PASPY運営協議会(広島電鉄株式会社)様
国内ICカードシステム初のベンダースイッチを実現
安定性・拡張性を強化しサービス拡充につなげる
業種 | その他業種 |
業務 | 営業・販売 |
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製品 | その他 |
ソリューション・サービス | サービス/その他 |
事例の概要
課題背景
- ICカードシステムを刷新したいが、既存ベンダーを変更することに不安があった
- システムの運用負荷を削減し、本来業務にそのリソースを充てたい
- システムの制約を受けず、交通機関の利便性向上施策を拡充したい
成果
多様なニーズを反映
複数の交通事業者の要望をスムーズに取りまとめて反映
保守の一元化
現場端末を含めた保守の窓口をNECに一本化し、負担を軽減
サービス向上のための基盤を整備
安定性、拡張性に優れたICカードシステム基盤を実現利用イメージ
「PASPY」の利用イメージ
「PASPY」は、広島県内の交通事業者が運行する電車、バス、新交通システムなどの共通交通乗車券として利用可能。チャージは車載機や専用端末のほか、銀行ATMなどでも行えるなど、利便性向上が図られています。本事例に関するお問い合わせはこちらから
事例の詳細
導入前の背景や課題
カード利用者が増加し、システムが追い付けない状況に
広島電鉄株式会社
取締役 経営企画本部長
横田 好明 氏
広島県の電車・バス各事業者では、2008年1月から非接触型の交通系ICカード「PASPY(パスピー)」を導入し、継続的に利用者の利便性向上に努めてきました。
例えばJR西日本のICカード「ICOCA」をPASPYエリア内で使えるようにしたり、広島銀行や広島県内の4信用金庫(広島信用金庫・呉信用金庫・しまなみ信用金庫・広島みどり信用金庫)でATMチャージが行える仕組みを実現したことはその一例。現在は約130万枚のPASPYが発行されています。
「こうした発行枚数の増加は、我々にとって歓迎すべきもの。しかし一方で、利用が想定以上に広がったことで、ICカードのシステム基盤側に問題が浮上してきました」と広島電鉄の横田 好明氏は打ち明けます。
特に深刻だったのは、カード利用時のトランザクション増加にシステムが耐えきれず、レスポンスの低下や不具合が起こっていたことです。「PASPYは、県内の交通事業者が共同で立ち上げた『PASPY運営協議会』が運営しています。月に1回、運賃などの清算・配分処理を行いますが、その処理が遅延しかねない状況でした」(横田氏)。万一処理が遅れれば、各社の月次会計処理に悪影響が及び、経理処理に影響を及ぼすリスクも存在していました。
「こうした状況では、サービス向上に向けた新たな施策を検討することもままなりません。たとえ考えられたとしても、システムに不安を抱えたまま実行に移すことは難しい。そのため各事業者からの要望に応えられない状態が続いていたのです」と横田氏は語ります。
選択のポイント
決め手は実績と長期保守。NECへのベンダースイッチを決断
広島電鉄株式会社
経営企画本部 経営企画部
事業推進課(PASPY担当)
係長 藤原 善博 氏
そこでPASPY運営協議会は、既存ICカードシステムの抜本的な見直しを図ることにしました。
「不安なく運用できる安定性、将来的な機能追加が容易な拡張性、約1年半後に迫ったシステム更改期限に間に合わせるといったことを要件に設定。複数のベンダーに提案を依頼しました」と広島電鉄の藤原 善博氏は話します。
綿密な検討の結果、最終的にプロジェクト実施のパートナーに選んだのがNECです。
「全国の交通系ICカードシステムにおける多くの実績とノウハウ、および人材の豊富さを高く評価しました。今回のプロジェクトは、全国でも初となるICカードシステムの『ベンダースイッチ』です。不安もあったのですが、NECの経験がそこで生きてくると考えました」と横田氏は採用理由を語ります。
またNECは、長期保守により、将来的なシステムの運用や拡張までをサポートすることを提案。「このことも採用の後押しになりました。構築完了後の運用フェーズにおいても、長く我々の取り組みを支援してくれる。最適な仕組みを、共につくりあげていくことができると感じたのです」(横田氏)。
導入後の成果
安定したICカード運用を実現 将来的なデータ活用も視野に
プロジェクトは、幾度もの打ち合わせを繰り返しながら進められました。
