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データ連携・統合

データ統合を加速させるプラットフォームとは?

データ活用を進める上で忘れてはいけない重要なステップの一つが、自社で保有しているさまざまなデータや、システムに紐づいているデータを一つに集約する「データ統合」です。データを適切に統合することで、データを複合的な視点から見ることができ、生産性の向上やビジネス価値創造に向けたヒントを得やすくなります。

この記事では、データ統合を行う際に必要なデータプラットフォームに着目し、データ統合の進め方や実際にデータ統合でビジネスにもたらされた価値について、事例と併せてご紹介します。

目次

1. データを単一分析する企業が多く、データ統合は進んでいない

単一的なデータ分析では得られない、新たな気づきがもたられることから注目されているデータ統合ですが、実際にどれくらいの企業がデータ統合に取り組んでいるのでしょうか?

総務省の調査によると、データを分析する際にどれくらいのデータを組み合わせて見ているかという質問に対し、「経営企画・組織」「製品・サービスの企画、開発」「マーケティング」「生産・製造」「物流・在庫管理」「保守・メンテナンス・サポート」の6つの業務領域全てで、データを「単独で分析」するとの回答が約半数を占めています。

また、データの分析結果をどのような形で活用しているかという質問に対し、同じく6つの領域全てで、「状況の把握(見える化)」や「傾向や関係性把握」がメインの活用方法と回答しており、「将来の予測」や「発注や制御等の自動化」といった、新しいビジネス価値の創造や、生産性向上につなげるためのデータ活用が積極的でない傾向にあります。

これらの調査結果を踏まえると、多くの企業におけるデータ活用の現状は、単独でのデータ分析がメインで、複数のデータを組み合わせたデータ統合による分析が進んでいないことが想定されます。また、単一でデータ分析しても、今後のビジネスに貢献しうる示唆を得るに至っていない現状もうかがえます。

なぜ、データ統合による積極的なデータ活用が進んでいないのでしょうか?

2. データ統合が進まない理由の一つは、データ統合の方法が分からないから

データ統合がうまく進んでいない原因としては、例えば次のようなものが想定されます。

  • 収集しているデータが統合できるデータなのか判断できない…
  • データを統合することで、どのような効果が得られるのか分からない…
  • データの種類や形式が異なるため統合できない…
  • データ統合におけるセキュリティに心配がある…
  • 既存の仕組みがレガシーで難しい…
  • 経営層の理解が得られない…
  • データ統合を積極的に進めようとする人材がいない…

どのようなデータを統合することができるのか、統合すると何がよいのか、などが分からないことも原因の一つだと考えられますが、これらに関係する一番の原因は、どのようにデータを統合すべきか分からず、データ統合のアクションが起こしづらい点ではないでしょうか?

3. 組織内外のデータ統合は、プラットフォーム構築の検討からはじめましょう

さまざまなデータを複合的に分析し、ビジネス価値の創造に貢献していくためには、「データプラットフォーム」を構築して、組織内外のデータを統合していくことが重要です。データプラットフォームとは、組織が保有するデータを適切に蓄積・加工・分析できるようにするためのデータ活用基盤のことです。データプラットフォームを構築することで、バラバラのシステムで管理されている同一顧客や同一機器などのデータを紐づけ、一元管理できるようになります。これまでは参照が難しかった、顧客や業務プロセスの状態を一連の流れに沿って確認できるようになり、新たな視点での分析の効率化が実現されます。

例えば、次のようなデータをプラットフォームに統合することができます。

  • カスタマーデータ…顧客データ、販促データなど
  • Webサイトデータ…EC購入履歴、イベントエントリー状況など
  • ソーシャルメディアデータ…プロフィールデータ、エンゲージメント率など
  • オペレーショナルデータ…POSデータ、取引明細データ、在庫データなど
  • ログデータ…アクセスログ、エラーログ、検索ログなど
  • センサーデータ…IoTデータ、RFIDデータなど
  • 調査データ…公的調査データ、民間調査データ、アンケートなど
  • 生体データ…顔データ、指紋データ、虹彩データなど
  • 天候データ…天気、気温など

なお、複数のシステムのデータを単純につなげる方法として、収集しているデータを管理するシステムどうしで「連携」させる方法もありますが、各システムの連携や多岐にわたる種類のシステム連携となると、コスト肥大や複雑化につながってしまいます。そのため、プラットフォームを取り入れた情報の集約管理がよいとされています。

3-1. 自社に最適なデータプラットフォームを検討するのがポイント

プラットフォームでデータ統合する際に注意しておきたいポイントの一つが、自社のデータ活用の目的や、実際に収集しているデータの種類を踏まえながら、自社に最適な形のデータプラットフォームを検討することです。

組織が保有するデータを一つのプラットフォームに統合し、データ活用しやすい状態に整備することも重要ですが、データ統合があまり進んでいない状態で行ってしまうと、かえってデータの複雑化やデータ活用現場での混乱を招いてしまうなどのリスクが伴います。

