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梅雨明け後に急増する119番通報 NECのAIで緊急度の判定を支援
2026年7月2日

梅雨が明けると本格的な夏がやってきます。最高気温40℃以上を「酷暑日」とする新たな名称も誕生し、今年も厳しい暑さが予想されています。この季節に多発するのが熱中症で、梅雨明け後は119番通報の急増が懸念されます。

拡大する近年、暑さの影響もあり年間を通した119番通報の件数も増加傾向で、2023年、2024年とも1000万件以上にのぼりました。それに伴い119番通報を受ける消防の指令員の負担も増加。NECは、長年にわたって消防指令システムを提供してきた知見を活かし、指令員の作業負荷を軽減するための技術開発に取り組んでいます。
緊急度の判定 通報の聞き取りと項目入力が同時進行
119番通報を受けた指令員は、迅速な判断を求められます。すぐに救急車を出すべきか。応急手当を指導すべきか。安静にして様子を見てもらうか──等々。こうした緊急度の判定を個人の判断に頼らず、「呼吸困難」「動悸」「意識障害」など20以上の症状から判断するのが「緊急度判定プロトコル」という手順で、2008年から横浜市消防局で運用が始まっているほか、総務省からも具体的なプロトコルが全国の消防に向けて公開されています。客観的な判定が期待される一方、通報が集中した場合には指令員の負担増も想定されています。

「指令員は現在、119番通報の電話に応対しながら、手元では複数の画面を見ながら情報を整理するという、高度に集中力が必要な作業が求められています」と話すのは、NECレジリエンス統括部 消防DXシステムグループの山浦翼です。

消防DXシステムグループ 山浦翼

緊迫した業務の負担を少しでも減らそうと、NECが開発したのが指令員の画面操作をサポートするAI入力支援システムです。119番通報の音声をリアルタイムでテキスト化する音声解析AIと、年齢・性別・症状などの患者情報を抽出する構造化AIを組み合わせ、指令員の応対と同時進行でシステムが解析を進めます。

拡大するNECの音声解析AIと構造化AI 119番通報を正確に整理
システムの特長の一つが音声解析AI。音声をテキストに変換する技術は広く使われていますが、病歴など専門用語を正しく変換できないこともありました。そこで、NECが開発した音声認識エンジンを活用。さらに数百時間分の119番通報を学習させて精度を向上させました。この技術は「119番通報のクラウド型音声認識サービス」として、先行して2024年から提供を開始しており、全国20以上の消防で利用が始まっています。

もう一つの特長が「構造化」です。例えば通販で買い物する際、「商品名」「注文数」「名前」「住所」などの必要な情報が項目にそって入力されれば、迅速に処理することができます。このように情報を理解・処理しやすい形式に整理・変換することを「構造化」といいます。
一方で119番通報では、人によって伝える順序が異なる上に、内容がまとまっていなかったり、表現が様々だったりすることがあり、そのままでは処理に使えません。そこで今回のシステムでは生成AIなどを活用して独自の構造化を行っています。例えばこんな通報があったとします。
「家族が急に倒れて。救急車をお願いします。ケガは無いみたいです。話もできるのですが、立つことも歩くこともできません。父親なんですが、もう高齢で。72か73だと思います」
このような会話から、患者の緊急度(緊急性)を判断するのに必要な情報を自動的に抽出し整理するのが構造化AIです。今回のシステムを使うと、指令員が手を動かすことなく、緊急度判定に必要な項目が整理されて画面に表示されます。
- 年齢:70歳以上
- 性別:男性
- 出血・損傷程度:傷なし・出血なし
- 会話:普通
- 意識:正常・普通
- 歩行:歩けない

指令員は通報者との対話に集中でき、必要に応じて表示内容を修正するだけで済むので作業負担もぐっと減ることが期待されます。

緊急度判定を支援するこのシステムは、横浜市消防局の協力を得て実証を進め、実用化に向けた取り組みが進んでいます。このプロジェクトをリードするレジリエンス統括部の村田哲史によると、NECでは「通報が集中した場合、指令員が対応するまでの間は一時的にAIが自動応答して緊急度判定に必要な情報を抽出しておき、指令員にその情報を引き継ぐというアイデアも検討している」と言います。
NECは「消防指令システム」では全国トップのシェアを誇るなど、消防の分野で積み重ねた知見があり、この分野の課題解決をリードし続けてきた実績があります。「119 番通報や救急需要の増加という日本の社会課題もAIなどNEC の技術を使って解決していきたい」と村田は意気込みます。