「運営協議会には、中核となるカード発行事業者9社以外にも、合計27の交通事業者が参加しています。そのため、全体の意思統一には多くの困難が伴いますが、NECは、豊富な知見とフットワークを生かし、スムーズに意見を取りまとめてくれました。結果、通常なら2年はかかる規模の開発を短期間で完遂できました」と横田氏は満足感を示します。
こうして新しいPASPYのシステムは稼働を開始。性能や安定性、拡張性の課題をトータルに解消することができています。「以前のように、頻繁に上がるアラートの対応に追われたり、月次の清算処理をハラハラしながら見守ることはなくなりました。また、従来は個別のベンダーとやりとりしてきた各種端末の保守も、問い合わせ先をNECに一本化。システム運用面も大きく簡略化できています」(藤原氏)。
運用負荷が削減できたことで、新たな施策の企画・検討にも取りかかれるようになりました。現在は、ICカードで蓄積した利用者データの分析・活用を計画中。乗車履歴データを基に、運賃最適化や路線再編などを行うことで、利用者にとってさらに「わかりやすく、乗りやすい」交通機関を目指しています。
「ゆくゆくは、広島県域を超え、より広範なエリアの交通事業者にもPASPYを提案していきたいと考えています。NECには今後も、さらなる提案を期待します」と横田氏は話します。
拡大するPASPYの運営・利用体制
ICカードを発行する交通事業者9社で構成されるPASPY運営協議会がPASPYの企画・運営を実施。そのほか、カード発行は行わず、利用のみ可能な18社をあわせた計27の事業者が関係している。
NEC担当者の声
チャレンジングなプロジェクトの中心に立つお客様の負荷を軽減
NEC
交通・物流ソリューション事業部
第五インテグレーション部
マネージャー 西 高宏
NEC
中国支社 公共第二営業部
セールスエキスパート
堀田 育孝
国内初となるICカードのセンターシステムのベンダースイッチは当然、NECにとっても初の取り組み。そのため、既存システムのベンダーを交えた仕様確認の場を広島電鉄様に設けていただくなど、まずは徹底的な情報収集に努めました。
具体的な導入プロセスでは、まず必要な作業をいくつかの工程に分割し、トラブル発生リスクを軽減。その上で、入念なリハーサルを行いながら各工程を進めました。既存システムと並行して新システムを立ち上げ、安定稼働が確認されたのち本番環境に移行。各工程では、ICカードシステムに関する当社のノウハウと人員を集中投下する体制を整えたことで、お客様の期待にお応えできたと自負しています。
特に今回は、サービス開始時期がすでに決まっており、それまでに何としてもシステムをご納品しなければならないという状況がありました。そこで当社は、広島電鉄様の下へ足しげく通い、コミュニケーションをとることで「絶対に期限に間に合わせる」という意識を共有。ときには協議会各社様とも直接お話しさせていただきながら、無事期限までに完遂することができました。多様なステークホルダーが関わるプロジェクトを、お客様と一体になってまとめるノウハウを得られたことは、NECにとっても大変有意義でした。
今後は、特にICカードで得られる各種データの活用といった側面で、お客様からご要望をいただいています。広島エリアに欠かせない社会インフラであるPASPYを、引き続き安定して運営していただけるよう、そして、運営協議会の中核である広島電鉄様の負担を軽減できるよう、これからもご支援していきたいと思います。
お客様プロフィール
広島電鉄株式会社
本部 | 広島県広島市中区東千田町2-9-29 |
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資本金 | 23億3562万5000円 | |
売上高 | 280億400万円(2014年度) | |
従業員数 | 1,638名(2015年3月31日現在) | |
概要 | 鉄道・軌道、バス、不動産の3分野を中心に事業を展開。特に鉄道・軌道事業では、運営する路面電車の1日当たりの輸送人数で日本最大級の規模を誇る。各種都市開発プロジェクトにおいても中心的な役割を果たすなど、多様な側面から広島の都市機能を支えている。 |
本事例に関するお問い合わせはこちらから
(2015年8月24日)
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