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データ分析
データドリブンの実現に必要な、データ分析の3つの視点


目まぐるしく変化を続ける社会において、企業を取り巻く環境や顧客の価値観は大きく変動しています。こうした背景から、近年、多様化するビジネスや社会の変化を捉え、迅速に適応していくためにデータ分析結果を企業の意思決定に活かす、「データドリブン」への注目が高まっています。データドリブンを実現することで、人の経験や勘だけでは判断しにくい事象でも、データをベースとしながら正確に事象を捉えることができ、スムーズな意思決定が可能になります。
この記事では、データドリブンを実現するために必要な3つの分析視点を取り上げつつ、具体的な手法をご紹介します。
目次
1. データドリブンに必要な情報はあるが、分析できない企業が約3割
各企業のデータ分析の実態を見てみると、データを経営や業務判断の基軸とするデータドリブンまで至っていない企業が一定数存在することがわかっています。
総務省が行った調査によると、2割~3割の企業が、「顧客情報データ」や「経理情報データ」などを分析データとして活用していると回答した一方で、「いずれも活用していない」という企業も、同程度の3割でした。回答企業2,003社のうち677社が、どのデータも分析にまで活用していないという結果です。
- (※1)スマートフォン、PHSから取得したデータも含む
- (※2)テレビ、新聞などで報道される気象予報は該当しません
この調査結果を踏まえると、ある程度データが収集されていたとしても、必ずしもデータ分析による活用まで至っていないことがわかります。つまり、データ分析結果を課題解決や新しい施策のための意思決定に活用しきれていない、と推察できます。
2. データドリブンに向けた体制が整備されていないことが原因、分析に備えた準備が必要
データ分析や分析結果を活かしたデータドリブンがうまく進まない原因の一つとして考えられるのが、データドリブンを見据えて、「データ専門の責任者を設置する」「データ分析専門の人材や部署を設ける」といった社内体制が十分に整備されていないことではないでしょうか?
データ活用に関連した取り組みに関する総務省の調査によると、データ活用の取り組みとして、「CDO(Chief Data Officer/最高データ責任者)を設置」「データ分析人材の採用」「データ分析を専門とする組織の設置」「データ活用戦略の策定」の全てにおいて、「実施していない」という企業が全体の約6割を占めていることがわかりました。
また、別の調査では、データ分析によって問題解決や新しい施策の検討・意思決定のサポートまで行う「データサイエンス部署」を設けている企業は全体のわずか5.6%で、組織的なデータ分析への取り組みもあまり行われていないことがわかります。
データ分析を推進するための解決策として、専門の部署を設けるなどの体制整備も手段の一つとして有効ですが、データ分析を積極的に行っていない企業にとって、専門チームの設立やノウハウ蓄積に時間がかかり現実的ではありません。しかし、今後のさらなる顧客ニーズの多様化に伴い、データ分析による企業のビジネス価値向上の必要性は高まっていくことが想定されます。そのため、データ分析の専門を問わず、基本的な分析はできるように分析手法を身に着けておくことが望ましいでしょう。組織内のデータと接点を持つ誰しもが基本的なデータ分析手法を身に着けておくことで、今後のデータドリブンな経営を後押しすることにもつながります。
3. データドリブンに必要な分析の視点を取り込んで、分析を進める
データ分析手法を身に着ける際に重要なのが、どのような視点でデータを見るのかを明らかにしておくことです。データと対峙したときに、ただ闇雲に思い当たる手法を用いて分析してもビジネス価値の創造につながるヒントを得ることはできません。そのため、データ分析を行う際は、データを見るときの「視点」を明らかにした上で適切な分析アプローチを検討するとスムーズです。
代表的な分析視点は、「差異を見る」「傾向を見る」「トレンドを見る」の3つです。これらの視点をおさえた上で、適切な手法でデータ分析を行うことによって、データが表す事実を正確に読み取ることができるようになります。その結果、データドリブンな経営の実現にもつながります。
