NEC、組織・業界を越えた安全なデータ活用を推進する秘密計算のシステム開発を容易にする支援ツールを開発
2018年11月5日
日本電気株式会社
NEC は、個人情報や企業の保有する機密情報を暗号化したまま安全に分析・処理できる秘密計算を組み込んだ、システム開発を容易にする支援ツールを開発しました。これにより、秘密計算がデータ流通基盤などに活用され、新たな事業・サービスの創出の契機となることを目指します。
近年、情報銀行などの個人情報を含むデータを異なる企業・組織間で活用するビジネスが活発化する一方で、プライバシー侵害等の観点から企業・組織を越えたデータ活用が進まない課題があります。
秘密計算は、データを暗号化したまま分析処理ができる技術です。本技術を活用することで、各企業が保有している機密情報を、暗号化したまま、データを結合して分析でき、その分析結果のみを復号し開示します。機密情報を安全に外部に提供でき、組織・業界を越えたデータ活用・流通が可能となります。
現在、秘密計算は複雑かつ膨大なプログラミングが必要であり、一般のエンジニアではシステム構築が難しいことが普及・拡大の課題となっていました。
今回開発した開発支援ツールは、プログラミングの知識があるエンジニアであれば、容易に活用でき、データの処理内容を記述すれば、秘密計算に必要な処理コードを生成し、実行することが可能です。例えば、これまで専門家が1週間かかっていたプログラム開発が、一般エンジニアであっても数時間の工数で可能となりました。これにより、企業などのニーズやシステムに合わせた秘密計算の組み込みが可能となります。
今後NECは、本ツールを秘密計算の適用可能性の検討・実証のために提供し、実用に向けた検証を進め、2020年の秘密計算の実用化を目指していきます。
開発支援ツールの特徴
- 一般的なプログラミング言語により、秘密計算の処理内容を記述可能
従来、秘密計算の処理コードを生成するには、その複雑な構造から、専門家の膨大な工数を要していました。本開発支援ツールでは、秘密計算の処理記述・実行エンジンであるSPDZ-2(注1)を拡張することにより、秘密計算で実行したい処理内容を、Python(注2)に似たプログラミング言語を記述するだけで、NECの秘密計算特有の処理コードを自動で生成することが可能となります。
例えば、単純な集計処理であれば、約30行のプログラム記述から、約4万行の処理コードを自動で生成します。また、秘密計算の様々な統計処理の記述にも対応しているため、あらかじめ決められた一般的な集計処理や分析処理に限定せず、各企業や研究機関などの利用者が望むシステムに合わせた統計処理や分析処理も容易に記述することが可能です。 - 秘密計算の記述を自動で最適化し、処理コードの実行を効率化
処理内容の記述から、並列実行可能な処理を自動的に判別し、同時に処理実行する最適化機能により、専門知識がなくとも記述した処理内容が高速に実行できる秘密計算の処理コードを生成できます。
今回の支援ツールの開発によって、様々な組織間での安全なデータ活用を行うデータ流通基盤などの構築が容易になります。
例えば、医療分野では、ゲノムバンクが持つゲノム情報と病院が持つカルテ情報とを安全に結合して分析し、ゲノムに応じた適切な医療を行うことに関する研究など、医学の発展への貢献が可能です。また、金融機関が保有する取引情報を分析することで不正取引の検知や、様々な店舗の購買履歴情報からマーケティング分析などへの活用にも役立てることができます。
なおNECは、今回の成果を、NECグループが開催する「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2018」(会期:11/8(木)~11/9(金)、会場:東京国際フォーラム(東京都千代田区))にて展示します。
「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2018」についてhttps://uf-iexpo.nec/
NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進ICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
- (注1)SPDZ-2:英国Bristol大学が開発した秘密計算の処理記述・実行エンジン
- (注2)Python:
プログラミング言語の1つ。コードがシンプルで扱いやすく設計されており、分かりやすい文法が特徴。組み込みアプリ開発やWebサイト構築から、ディープラーニングまで様々な分野で利用されている。
NECの秘密計算について
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC 研究企画本部 研究プロモーショングループ
お問い合わせ
NECは、社会ソリューション事業を推進する
ブランドメッセージ「Orchestrating a brighter world」のもと、
今後の世界の大きな変化(メガトレンド)に対応する
様々な課題解決や社会価値創造に貢献していきます。
詳細はこちらをご覧ください。
https://jpn.nec.com/profile/vision/message.html