2015年2月9日
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院
日本電気株式会社
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院(所在地:熊本県熊本市、院長:副島秀久、以下 済生会熊本病院)とNECは共同で、業界で初めて、電子カルテに入力・蓄積した診療データを収集・分析・見える化して、治療プロセスの品質管理を支援するソフトウェア「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」を開発しました。 済生会熊本病院は、2014年4月より本機能を試行的に導入し、このたび本格導入に至りました。今後、本機能を活用し、バリアンス(注1)収集・分析を効率よく行い、PDCAサイクルを高速に回すことで、医療の質のより一層の向上を目指します。
またNECは、「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」をNEC電子カルテシステム「MegaOak HR」(注2)の追加機能として本日より販売開始します。 |
背景
現在、多くの病院では、入院患者に対して、入院中にどのような治療や検査を行っていくかといった治療プロセスを疾病ごとに定めた「標準診療計画」に基づいて治療を行っています。この治療プロセスの品質を管理し改善していくために、患者ごとに目標(アウトカム)を設定し、目標未達成時(バリアンス)の患者状況などの情報を収集して分析する「クリニカルパス」という手法が導入されています。本手法を導入することで、治療プロセスの品質管理・改善に加え、チーム医療(
注3)の実現や、患者へのインフォームドコンセント(
注4)への活用など、医療の質の向上が期待されています。
クリニカルパスにおいては、標準治療計画から患者の経過が逸脱していないかを把握する上で、目標未達成時(バリアンス)の情報を常に収集して分析することが重要になります。しかし、従来の電子カルテシステムでは、自由記述でのデータ入力が主で用語が標準化されていなかったことから、分析可能な形式にデータを加工する必要があり、分析に手間と時間が必要となる課題がありました。
今回、「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」を開発し、あらかじめデータ分析が可能な形式で、電子カルテから日々の診療データを収集する仕組みを構築しました。これにより、標準診療計画に基づいた治療プロセスが患者の経過に与えた影響について、タイムリーな分析・確認を実現し、次の計画策定を支援します。
「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」試行の結果
済生会熊本病院における試行では、電子カルテに日々の記録を入力することで、自動的に在院日数・バリアンス(目標未達成時)の件数やその内容・費用の表示が可能になりました。これによって問題となる症例を瞬時に抽出可能となり、入院日数が長引く患者には疼痛(痛み)コントロールに問題があることがわかる等、早期に現場へのフィードバックを実現可能にします。
「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」の特長
- 診療データを効率的に収集しデータ分析作業時間を短縮
日本クリニカルパス学会(注5)監修の患者状態アウトカム用語集(Basic Outcome Master:BOM、注6)を使用し、1日分の診療データを記録できる「日めくり記録」機能を搭載しました。本機能により、バリアンス発生(目標未達成)と判定した後すぐに、判定内容を決まった用語・形式で記録可能です。また、アウトカム(達成目標)とアウトカムの達成を判断する観察項目(注7)や実測値(注8)などの根拠データを紐付けての記録を実現します。より正確なデータ記録を実現することで、従来は2か月を要していた分析用のデータ収集作業を省略することが可能になります。
- 済生会熊本病院のノウハウを活用したビューワ機能を搭載
済生会熊本病院がクリニカルパス活動を通じて、診療プロセス分析を長年行ってきたノウハウと実績を活用したビューワ機能を搭載しました。患者別の入院日数、バリアンス(目標未達成)の内容や件数・医療資源の投入状況のバラつき・偏りの状況を自動でグラフ化し、一覧で確認できるとともに、CSV形式でのデータ出力も可能です。
- 電子カルテ端末から患者の経過・状態などをタイムリーに把握
診療現場の医師や看護師らが、電子カルテ端末からビューワを起動し、画面上で担当患者のバリアンス(目標未達成)発生状況などを瞬時に確認することが可能です。また、治療プロセスを疾病ごとに定めた「標準診療計画」から外れた症例の治療内容や患者状態を確認することで、治療成績に影響を与えそうなバリアンスを予測できます。
「新型電子クリニカルパス分析ビューワ」の概要と利用イメージについては、
別紙をご参照ください。
なお、今回の取り組みに関する講演を、NEC医療セミナー2015(東京:2/13(金)、大阪:2/20(金)、演者:済生会熊本病院 院長 副島秀久)にて行います。
「NEC医療セミナー2015」について
http://jpn.nec.com/medsq/event/index.html 【別紙】 MegaOakHR パス分析機能のご紹介
以上
(注1) 治療における達成目標(アウトカム)が達成されない状態。
(注3) 医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること。
(注7) BOMでは、アウトカム(達成目標)を達成したかを判断するための観察項目が定義されている。例えば、(患者の)「循環動態が安定している」というアウトカムの観察項目として、意識評価や拡張期血圧などが定義されている。
(注8) 観察項目を(患者において)実際に測定した値を指す。例:観察項目「拡張期血圧」の実測値「90mmHg」。
※ 本機能については、済生会熊本病院とNECで共同特許出願中 出願番頭 特願2014-073842
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