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データ連携・統合
CX向上につながる、顧客データのID連携事例をご紹介


ビッグデータの普及やデジタル技術の進歩によりデータの流通量は増加し、多くの企業でデータの活用が進んでいます。中でも顧客データは多くの企業がすでに保有、活用しており、サービスの継続的な利用によるLTV※1の向上や、今後の新たなサービス価値の提供に向けた示唆が得られる重要な資産であることは、多くの企業における共通認識です。
- ※1LTV:Life Time Value(顧客生涯価値)ある顧客から生涯にわたって得られる価値
しかし、いざ顧客データを活用しようとしたとき、多くの企業が陥りがちな課題の一つが、顧客データの連携です。データ管理の実態として、複数の事業や部門ごとでデータを収集・管理しており、独自ルールやシステムでバラバラに存在するデータが組織全体でのデータ活用を阻んでしまっているのではないでしょうか?
例えば…
小中高向けの教育サービスの顧客データが、小学生向け商材、中学生向け商材、高校向け商材それぞれで独立し個別のルールで管理されており、サービスの長期継続利用につなげるためのヒントを得ようにも、まずはデータ連携が必要…
というように、部門で切り分けられたデータ収集が、スムーズなデータ連携を妨げてしまっているようです。顧客の行動パターンが多様化する中、事業部単位などの小規模でしかデータを見ることができていないと、顧客の実態を正確に捉えることは難しく、顧客満足度の向上に向けた打ち手の効果を最大化しにくくなってしまいます。
この記事では、データを連携する方法の一つとしてのプラットフォーム構築や、それを実現するためのID連携の効果について事例を交えつつご紹介します。
目次
1. 顧客データを活用しようとしても、施策に活かせないことはありませんか?
日々、データベースに蓄積される顧客データを活用して、新しい施策を実施しようとしても、次のような問題が立ちはだかり、方針を立てて実行に移せない状況に陥ってしまうというケースがあるようです。
- データの見方、分析の仕方が単調になってしまう…
- データから新鮮な示唆が出せない…
- 顧客のタッチポイントごとにデータがバラバラで行動や心理や捉えきれない…
特に、組織横断で大きな施策や全サービス包括型のビジネスを展開しようとするときほど、これらの問題が顕著に表れるのではないでしょうか?
2. 原因は、顧客データを横断的に捉えられていないこと
せっかくデータを蓄積しているのに、施策に活用しきれていない原因の一つとして、顧客ニーズを知るためのデータが、サービスや部門ごとに分断されてしまい、顧客の傾向を捉えきれないことが挙げられます。顧客データを単一的にしか見ることができなければ、次のような問題が派生する恐れもあります。
- 顧客の満足度が低下してしまう
- 顧客離れが起こってしまう
- 市場の潮流についていけない
社会の変化に合わせて顧客の嗜好やニーズ、行動は多様化しています。競合がひしめく市場で生き残るために必要なのは、顧客の価値観に寄り添うことで顧客満足度を高め、競合や新興企業との差別化を図ることです。部門単位で保有する限られたデータを活用し、顧客体験(CX)向上につながる示唆を得るのは、なかなか難しいのが現状です。
今ある顧客データを有効活用しながら市場や顧客の潮流を多角的に捉え、スピーディに自社のビジネスに反映させるために、どのような手を打つべきなのでしょうか?
3. IDで顧客データを連携させ、プラットフォーム化しよう
まずは、部門ごとに分断されたデータベースを連携し、顧客データをワンストップで参照できる顧客データプラットフォームを構築しましょう。このときにポイントとなるのが、複数のシステムで保管されている同一顧客のデータを、予め紐づけておくことです。
例えば、とあるエンドユーザーが利用するサービスA・B・C・Dのデータが4つのシステムで管理され、サービス利用時の顧客IDはもちろん、データも個別に管理されている状態があったとします。
このとき、同一顧客が使うサービスA・B・C・Dの情報を一つの「統合ID」を介して紐づけることで、サービスA・B・C・Dの情報を一元管理できるように統合にする、というイメージです。統合IDで4つのサービスのデータが連携されるため、ユーザーはサービスごとにIDを管理せずとも、一つのIDで利用できるようになり、顧客体験の向上にもつながります。
データを紐づける方法はいくつかありますが、このように「顧客ID」を手がかりにデータを連携し、プラットフォーム化する方法は、顧客の行動の全体感やサービスどうしでの関連性を見出せるようになることから、データ統合で取り入れる企業が多い方法の一つです。
3-1. 顧客データをID連携することで得られる効果
顧客データをID連携することで、一顧客のデータが他のデータベースに蓄積されているデータとも紐づき、より詳細に顧客の動きを捉えることができます。そのため、顧客データを活用した、顧客体験の向上につながる次のようなマーケティングアプローチの実現も期待できます。
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新たな顧客体験(CX)の向上
顧客体験(CX)とは、顧客が企業の商品やサービスに興味を持ち、その商品やサービスを購入したり、利用したりするまでの一連の体験のことを指します。例えば、商品購入のみならず、商品購入後のアフターサポートも充実している状態などが該当します。 -
