NEC、人によって異なる耳穴の形状を音で識別する生体認証技術を開発
2016年3月7日
日本電気株式会社
NECは、長岡技術科学大学の協力により、人間の耳穴の形状によって決まる音の反響を用いた新たなバイオメトリクス個人認証技術を開発しました。
本技術は、マイクロホン一体型イヤホン(以下、マイク一体型イヤホン)を耳に装着し、耳の穴で反響したイヤホンの音をマイクから収集することで、個人特有の耳の形状によって決まる音響特性を1秒程度で瞬時に測定します。
また、音響特性から個人の判別に有効な特徴量を抽出する独自技術により、高速かつ高精度な認証(認証率99%以上)を実現します。
本技術は、認証用機器に体の一部をかざすなどの動作が不要なため、移動中や作業を行いながらでも、マイク一体型イヤホンを装着するだけで音を聞くような自然な動作による常時認証が可能となります。
NECは、本技術を重要インフラ施設の保守・管理や警備など安全・安心に関わる業務でのなりすまし防止や、無線通信・通話における内容の秘密保持、医療現場など移動中や作業中の認証、さらに特定の人向けや特定の場面での音声ガイドサービスなどへの応用を視野に、2018年度中の実用化を目指します。
NECは「社会ソリューション事業」に注力しており、中でもセーフティ分野を強化しています。NECは、今回の新技術をはじめ、顔認証・指紋認証など世界トップクラスのバイオメトリクス認証技術を有しており、この開発やソリューション提供を通して、2020年とその先を見据えた安全・安心なまちづくりに貢献していきます。
背景
指紋、顔などのバイオメトリクス(生体情報)を用いた個人認証技術は、パスワードや鍵と比べて、漏えいや盗難のリスクが小さく、また忘れたり紛失したりしないという利点があります。
今回開発した技術は、高い認証精度に加え、耳の音響特性を用いて、利用者に負担をかけずに音を聞くような自然な動作で常時認証を実現する新しいバイオメトリクス認証技術です。
また、移動や作業をしながらでも個人認証が可能で、秘匿性を守ることができるなど、バイオメトリクス認証の活用の幅を広げる技術です。
新技術の特長は以下のとおりです。
新技術の特長
- 個人特有の聴覚器官の音響特性を瞬時かつ安定的に測定
マイク一体型イヤホンを用いて、イヤホンのスピーカから数100ミリ秒の音響信号を出力し、耳の中を伝搬した音響信号をマイクで受信します。複数回の受信信号の波形を加算し平均を取る同期加算法を用いて、受信信号に含まれる雑音の影響を排除します。そして、耳の中で音がどのように響くか(音響特性)を算出します。これらにより、個人特有の音響特性を瞬時(1秒以内)かつ安定的に測定できます。
- 人の聴覚器官の構造を考慮した特徴量を抽出し、高精度認証を実現
世界最高精度を有するNECの高度なバイオメトリクス認識技術(注1)の知見をベースに、音響特性から特徴量を抽出します。
耳の各部のサイズや形状は人によって異なるため、個人の判別に有効です。一般に音響信号は外耳道から鼓膜に達し、さらに中耳、内耳へと進みます。特に、外耳道を通って鼓膜で反射して返ってくる信号成分と、鼓膜を通過してさらに奥で反射して返ってくる信号成分が重要であることが実験の結果分かりました。本技術は、これら2種類の信号成分に対応する周波数帯を含む少数の特徴量を抽出します。本特徴量により、少ない計算量での動作が可能になるとともに、外的環境の影響を排除することで、安定して高精度な認証(99%以上)を実現します。
なお、NECと長岡技術科学大学は、今回の成果を3月9日から11日まで、横浜市青葉区・桐蔭横浜大学にて開催される「日本音響学会2016年春季研究発表会」において、10日に発表する予定です。
NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進のICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
- (注1) NEC、米国国立標準技術研究所(NIST)の顔認証技術 ベンチマークテストで3回連続評価を獲得
http://jpn.nec.com/press/201406/20140620_01.html
NEC、米国国立標準技術研究所(NIST)の指紋認証技術 ベンチマークテストにおいて第1位の評価を獲得
http://jpn.nec.com/press/201503/20150306_01.html
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