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夢を叶えた先でも挑戦は続く

No Borders for Dreams Vol.8

走り続けるトップ選手の迷いと信念

数々の挑戦を乗り越え、夢を叶え、大きな舞台で戦うトップアスリートたち。その姿に心を動かされる人は多いのではないでしょうか。しかし、夢を叶えた先でも挑戦は続きます。それは車いすテニスだけでなく、他のスポーツでも同じです。今回は、女子バレーボールチームのNECレッドロケッツ川崎(以下、レッドロケッツ)で、2026-27シーズンより新キャプテンに就任した中川つかさ選手にインタビューを実施しました。異なる競技、異なるキャリアを歩んできた中川選手と、車いすテニス界のレジェンド・国枝慎吾さん。二人の言葉から、夢を叶えた先に続く挑戦のかたちを見つめます。

No Borders for Dreams 国枝慎吾×NECが見つける挑戦のかたち

NECは、「誰もが夢を抱き、挑戦できる社会」の実現を目指し、30年以上にわたり、車いすテニスを応援してきました。
「No Borders for Dreams」シリーズでは、国枝慎吾さんとともに、車いすテニスの魅力や挑戦する人々を紹介。挑戦の物語を通じて、誰もが“自分の夢に一歩踏み出す”きっかけを届けていきます。

ずっと目指してきた夢の舞台と、その先にある葛藤

シングルスやダブルスが基本の車いすテニスと、複数人でチームを組んで戦うバレーボール。ルールもプレースタイルも違うふたつの競技ですが、「勝利を目指す」という点はどちらも同じ。トップを目指して最前線を駆け抜けるアスリートたちの思いや姿勢には、どのような共通点があるのでしょうか。

中川選手の夢は、子どもの頃からずっと「バレーの日本代表選手になる」ことでした。彼女がその夢を叶えたのは、大学を卒業した直後の2023年。憧れの舞台に立てた嬉しさを噛みしめると同時に、当時の心境を「世界というレベルの高さに圧倒された」と語ります。

「初めて日本代表選手に選ばれたときはとても嬉しかったです。実際にコートに立つと、そこで繰り広げられる試合のレベルが想像以上に高く、緊張もしました。でも、だからこそ『また選ばれたい』『またここに立ちたい』の気持ちも強く湧いてきたんです」

その後も日本代表選手に選ばれ、2025年には世界選手権4位という成績を残した中川選手。また、彼女が所属するレッドロケッツは、2025-26シーズンのSV.LEAGUEで3位、天皇杯・皇后杯では準優勝という結果を出しています。個人としてもチームとしても順調な歩みを重ねてきたように見えますが、中川選手は昨シーズンを「目を向けるべき課題があると気づいていたのに、向き合い切れなかった」と振り返ります。

NECレッドロケッツ川崎 中川つかさキャプテン
©NEC RED ROCKETS KAWASAKI

「レッドロケッツはもっと上位を狙えたはずなのに、最後の最後で勝てなかった。本当は、リーグの最中からチームの連携力の弱さだとか、“もっとここに目を向けるべきだ”と感じるところはあったんです。でも、順調に勝ち進んでいたためにやり過ごしてしまった。あのときちゃんと向き合っていたら、もっといい結果が出せたんじゃないかと思うんです。今シーズンでは勝ち負けに関係なく、メンバーと常にコミュニケーションを取りながらチームのレベルを上げていきたいです」

先が見えないという壁をどう乗り越えるか

2026-27シーズンが始まり、すでに走り出しているレッドロケッツ。しかし今、中川選手は「自分の進むべき道に迷いが生じている」と語ります。

「どうすればまたあの大きな舞台に立てるのか。どうすればレッドロケッツというチームの中で、もっと自分の価値を上げられるのか。今までは先が見えていましたが、今はうまく見えていない状態かもしれません」

子どもの頃からの夢を叶え、日本代表として、所属チームのキャプテンとして活躍する中川選手ですが、心の中ではさまざまな葛藤を抱えているようです。そんな中川選手の想いに、長年車いすテニスの世界ランキング1位の座を守り続けてきた国枝さんも共感を示します。

