2025年2月21日
日本電気株式会社

NECは、仮想化された無線アクセスネットワーク(virtualized Radio Access Network 以下、vRAN)に対してO-RAN Alliance(注1)の仕様に準拠した柔軟かつインテリジェントなネットワーク制御を可能にするNear-RT RIC(Near Real-time RAN Intelligent Controller)プラットフォームとRICアプリケーションを開発しました。

背景

昨今、生成AIなどの先端技術の普及が急速に進展していく中で、それらを活用した新たなユーザ体験の実現が期待されています。こうした体験を支えるインフラとして、5Gネットワークには、既存のサービスを効率的に運用する仕組みとともに、新たなサービスを効果的に実現するための高い拡張性や柔軟性が求められています。

これらの要求に対応した高度な5Gネットワークの実現に向けて、NECは、汎用ハードウェア上で動作するvRANに対してO-RAN Alliance仕様に準拠した柔軟かつインテリジェントなネットワーク制御を可能にするNear-RT RICプラットフォームを開発しました。これにより、サービス要件やネットワーク状況に応じてRAN(基地局)の設定を動的にカスタマイズすることが可能となります。さらに、このプラットフォーム上で動作するRICアプリケーションとして、セル間の負荷分散機能、スライスのSLA(Service Level Agreement)保証機能、許容遅延(注2)達成の高信頼化機能を実装しました。

NECのNear-RT RICの特長

このたびNECが開発したNear-RT RICは、下記を含むRICアプリケーションを追加することで、多様化するサービス要求に応じてRANの動作を動的にカスタマイズし、品質改善やSLA保証、省電力などの機能拡張を柔軟に実現できます。さらに、RICの制御はO-RAN Alliance仕様に準拠したインタフェースを介して従来のRAN機能と分離されて仮想化基盤上で動作するため、AIに関するハードやソフトの技術革新を迅速に取り込むことが可能です。
これらの仕組みを活用してRAN運用の自動化や自律化を進めることにより、TCO(Total Cost of Ownership)を抑えながら、vRANの価値を継続的に向上させることができます。

RICアプリケーションの機能

1.セル間の負荷分散

隣接するセル間の負荷の不均衡を迅速に解消し、時間帯や場所に応じてネットワークの負荷が変動する環境において、負荷が高いセルに接続していた端末のスループットを向上させることができます。

2.スライスのSLA保証

スライスごとの無線リソースを動的に最適化し、ネットワークが混雑した環境においても、スライスに接続する端末に対してSLAに応じたQoS(通信品質)を提供できます。

3.許容遅延達成の高信頼化

AIを活用して許容遅延や無線品質の変動を分析し、端末ごとに無線制御を動的に最適化することで、許容遅延時間内のデータ到達に高い信頼性が求められる環境において、許容遅延の達成率を高めることができます。

なお、NECは許容遅延達成の高信頼化機能について、5G vRANを用いた屋内の実験環境でその有効性を実証しました。

技術実証の概要と成果

5G vRANを用いて、屋内環境でモバイルロボット(注3)遠隔制御用のネットワークを構築し、許容遅延の達成を高信頼化するRICアプリケーションの実証実験を行いました。モバイルロボット端末ごとに無線制御を動的に最適化することで、RICを使用しない場合と比べ、許容遅延を超過するパケットの発生頻度を1/6以下に低減できることを実証しました。

今後の展開

NECは、今後もBeyond 5G/6Gを見据えたvRANの高度化を実現するために、ネットワークの品質改善や省電力化、AIを用いた運用自律性向上に対応したNear-RT RICのアプリケーションを拡充し、モバイルネットワーク市場において法人DX(デジタルトランスフォーメーション)向けから一般ユーザ向けまで広くサービス品質の向上に貢献して参ります。

以上

本件に関するお客様からのお問い合わせ先

NEC　テレコムサービス企画統括部
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