3つのデータ分析視点を基に、実際どのような手法でデータ分析を進めればよいかをご紹介します。
3-1. データドリブンに必要な分析視点1. 差異を見る
複数のデータを任意のグループに分類したり、カテゴリ別に整理したりしながら、それらのデータ間の違いに着目します。小単位のまとまりごとにデータを分析するため、目標値や計画値などの基準データとの間に生まれる乖離の程度を明らかにできるとともに、グループ間の詳細な比較によって、差異が生じている原因の追究などがしやすくなります。
差異を見るという視点に特化したデータ分析の手法として、例えば次のようなものが挙げられます。
- クラスター分析
異なる性質が混ざった複数のデータの中から、似た特徴をもつデータ同士を集め、クラスターと呼ばれるデータの集団を作ります。クラスター分析を使うことで、量の多い複雑なデータでも、単純化して捉えることができます。クラスター分析の例
アプリ会員のアンケート回答頻度を基に、回答頻度の高いグループ、中くらいのグループ、少ないグループに分け、それぞれのグループを比較し、なぜ回答頻度が高いのかを探る。 - CTB分析
CTB分析は、カテゴリ(Category)、テイスト(Taste)、ブランド(Brand)の3項目を基にグループ分けをする、顧客分析手法の一つです。具体的には、生活用品や服飾品など商品の大分類を基に顧客の好むものをグルーピングする(カテゴリ)、色や形など顧客がどういう風合いが好みなのかをグルーピングする(テイスト)、どのようなメーカーやブランドが好みなのかをグルーピングする(ブランド)というように、3項目ごとに顧客を細分化することで、顧客の属性や傾向を把握していきます。CTB分析の例
あるスーパーに買い物に来る顧客について、冷凍食品(カテゴリ)、お皿不要で食べられる(テイスト)、Aというプライベートブランド(ブランド)で整理。同じカテゴリ内でも違うテイストやブランドを好むグループとの比較をしながら、顧客の詳細なニーズを探る。 - RFM分析
ある商品やサービスについて、直近の購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入累計額(Monetary)の3つの指標をベースに、顧客をグルーピングして分析します。現在の顧客層がどのようなステータスなのかを整理できるため、優良顧客や休眠顧客の抽出がしやすくなります。RFM分析の例
ビジネスシューズを購入した日(直近1ヶ月以内)、購入回数(5回以上)、購入額(10万以上)の3つに該当する優良顧客とそうではない顧客との購買行動の違いとしては、どのようなものが挙げられるのかを検討する。 - デシル分析
ある商品やサービスについての購買データを基に、すべての顧客を購入金額の高い順に10等分し、それぞれのランクごとの購入金額や売上高の構成比などを分析します。デシル分析は、RFM分析よりも単純化して現状の顧客層を整理できるため、顧客のステータスがより把握しやすくなります。デシル分析の例
アクセサリーの購入金額100万円を起点に、最小値1万円以下~最大値100万円以上でグループ分けをする。ランクの低い顧客と高い顧客のグループを抽出、比較分析し、新たな施策に活かす。
3-2. データドリブンに必要な分析視点2. 傾向を見る
データをフローや分岐、因果関係などのフレームワークを用いて整理し、整理したデータの全体や一部分を切り出したときの傾向に着目して分析します。フレームワークを用いることで、視覚的にもデータが整理しやすくなるため、分析結果をアウトプットし、初見の人に結果を説明する際にも役立ちます。
傾向を見るという視点に特化したデータ分析の手法としては、例えば、次のようなものが挙げられます。
- 回帰分析
ある事象に関して、結果となるデータと要因となるデータ同士の関連を調べることで、統計的に根拠のある因果関係を分析します。回帰分析の例
就活イベントの過去の実施回数と参加者数の間の関係性を調べ、過去に2回以上参加している人が多い場合は、全体の参加者数も増加している、という傾向を把握し、次のアクションにつなげる。 - 決定木分析
