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自然と共生する。企業目線でこの目標に挑むアプローチの一つがTaskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)、略称TNFDです。ざっくりいえばビジネス活動と自然環境との関わりを「見える化」するTNFDレポートにおいて、NECは先駆的な企業として注目を集めています。ポイントは「事業機会」「社内横断」、そして「スピード」。6月は環境月間。環境とビジネス両方のサステナビリティを目指すNECの取り組みを掘り下げます。
「事業機会」も「リスク」も 世界を変えるテコになる
TNFDは、自然環境を守ることに世界のお金が流れるように、G7環境相会合の呼びかけで誕生しました。企業活動と自然環境の関わりとそれに伴うリスクと機会を開示するTNFDレポートは、投資家や金融機関などが企業を評価する指標となっています。

企業活動と自然環境との関わりの「見える化」に、NECが得意とするデジタル技術は大きな役割を果たします。例えば、食品・飲料、アパレル、製薬などの業界では原料の農地の環境影響をTNFDレポートで開示する事が求められるようになり、ここではNECの営農支援プラットフォーム「CropScope」が役に立ちます。また、高い市場シェアを誇るNECのPLM(Product Lifecycle Management)「Obbligato」に環境情報を織り込めば、設計、調達、生産を通じた環境負荷の低減につながります。「あらゆる産業のお客様にITシステムを提供しているNECは世界を変えるテコになれます」とTNFDレポート編集を率いる岡野豊は説明し「これは大きな事業機会でもあります」と強調します。

機会だけでなく、リスクにも向き合っています。工場やデータセンターなどの環境影響に関しては、現場で自治体関係者など地域のステークホルダーにヒアリングをしながら、水環境等へのリスクが小さい事を確認してレポートに盛り込んでいます。このリスク調査のやり方も多くの企業が参考にしています
1800人の社内横断コミュニティ 活発に情報交換
特長の一つに「網羅性」もあります。2024年に発行された第2版では、海底ケーブルを含む150種類の事業について分析しました。この網羅性を支えるのが社内横断コミュニティです。2021年、環境問題の情報を交換する「NEC for Green」というコミュニティが社内のMicrosoft teamsに発足。自主的に集まった数人で始まったコミュニティの参加者は今や1800人を超えます。「どうすればこれだけの社員が環境課題のコミュニティに参加するのか」と、社外からも驚きの声が寄せられています。
「最新の市場動向をまとめました」という若手の投稿に、役員が「他の役員にも共有させてもらいます」と反応するなど、部門や役職に関係なく情報交換が行われています。発起人を中心とした事務局が小まめに反応して「安心してやりとりできる場づくり」を支えているからです。「お客様からの相談で、こんな事を解決する技術やソリューションが無いでしょうか」と営業担当者が投稿すると、多くの意見が寄せられます。新規事業立ち上げ、新しい受注、国際会議での登壇など、嬉しいニュースが共有されて盛り上がることもしばしばです。
大手自動車メーカーとスタートアップを経験してNECに転職した岡野はこう語ります。「NECは内向きの文化からダイナミックに変わっています。社会価値を提供する仲間がどんどん増えてきている」。


TNFDレポートづくりでは、このコミュニティが大きな役割を果たし、グループ会社を含む25部署から80人がレポート作成に関わりました。
スタートアップよりも速く 世界をリードするスピード感
もう一つの特長はスピードです。初版の発行は2023年の7月。TNFDフレームワークのβ(ベータ)版を参考に作成しており、国内IT企業初のレポートでした。2か月後の9月にTNFDフレームワークの正式版が開示された直後には、“どこよりも早い解説セミナー”を開催し、6日間の案内で500人以上が参加しました。

環境分野は動きが早く、情報発信もスピード勝負です。年月単位ではなく、1日でも早く良いものを社会に届けられるように。NECのTNFDレポートはスピーディーに進化し続けています。2024年には第2版を発行し、海底ケーブルを含む150種類の事業に関して、網羅的に環境との関わりを分析しました。2025年は第3版の作成に向けて、Agentic AIを活用して、レポート作成を高度化、効率化しています。
こうした取り組みが評価され、国際社会での存在感も増しています。生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)のG7セッション、各国の環境省や経団連のイベントなどにも招待を受け、世界でNECの取り組みを紹介しています。国際機関や世界中のスタートアップからも協業の相談を日々受けています。

「儲かれば儲かるほど、環境が良くなるビジネスが世界に広がるように」。岡野が強調するように、NECがPurpose(存在意義)に掲げる「持続可能な社会」を目指して、NECの挑戦は続きます。