そのため、まずは自社に最適なプラットフォームを検討することから始めましょう。プラットフォームの構築にあたり、よく挙げられるプラットフォームの種類は、顧客データの集約でカスタマーニーズの把握を目指す「顧客データプラットフォーム」や機械設備の稼働状況を可視化する「機械設備プラットフォーム」、商品や在庫の流れを捉え、効率化につなげる「在庫情報プラットフォーム」などがあります。プラットフォームのサービスによっては、データの自動処理や機械学習の有無など機能面での違いもあるため、まずは、自社のビジネスが目指す方針や業務プロセス改革におけるテーマを鑑みたとき、どのようなデータを、どのような機能で統合するプラットフォームが適切か、検討を進めてみましょう。

  • 顧客の行動を捉える「顧客データプラットフォーム」
    店舗やECなどの販売チャネルでバラバラに管理されている顧客の商品・サービスの購買履歴や利用状況、アプリ会員情報、アンケートデータなどの顧客の属性や行動にまつわるデータを統合し、プラットフォーム化することで、チャネルを横断した顧客の行動、いわゆるリアルなカスタマージャーニーを捉えることができます。プラットフォームに蓄積されたデータを分析することで、顧客体験の高度化や顧客満足度の向上に向けたビジネスアクションが期待できます。
  • 機械設備の稼働状況を可視化する「機械設備プラットフォーム」
    製造、建設現場などで用いられるさまざまな機械設備の稼働状況、例えば、位置情報や圧力、電力消費量などをIoTでデータ収集し、それらのデータをプラットフォームに統合すると、リアルタイムで現場の状況を把握することができます。プラットフォームに蓄積されたデータを分析することで、製造ラインにおけるボトルネックが発見でき、生産性の向上に向けた課題解決が期待できるとともに、異常発生時の迅速な対応の実現にもつながります。
  • 商品や在庫の流れを捉える「在庫情報プラットフォーム」
    小売業が保有する、サプライチェーンの拠点における入出荷前後の商品情報や在庫量とそのステータス、保管場所などの情報をプラットフォームに統合しすることで、商品や在庫の流れを全体的に把握することができます。プラットフォームのデータを活用することで、入出荷や検品作業の自動化による効率アップが期待できるだけでなく、サプライチェーン全体の商品や在庫状況を可視化でき、物流全体の生産性向上にもつながります。

3-2. プラットフォームの構築を通じたデータ統合で、ビジネス価値の創出につながった例

顧客データや機械設備、在庫情報のデータ統合によるプラットフォームの構築で、業務工程の改善やビジネス価値の創造につながった、一般的な事例をご紹介します。

  • 顧客データプラットフォーム(総合小売の例)
    食料品や生活用品、金融、ヘルスケアサービスなど、さまざまな商品・サービスを取り扱う総合小売業では、顧客の購買履歴や、カード情報、店舗の人流情報などのデータを事業横断的にプラットフォームに統合。顧客データを紐づけ、独自のAIモデルによる分析を行うことで、顧客の行動パターンや好みを導き出し、店舗オペレーションの改善や新商品・サービスの開発などにつながりました。
  • 機械設備プラットフォーム(機器メーカーの例)
    医療用機器の設計開発、加工などを行う機器メーカーでは、地理的に距離のある3つの製造拠点の十数台の機械設備のデータをプラットフォームに統合。それぞれの製造現場の生産管理者だけでなく、意思決定を行う上層部も3つの製造拠点における機械設備の稼働状況がリアルタイムで確認できるようになりました。これにより、各工程での生産状況が一つのダッシュボードで把握できるようになり、生産効率のよい機械設備の稼働方法を社内に横展開することで、さらなる作業効率の実現を果たしました。
  • 在庫情報プラットフォーム(販売小売店の例)
    オフィス用品の保守や管理を行う事務用品の販売小売店では、顧客のオフィス消耗品の在庫数量と自社の発注データ、在庫数量をプラットフォームに統合。顧客のオフィス消耗品の残量が一覧で可視化され、残量以下になると自動で適切な量の在庫発注依頼が届くような仕組みを整えました。それにより、顧客が毎月発注依頼を出す手間が軽減され、サービス向上に。顧客の満足度向上につながったとともに、継続的な売上を維持する新たなビジネスモデルの確立も実現しました。

これらの事例も参考にしつつ、自社で最初に着手したいデータプラットフォームのイメージを固めていきましょう。

データプラットフォームを用いることで、組織内外で保有しているさまざまなデータを適切に統合することができます。まずは、自社がデータ活用を行う目的や、現在収集しているデータの種類を基に、自社にとってどのようなデータプラットフォームのあり方が適切なのかを見極めることから始めていきましょう。データ統合で複合的にデータを見ることができれば、データから新しい示唆が得られるようになり、生産性の向上や、新しい事業の創出などビジネス価値創造に向けたヒント獲得にもつながります。

NECでは、国内の先進企業が進めるデータ活用の先行事例を、企業が抱える課題別にご紹介しています。実際どのようなデータを収集し統合しているのか、データプラットフォームをどのような形でビジネスに活用しているのか、などのポイントを解説しており、貴社のデータ活用に向けた議論にお役立ていただけます。

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