NEC、顧客一人ひとりのプロフィールを自動推定するAI技術「顧客プロフィール推定技術」を開発
~専門家を超える高精度分析を短時間で実現~
2016年9月2日
日本電気株式会社
NECは、顧客一人ひとりの趣味や嗜好といった詳細なプロフィールを、マーケティングの専門家が関与することなく、高精度に自動推定できる「顧客プロフィール推定技術」を開発しました。本技術は、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」(注1)の1つとなります。
マーケティング分野では、顧客一人ひとりの価値観をとらえた“個”のマーケティングが注目されています。そのためには各人の詳細なプロフィール情報が必要ですが、比較的容易に入手できるのは年齢、性別等の基本プロフィールに限られ、職業、嗜好、年収などの詳細なプロフィールは入手が困難です。従来は、入手可能な基本プロフィールから詳細プロフィールを推定する、あるいは購買履歴(ID-POS 注2)をもとに商品と顧客の特徴を結びつけて詳細プロフィールを推定していましたが、これらは分析精度や手間の面で課題がありました。
今回開発した技術は、NEC独自の関係マイニング技術に基づき、基本プロフィールと購買履歴から、顧客一人ひとりの詳細なプロフィールを、高精度かつ全自動で推定します。これにより、刻々と変化するライフスタイルへの対応や、見逃していた”個”の真のニーズの素早い発見・施策立案が可能になります。
NECは、公開データを用いて本技術の有効性を検証しました。その結果、従来専門家が3ヶ月かかっていた分析を、専門家を上回る精度で3日で実施できることを確認しました(注3)。
今後、NECは百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、ECサイト、ポイントカードシステム事業者などの小売・流通分野への適用を視野に、本技術の研究開発を進めていきます。
背景
企業のマーケティングにおいては、消費者全体をみるマスマーケティングに加え、消費者一人ひとりの価値観をとらえた“個”のマーケティング(マイクロマーケティング)が注目されています。”個”のマーケティングでは、各人のプロフィール情報に基づいて、”個”の潜在ニーズを発掘し、よりターゲットの興味関心や購買意向、価値観に合った商品開発・販売戦略立案を行います。消費者一人ひとりの詳細なプロフィール情報(例:職業、嗜好、年収など)を会員登録やアンケートを通じて直接収集するのは難しいため、これまでは次のような手法がとられてきました。
一つは、年齢、性別といった比較的収集が容易な情報から残りの詳細プロフィール情報を推定する方法ですが、単純なデータ解析では精度よい推定ができませんでした。
もう一つの方法として、各商品に関する消費者視点での特徴の情報(商品DNA 注4)をひも付けしておき、これを商品購買履歴と照らし合わせることで、消費者一人ひとりの詳細プロフィールを推定する手法があります。この手法は精度を高められますが、商品へのラベル付けにマーケティング専門家の関与が必要で、しかも膨大な手間がかかるという課題がありました。
今回NECは、これらの従来課題を解決し、顧客一人ひとりのプロフィールを自動で高精度に推定する「顧客プロフィール推定技術」を開発しました。
新技術の特長
- 基本プロフィールと購買履歴から、詳細プロフィールを自動推定
NEC独自の関係マイニング技術により、顧客の基本的なプロフィール情報と購買履歴を入力するだけで、各顧客の詳細なプロフィール情報の推定結果を出力します。人手による商品へのラベル付け作業等を全廃した全自動プロセスとなるため、従来3ヶ月かかっていた分析時間を3日という短時間で顧客一人ひとりの詳細プロフィールを推定することが可能です(注3)。
- 仮説の生成と検証を繰り返し、専門家を上回る推定精度を実現
商品の購買履歴を参照して顧客一人ひとりの詳細プロフィールの仮説を作り出すAIと、一部の顧客が回答したアンケート結果を参照して仮説の正しさ検証するAIの二つが相互連携し、「仮説の生成 → 検証 → 仮説生成へのフィードバック」というサイクルを繰り返すことで、分析者の主観を混入することなく詳細プロフィールを推定していきます。このサイクルを高速に何度も回すことにより、専門家の分析結果を上回る精度で顧客の詳細プロフィールの推定を実現します。
なお、本技術は顧客の詳細なプロフィール推定だけでなく、商品属性(商品DNA)の推定にも応用できます。例えば、専門家が一部の商品に付けた商品DNAのラベルを用い、残りの商品の商品DNAを自動で付与できます。これにより、専門家によって商品DNAを付ける分析作業がなくなるため、コストを劇的に軽減することも可能です。
NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進ICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
- (注1)
「NEC the WISE」(エヌイーシー ザ ワイズ)は、NECの最先端AI技術群の名称です。 "The WISE"には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めています。
プレスリリース「NEC、AI(人工知能)技術ブランド「NEC the WISE」を策定
http://jpn.nec.com/press/201607/20160719_01.html
NECのAI研究
http://jpn.nec.com/rd/crl/ai/ - (注2) ID-POS:誰に何が売れたか、というID(顧客)情報を含む購買履歴データ。ポイントカードなどから得ることができる。
- (注3)公開されている映画レビュー情報100万件を使って、映画レビューサイト利用者の基本プロフィール(年齢、性別)と視聴履歴(購買履歴データに相当)から、ジャンル(商品DNAに相当)を自動で付与し、利用者一人ひとりの詳細なプロフィール(映画の嗜好)を推定。
- (注4)商品DNA:「その商品がどのようなライフスタイルの顧客に購入されるか」をあらわすラベル情報であり、あらかじめメーカーにより付与されることや、マーケターのような専門家により付与されることが主となっている。
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
NEC 研究企画本部 研究プロモーショングループ
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