パーソナライズ化の実現
パーソナライズ化は、顧客個人の属性や購買行動などに基づいて、個人に最適な商品やサービスを提供することを指します。例えば、簡単な質問に答えるだけで、自分の好みのお弁当が届く、などの体験が該当します。 -
シームレスな体験機会の創出
ここでいうシームレスとは、リアルとデジタルがスムーズに連携されている状態を指します。例えば、オンラインで購入した商品がリアル店舗でスムーズに受け取れる、などの体験が該当します。
顧客データを連携し活用することで、これらの効果が得られるのみならず、最終的には顧客満足度の底上げや企業ブランド全体のイメージアップなどにもつながります。
4. 顧客データのID連携で、顧客満足度向上を実現した例
顧客データのID連携で顧客行動を正確に把握し、サービス体験の向上、パーソナライズ化の実現、シームレスな体験の提供を実現した、一般的な事例をご紹介します。
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ID連携で新たな顧客体験(CX)創出につなげた例(小売)
食料品の販売を行う小売では、AI画像認識機能付きのカメラを用いることで、来店客の入退店時間、属性、手に取った商品、比較した商品、カゴに入れた商品などのデータを収集。これらのデータが、あらかじめアプリに登録されている、顧客が入力した決済情報などの顧客情報とID連携されることで、購入時の決済を自動化・無人化しました。その結果、店舗の混雑時もレジに並ぶ必要がなくなっただけでなく、店員との接触機会もゼロになることで衛生面での安全性も確保されるなど、利便性が向上しました。 -
ID連携でパーソナライズ化の実現した例(ファッションレンタル)
ファッションレンタルサービスを提供するアパレル企業では、顧客属性や顔・全身の画像データ、着たい服のイメージや好みの色、体型の悩みや過去のサービス利用時のレビューなど、顧客やサービス利用に関連するデータを収集。これらのデータをID連携し、AIが顧客に最適な洋服をピックアップできるサービスを提供しました。AIによる診断で、一人ひとりの顧客嗜好や特性に合ったスタイルがわかり、それを基にスタイリストが顧客に似合う服を厳選することで、顧客の希望に寄り添った、精度の高いパーソナライズ体験を実現しています。 -
ID連携でシームレスな接客を実現した例
大人から子供まで幅広い年齢層をターゲットとするテーマパークを運営するエンタメ企業では、属性や来訪頻度などのテーマパーク会員情報、グッズ購入履歴などのEC会員情報、購読期間などのメルマガ会員情報を収集。3つのサービスに共通している共通ポイント機能を基軸にデータをID連携することで、顧客単位でのテーマパーク、EC、メルマガのサービス利用状況が把握できました。これによりテーマパークでの行動に合わせたメルマガ配信や、ECとテーマパークでのポイント連動施策などチャネル横断型でのアプローチに成功し、シームレスな体験の提供を可能にしました。
これらの事例は、顧客データをID連携した結果、顧客満足度向上につながる取り組みを実践したケースですが、より戦略的に顧客理解を進め、施策を見直しながら継続的な顧客満足度向上に活かす、というケースもあります。
- 改善機会の創出で、継続的な顧客満足度向上を実現(飲食)
全国に展開する飲食チェーン店では、顧客の属性や来店店舗、購入履歴などの顧客データ、広告の反応やコンテンツ閲覧状況などのアプリ行動データ、アンケートデータなどの顧客態度データをアプリ経由で収集。これらのデータが、店舗でのアプリ決済システムとID連携されることで、顧客の行動の詳細な把握ができるようになりました。これによって、次のようなサイクルの策定につながり、継続的な顧客満足度の向上を実現しています。- クーポンや広告のパーソナライズ化で、来店意欲、好感度を高める
- 店舗に来店してもらい、サービスを提供する(アンケート回答頻度を高める)
- アンケート結果から得たフィードバックをもとに、問題点を把握する
- 問題点解決のために施策の見直しを行い、実施する
- さらなる顧客満足度向上につなげる
競争の激しい飲食店で顧客の継続利用を促すためには、飲食店の選択肢で純想起させる必要があるとされています。そのため、飲食店を営む多くの企業では、味はもちろん、店舗でのサービスを向上させ、少しでも店のことを認知してもらい、リピートにつなげるため、様々な施策を行います。
この例では、リピート来店につなげるために、ID連携を通じた顧客行動の徹底理解やフィードバックの即反映で顧客満足度向上を実現しています。
顧客との接点が拡大し、ニーズも多様化する中では、いかに、他者との競争に埋もれることなく顧客満足度を向上させられるかどうかが、企業の生き残りを左右する重要な課題です。日々収集している顧客データには、顧客満足度向上につながるような施策を実施するためのヒントが多く隠されています。まずは、IDを起点としつつ顧客データの連携から始めてみましょう。このとき、他社の事例を参考しながら、自社ではどんな顧客データを連携できるかイメージしてみると、スムーズに進むかもしれません。
NECでは、国内の先進企業が進めるデータ活用の先行事例を業種別にご紹介しています。顧客データを含むさまざまなデータ同士を連携し活用することで、どんな効果を生み出すことができたのか、まずは事例を見ながらイメージしてみませんか?
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