便益」を可視化することは、学術研究にとどまらず、政策や資金調達の意思決定を動かす力を持ちます。気候変動の影響評価が都市政策に反映されるプロセスは、ニューヨーク市気候変動委員会(NPCC)での活動を通じて日々実感していることでもあります。本研究の設計もその視点から出発しており、NECとの協働を通じて、学術的な枠組みが実際のプロジェクト評価や資金調達の可能性を広げることを示せたことを、大変意義深く思います。
ニューヨーク大学 タンドン工学部 機械・航空宇宙学科、都市科学プログレスセンター(CUSP) アシスタントプロフェッサー
気候・エネルギー・リスク解析研究室(CERA Lab)主宰
ニューヨーク市気候変動委員会(NPCC)委員
三浦有稀
気候変動による経済被害は、実は先進国でこそ突出しています。レジリエンス強化が急がれる一方、公共と民間は孤立した対策にとどまり、個々のプロジェクトにおいてはROIが見えづらい事が多く、意思決定や資金調達が進みにくいのが現状です。本研究では、効果が曖昧なプロジェクトの経済インパクトを評価する基本枠組みを示し、将来の資金調達手段を広げる可能性を提示しました。世界的都市ニューヨーク市のプロジェクトを対象に、NYUと共に成果を発信できたことを嬉しく思います。
NEC GX事業開発統括部 上席プロフェッショナル 足立龍太郎
以上
- (注1)本社:東京都港区、取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田隆之
- (注2)本部:米国・ニューヨーク州ニューヨーク市
- (注3)災害後に生じる不安やストレス・心の健康への影響を防ぐ効果、道路の冠水リスクの低減、災害による公営住宅の損壊/長期避難を防ぎ暮らしの継続を支える効果、洪水や侵食からビーチを守り、地域の観光資源を維持する効果、工事に伴う騒音の影響の5つのテーマで価値分析モデルを構築
- (注4)大学院生と企業が協働し、現在直面している社会課題を分析し、解決提案するプロジェクト型教育プログラム
- (注5)最終的な成果は2026年5月1日にNYUタンドン校で開催されたUrban Data Science Showcaseで発表されました
本件に関するお客さまからのお問い合わせ先
NEC GX事業開発統括部
E-Mail:contact@tekio-project.jp.nec.com
NECは、安全・安心・公平・効率という
社会価値を創造し、
誰もが人間性を十分に発揮できる
持続可能な社会の実現を目指します。
https://group.nec/global/ja/about/corporate/purpose

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