「初めて世界1位になった直後は、私も目標を見失いました。ずっと世界1位の選手に勝つため練習プランや戦術を磨いていましたが、私自身が世界ランキング1位になった瞬間、目標がいなくなってしまったのです」

追いかけていた存在に追いつき、目標を見失ってしまった国枝さんの過去。それでも彼が長年世界1位の座を守り続けられたのは、「他の誰かに向けていた目標を、自分と向き合うことに変えていったから」だと語ります。

「トップになってからも大会は続きます。何度も試合に出場していると、だんだん自分の克服すべき点が見えてくるんです。目指す人がいなくても、自分の中に課題を見つけてさえいれば、目標を見失うことはありません」

車いすテニスとバレーボール。競技の内容も歩んできた道も異なる二人ですが、夢を叶えた先で抱えた葛藤はどこか似ているようにも感じます。そう考えると、夢を叶え、次の目標を見つけようともがく時間は、アスリートにとっても、誰にとっても必要なプロセスなのかもしれません。

史上初のグランドスラムを達成した2007年当時の国枝さん
(2027年チェコオープンにて)

どれだけ迷っても、信念だけは手放さない

2025-26大同生命SV.LEAGUE WOMEN
©NEC RED ROCKETS KAWASAKI

迷いを感じながらも、中川選手は決して手放したくないものがあると語ります。

「どれだけ悩もうと、頑張ると決めたからにはやり遂げたい。その『信念』だけは、絶対になくしたくないと思っています」

新キャプテンとしてチームを率いる中で、これまで以上に一人ひとりを理解することを大切にしたいと話す中川選手。副キャプテンや他のメンバーともコミュニケーションを取りながら、チームと向き合う時間を増やそうとしているそうです。

「レッドロケッツとしてチームで勝利を目指す。そのゴールは同じでも、そこに込めた想いはメンバー一人ひとり違います。『チームのユニフォームを着て試合に出たい』『去年よりいい成績を残したい』『世界に通用する選手になりたい』など、いろんな想いがあるはず。それに、監督から同じことを言われたとしても、受け取り方は個人個人で違うと思います。バレーボールはチームワークが欠かせないスポーツだからこそ、一人ひとりの想いや価値観を理解し、より良い状態へと持っていきたいです」

信念を胸に、壁を乗り越え、また次の世界へ

そんな中川選手が目指す現在の夢は、2028年のロサンゼルスオリンピック出場。日本代表という子どもの頃からの夢を叶えた彼女は、迷いながらも、しっかりと着実に次の夢を目指していました。

観客の声援に応えるレッドロケッツの選手たち

「2028年のロサンゼルスオリンピックに向けて何ができるかを考えながら段階的な目標を決め、それに向かって頑張っています。目標のひとつが、『SV.LEAGUEで優勝するチームのセッターになる』です。チームで優勝を目指すことがオリンピックの出場にもつながると思うので、個人としてはもちろん、チームとしても昨シーズンよりもいい結果を出したいです」

駆け抜け、乗り越え、迷い、もがきながらも、前進を止めないアスリートの姿。それを支えているのは、たくさんの応援です。

「家族はいつも私を応援してくれています。メディアなどで私の活躍を観て、エールを送ってくれる人もいます。そして、チームの全員を応援してくれるファンのみなさまもいます。応援してくれる人たちのためにも、頑張ろうと思えます」

数々の試合を乗り越えてきた国枝さんも、「コートサイドにいる仲間の声や観客席からの応援は、確実に選手に届いています。会場に来てくれた方、テレビの前で応援してくれている方、そのすべての方に自分のプレーを届けたいという気持ちは、数々の試合で私の力となりました。応援はアスリートの力を引き出してくれるもの。私も、レッドロケッツのみなさんを応援しています!」と熱いエールを送ります。

夢を叶えた先に立ちはだかる次の壁。それは決して、トップアスリートの世界だけに限りません。誰もが夢を目指し、叶え、その先でも悩みながら進んでいくもの。ときには気持ちが追いつかないときや、先が見えなくなるときもあるかもしれません。それでも、進み続けていればきっと次の景色が見えてくるはず。中川選手や国枝さんが経験してきた葛藤と挑戦は、私たちが悩んだとき、前に進む勇気になるはずです。

  • ※
    中川選手へのインタビュー実施日:2026年9月4日

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