2014年12月9日
日本電気株式会社
NECは、道路橋などの構造物の内部劣化状態をカメラで撮影した表面映像から、計測・推定できる世界初(注1)の技術を開発しました。
本技術は、世界トップレベルのNEC独自の映像・画像処理技術を活用し、道路橋などのインフラ構造物の表面振動を撮影・計測・分析することで、亀裂・剥離・空洞などの内部劣化状態の推定を可能にするものです。本技術により、劣化したインフラの早期発見と、補修作業の優先付けを効率的に行うことができます。また、人手による目視・打音などの近接点検や、点検に伴う足場の構築・道路の交通規制を減らし、劣化診断コストを従来手法と比べ約1/10以下(注2)にすることを目指します。
NECは、「社会ソリューション事業」に注力しており、ICTを活用した社会インフラの老朽化対策・防災力強化を推進しています。今回の新技術もこの一環であり、今後も本技術の開発を継続強化し、安全・安心な社会インフラの実現に貢献していきます。 |
背景
昨今、1960年頃に建設された道路橋などのインフラ構造物が寿命の50年を経て更新時期を迎えており、その維持管理コストの削減が喫緊の課題となっています。
構造物の寿命は、維持管理手法を従来の異常発生後に修復する「事後保全型」から異常発生前に補修する「予防保全型」へと変えることで延長できるとされており、総務省の試算(
注3)では、国内の道路橋における今後50年間の維持更新費を約17兆円削減できるとされています。そのためには、予防保全型の維持管理では異常発生前に劣化原因を特定して補修する必要があり、より高い頻度での保守点検が不可欠になります。
また、構造物の内部劣化状態の詳細を調査する必要があることから人手による近接の目視・打音点検も必要ですが、こうした点検には足場の構築や、それに伴う交通規制が必要となることから、多額の費用や時間を要しており、コストの低減が求められています。
今回開発した技術は、劣化したインフラの早期発見と補修作業の優先付けの効率化を可能とするもので、インフラ維持管理コストの削減に貢献します。
新技術の特長
このたび開発した技術は、NECが保有する世界トップレベルの「超解像技術」(
注4)、「映像・画像鮮明化技術」(
注5)、および「4K超高精細映像高圧縮技術」(
注6)の開発等で培った映像・画像処理のノウハウを応用し、実現したものです。
- 構造物表面の多数点の微小振動を同時に計測
映像中の物体の微小な動き(振動)を高速かつ高精度に検出できる、NEC独自の「被写体振動計測アルゴリズム」を開発。微小な振動の解析に必要な「カメラ画素数の100倍の解像度での動き解析」において、データ量が多く、従来時間がかかっていた解析処理を、映像圧縮などで培ったノウハウを用いて高速化。これにより高いフレームレート(注7)で撮影された映像の高速解析を可能とし、構造物表面の多数点の微小振動の同時計測を実現。
- 表面振動から内部の劣化状態を推定
亀裂・剥離・空洞など、内部劣化が生じている箇所の振動パターンの違いを発見・検出できる独自の「振動相関解析アルゴリズム」を開発。目視で発見できない構造物内部の劣化状態を高精度に推定可能。
これらの技術により、カメラ映像から物体内部の劣化状態を推定できるため、点検による設備の一時停止など事業機会損失の低減が望まれる、工場・プラント内の大型設備など、道路橋などの構造物インフラ以外への応用も期待されます。NECは今後、本技術の実証を進め2015年度中の実用化を目指します。
NECグループは、「2015中期経営計画」のもと、安全・安心・効率・公平という社会価値を提供する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進のICT技術や知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
(注1) 映像から表面振動を計測し、内部状態(亀裂・剥離・空洞など)の推定を実現したのは世界初の試み。
(注3) 総務省資料「社会資本の維持管理及び更新に関する行政評価・監視 -道路橋の保全等を中心として-結果に基づく勧告」
(注7) 秒あたりのコマ数。テレビでは通常60コマ。値が高いほど動きが滑らかになる。
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