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GXの未来像 NECのソートリーダーシップ活動で切り拓く

気候変動、食料問題——現代社会が直面する課題は、一企業や一つの技術だけで解決できるものではありません。だからこそ今、一時的な解決策にとどまらない、社会と共有できる「考え方」や「視座」が求められています。NECが取り組むソートリーダーシップ活動では、社会課題を起点にテクノロジーの力を活かし、私たちが暮らす社会の未来像を様々なステークホルダーとともに描いていきます。

今回のテーマは、環境保護と経済成長の両立を目指す「グリーントランスフォーメーション(以下GX)」。クリーンエネルギーへの転換に加え、経済社会システム全体の変革が求められる中、NEC GX事業開発統括部の佐藤美紀と、NECグループの独立シンクタンク国際社会経済研究所(IISE)ソートリーダーシップ推進部の崎村奏子が、GXとソートリーダーシップ活動について語ります。

環境保護と経済成長の“両立”をデジタル技術で推進

——NECのGXとソートリーダーシップ活動はどうつながっていますか。

佐藤:私たちは環境保護と経済成長を“両立”する取り組みをデジタル技術で後押しし、GXを単なる理念で終わらせず、実効性を伴う「経済を動かすしくみ」として社会に広げていくことを目指しています。それが社会価値創造企業としてのNECの役割です。GX事業開発統括部では、その実現に向けた提案活動や事業開発に加え、IISEと連携して中長期のビジョンを描き、市場づくりやルール形成にも働きかけながらGXを社会に根付かせていく「ソートリーダーシップ活動」にも取り組んでいます。

NEC GX事業開発統括部 統括部長 佐藤美紀

崎村:「ソートリーダーシップ活動」は「社会課題を解決に導く新しい考え方(ソート)を世の中に提示し、ステークホルダーの共感と共創を通じて新しい価値を創造する社会実装活動」です。私たちIISEは、NECグループのソートリーダーシップ活動をリードし、有識者の知見を結集し、未来構想から社会実装までを推進する「プラットフォーム型シンクタンク」になることを目指しています。

——活動の具体例は?

崎村:一つの例として、「気候変動」へのアプローチをご紹介します。気候変動対策は大きく分けて2つあります。CO₂排出量の削減など、原因そのものに働きかける「緩和」策と、洪水や干ばつなどが起こった際の被害を抑える「適応」策です。適応策は緩和策に比べて効果や価値が見えにくいという課題が指摘されてきました。そこで私たちは、適応策を実施した場合としなかった場合の差を「適応価値」と定義。その価値をデジタル技術で可視化することで、適応分野への投資を呼び込むことに挑戦しています。

IISE ソートリーダーシップ推進部 プロフェッショナル 崎村奏子

2024年にはNECと三井住友海上火災保険を幹事社として「適応ファイナンスコンソーシアム」を立ち上げました。建設・インフラ関連企業や金融機関など現在7社が参加し、月1回の定例検討会を開催しています。

雨水の浸透や貯留を促す雨庭や湿地整備など、自然の力を活かした適応策(グリーンインフラ)も主要テーマの一つです。防災に加えて、生物多様性の保全や人々のウェルビーイング向上といった多面的な価値を可視化し、民間主導で資金・人材を投じやすい仕組みづくりにつなげていきたいと考えています。

「サステナビリティは儲からない」を過去にする

——2025年11月、佐藤さんはブラジルで「COP30」(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)に登壇しました。

佐藤:NECがCOP30に参加するのは今回で3回目です。目的の1つは、気候変動やGXに関するビジョンと、その実現に向けた技術的な解決策を国際社会に提示し、ソートリーダーシップ活動を推進すること。もう1つは、ともに社会実装を進めるビジネスの共創パートナーを見つけることです。

会場では、国際機関のトップ層やGXの専門家に対して「NECが掲げるソートに賛同いただけるか」「対価を支払ってでも実現したいと思えるか」といった点を率直に伺うようにしています。こうした対話を通じて、私たち自身が「これは想定以上にニーズが高いテーマだ」と認識を深めるケースも少なくありません。得られた“現場の声”を丁寧にフィードバックしながら、実現に向けた道筋を継続的にアップデートしています。

今回のCOP30では、昨年のCOPで寄せられた声を踏まえ、インドネシアで実証トライアルを行った「都市部の水害リスク対策の効果可視化」のデモを紹介しました。あわせて、アフリカ地域の農業を対象に、複合的な気候変動対策を導入した場合のレジリエンス(耐久力)をAIでシミュレーションした結果も提示し、将来リスクと解決策を具体的に示しました。

COP30全体でも、適応分野における世界共通の評価や評価軸の整備に向けた動きが前進しています。NECが国内で40年以上にわたり培ってきた防災・減災の知見や技術が、気候変動への関心の高まりを追い風に、国や地域を超えて求められつつあることを実感しています。

COP30 JAPANパビリオンでの講演

——NECグループの強みが生かせていますね。

佐藤:「環境やサステナビリティは儲からない」と言われがちですが、それを「儲かるビジネス」にデザインしなおすことで、本当のサステナビリティを実現するのが私たちの仕事です。今後は、NECの既存ビジネスに近いサプライチェーン領域などでもビジネスを立ち上げていきます。

GXは少なくとも日本政府が掲げる2050年までは“終わらない”テーマです。長期戦だからこそ、市場がいつ立ち上がるのか、期待できるほどの成長が見込めるかなどの「見極め」が欠かせません。事業部門は短期的な顧客ニーズや価値提案の追求に向けて視野が狭くなりがちですが、われわれは、IISEと共に「ソートリーダーシップ活動」を行うことで、常に世界の潮流を捉えた広い視座を得ることができます。GX推進において、NECが向かうべき方向性を見失わないための羅針盤のような役割をIISEが果たしてくれています。

崎村:IISEの強みは、多様な外部人材とのつながりにもあります。先日実施した「new windowIISE FORUM 2026」では、米国最大級のベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツ社のMartin Casado氏や慶應義塾大学の安宅和人教授など各界の有識者が集い、私も「環境」のセッションでモデレーターを務めました。

IISE FORUM2026のブレイクアウトセッション「AIが拓く環境情報化~意思決定と市場の変革~」

幅広い知見のネットワークにNECグループの技術を掛け合わせることで、私たちにしか生み出せないユニークな価値を創出できるはずです。多様なステークホルダーと丁寧に「対話」を重ねながら、誰もが納得できる着地点を探っていく——。時間はかかるかもしれませんが、そうしたプロセスを経てこそ、本質的な「ソート」にたどり着ける。そしてそれが、より良いビジネス創出につながると信じています。

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