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「気が利く」ロボが倉庫の作業に一役 世界が注目するNECの制御AIが届ける社会価値
2023年6月8日

ロボット活用によって効率化をすすめる、と言うと「何をいまさら」という感じがしますが、実社会でのロボットの導入は、かつて想像したほどには進んでいません。それは、ロボットは「同じ作業を正確に高速で繰り返すこと」は得意なものの、人間のように状況に合わせて「柔軟に対応すること」は苦手だからです。この課題を解決しようと、NECの研究者が取り組んでいるのが制御AI(人工知能)の開発です。


同僚のようにロボットが「気を利かせて」働いてくれれば、人手不足の業界の救世主になるかもしれない。世界が注目するこの技術と、NECが創る社会価値の可能性を動画とともにお届けします。
人間のような想像力を獲得する「世界モデル」 実用可能なレベルへ
今回のポイントは、「World Model(世界モデル)」をロボットの制御に適用したことです。世界モデルとは、ある行動の結果として実世界で何が起こるかを、現実に試さなくても予測できるようにする技術で、近年、国内外の研究機関から注目されています。
「実世界を予想」と言うと難しく聞こえますが、人間のような想像力を獲得する技術、とも言いかえることができます。
「人や動物は過去の経験や限られた情報から、次に起こることを素早く予測することが出来ます。ロボットもこのような予測・推論が出来るようになれば、自ら最適化された動きが出来るようになります」
こう話すのは、NECのデータサイエンスラボラトリーの大山博之です。今回NECが行った実験では、5~15cmのランダムなサイズの直方体を様々なサイズの箱の中に指定通りに収納する作業を、物理シミュレーションで95%という高い精度で成功させました。従来の学習方法の成功率約70%と比べて、現場で活用できるレベルに一歩近づいたことになります。


「急に人手が不足!」そんな現場に助っ人ロボがくる未来を目指す
では、何の役に立つのでしょうか。想定される現場は、人手不足が問題となっている物流倉庫や工場です。


例えば、工場の生産ラインで使われるロボットでは、部品の取り付けなどの作業を事前に学習させています。しかし、物流倉庫などでは、扱う商品の大きさや形、ロボットの配置場所など頻繁に変わり、起こりうる全ての作業を事前に学習させることは現実的ではありません。
そこで、今回開発した制御AIの技術が役にたちます。「この技術によって、従来数ヶ月かかっていた学習を、わずか数日で終わらせることが可能になります。今後は、より複雑な作業にも対応できるように開発を進め、将来的には、急に多くの仕事が入った時でも、ロボットが現場ですぐ対応してくれるような社会を実現したいです」と大山は構想を語ります。

今後検証を進め、2024年度中の実用化を目指しています。
物流へのニーズが急拡大する今、人手に頼らざるをえなかった物流倉庫の現場において、「気を利かす」ロボット導入が進めば、働く人の環境が、そして私たちの暮らしが今よりもっとよくなるかもしれません。
技術によって新たな価値を生む。このロボット制御AIがめざすもの、それは、NECグループがPurpose(存在意義)に掲げる「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現」そのものでもあります。