一定の値を基準とした複数の分岐を定めながら、データを整理します。設問形式やデータ形式を問わずに、視覚的にデータを整理することもできるため、データ同士の関係性が捉えやすく、分析しやすくなります。決定木分析の例
店舗の定点観測データを基に、顧客の店舗内の行動を、「入口正面の棚を見る」「見ない」を起点に分岐させて整理し、入口正面の棚を見た人の購買傾向の詳細分析を行う。 - ファネル分析
ある商品やサービスの認知から購入までの、顧客の購買プロセスを図式化して分析します。プロセスごとの顧客行動の傾向が把握できるため、コンバージョンにつながるポイントや離脱の多いポイントを知り、施策に活かすことができます。ファネル分析の例
商品一覧ページを見て、購入ボタンを押すまでの一連のプロセスと、各プロセスに進んだ人の数を見ながら、離脱の少ないポイントで新しい施策の内容を検討する。 - アソシエーション分析
顧客に関する複数のデータの中から、データ間の関連性を探り、顧客の購買パターンを把握しながら分析します。よく購入される商品やサービス同士に関係性がわかるため、さらなる販売促進施策の展開につなげやすくなります。アソシエーション分析の例
スーパーでAを購入した人とBを購入した人を抽出し、両方購入している人を導き出すことで、Aを購入した人のほとんどはBも購入していることを把握する。
3-3. データドリブンに必要な分析視点3. 時系列を見る
時間軸を基準としてデータを切り分けた結果、その時に何が起きていたのか、将来どのような動きが予測されるかに着目し、分析します。年単位から一日の中での時間まで、さまざまな時間軸を設定してデータを見ることで、施策実施後の効果を比較することができます。また、過去のデータを蓄積することで、予測モデルも確立しやすくなります。
時系列を見るという視点に特化したデータ分析の手法としては、例えば、次のようなものが挙げられます。
- クロスセッション分析
時間の流れに沿って変化する事象のある一定時点を切り取って、その期間の行動を分析します。長い時間では明らかになっていなかったことが、時間の単位を短くすることで、視野が変わり、新たな気づきを得やすくなります。クロスセッション分析の例
イベント終了から1時間経過時点までの、来場者数とインタビューにおける満足度を見ることで、会場の盛り上がりを正確に測定する。 - タイムシリーズ分析
ある事象を比較的長い期間で見ていくことで、時系列ごとの変化パターンを捉えながら分析を進めます。年単位、月単位での大まかな事象のパターンがつかめるため、定例的な業務の参考データとしても活用できます。タイムシリーズ分析の例
無料サンプル配布期間中の契約者数を見て、配布期間中の見込契約者数の予測モデルを確立する。 - 行動トレンド分析
商品の売上に影響しうる季節や曜日などの期間に着目し、その期間の顧客層や購買行動を分析します。商品が売れる時期を正確に把握できるため、効果的なマーケティングにもつながります。行動トレンド分析の例
3月に売れる商品の発注量を増やし、宣伝を強化する。
3つの視点をベースとしたさまざまな手法を効果的に活用することで、膨大で複雑なデータも分析しやすい適切なまとまりに処理でき、データから正確な事実把握をすることが可能になります。データ分析に必要な視点や分析の方法を全社的に身につけていくことで、効率的で価値あるデータ分析ができるようになり、データドリブンが加速します。
もちろん、データドリブンを実現するには、データ分析に必要な総合的なスキルを身につけるための人材育成や、プラットフォーム構築などによる、データを活用しやすい環境の整備なども重要になります。そのため、まずは、データ分析の視点や手法を身につけながら、人材育成や環境整備も同時に進めていきましょう。
このとき他社のデータ活用事例を参考しながら、データドリブン実現のために必要なことを学び、自社に適応させながら検討していくと、社内での議論がよりスムーズに進むかもしれません。
NECでは、国内の先進企業が進めるデータ活用の事例をご紹介しています。他社の先行事例のデータ活用のポイントから、今後、データドリブンを成功に導くためにどのようなデータ分析を行う必要があるのかを議論する参考材料としても、お役立ていただけます。
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