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モノづくりIoTコラム

中村敏

第20回「まとめ(3) 最終回 ~現場力向上システム~」(2018年5月7日公開)

中村 敏 (なかむら さとし)プロフィール
【所属】NECソリューションイノベータ株式会社
      イノベーション戦略本部 兼 IoE事業推進グループ 主席プロフェッショナル

【略歴】NECで主に中堅製造業向けのシステム提案、コンサルティングに従事
      現在、中堅製造業向け モノづくりIoTソリューション事業責任者
      日本マーケティング学会、一般社団法人 日本生産管理学会
      日本TOC推進協議会、NPO法人ものづくりAPS推進機構
      一般社団法人 持続可能なモノづくり・人づくり支援協会 会員

【第20回】まとめ(3) 最終回 ~現場力向上システム~

2016年9月から「モノづくりIoTコラム」をスタートして、今回で20回目を迎えました。今回を最終回として、今後取り組むべき中堅製造業のIT力、現場力向上システムについて紹介します。
前回(第19回)、表の競争力を支える「裏の競争力」(SQD(=LT)CF)について紹介しました。これらは、製造業を取巻く環境の変化(需要や為替の変動、顧客の多様性など)に迅速に対応し、生産性を向上させます。ここであらためて生産性について整理します。

公益社団法人 日本生産本部が公表した「労働生産性の国際比較2017年版」によると、2016年の日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は1時間あたり46.0ドル(4,694円)でした。これは経済協力開発機構(OECD)加盟国35カ国中20位という結果になります。米国の3分の2の水準で、主要先進国7カ国でみると、1970年以降、最下位の状況が続いています。
但し、労働生産性の算出式で使用される「GDP」や「就業者数」の計算には、国ごとに事情が異なるため単純な比較はできません。特に日本の失業率は、OECD加盟国と比べても特に低い水準(日本の2017年度 年平均完全失業率は2.8%)になっており、その結果、就労者数の割合は大きくなっています。
しかし、世界の名目GDPランキング第3位という経済大国の地位を維持している割には低い水準といえるかもしれません。

平成29年10月 未来投資会議で経済産業省が提出した「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」によると、1996年~2016年の中小製造業 従業員1人あたり付加価値額は、▲3.2%、大手製造業は、+13.4%と生産性の差が拡大しています。このような中でも、約1割の中小製造業が大手製造業の平均値を上回っています。こうした企業は、設備投資や、IT投資等に積極的で、一人あたりの賃金が高い傾向にあることが分かりました。特に、IT投資を積極的に行う中小製造業の方が売上高(2.6倍)、経常利益率(1.3倍)と水準が高くなっています。
生産性向上を目的とした現場力向上システムの導入が今後のポイントといえるかもしれません。

「生産性」には、生産するモノの大きさや、重さ、個数などといった物量を単位とする場合と、企業が新しく生み出した金額ベースの価値、つまり付加価値を単位とする場合があります。前者を「物的生産性」、後者を「付加価値生産性」といいます。

付加価値生産性

付加価値生産性

付加価値生産性「付加価値/労働時間」を分解すると、「1/正味作業時間」×「正味作業時間/労働時間」×「付加価値/1」として表現することができます。「1/正味作業時間」は、モノづくりの「速度」 を、「正味作業時間/労働時間」は、いかにムダなくモノをつくっているか、モノづくりの「密度」を、「付加価値/1」は、個当りの付加価値を表しています。個当りの付加価値は商品企画/開発力や、ビジネスモデルに依存していますので、物的生産性を構成する要素は次のようになります。

物的生産性の構成要素

物的生産性の構成要素

いくら早く作っても、ムダなく作っても、不良を作っては意味がありません。設計通りに作るモノづくりの「精度」が重要になります。よって生産性は、「速度」「密度」「精度」の3つの構成要素からなるといえます。これは、現場の事実を的確に見える化し、改善する上で非常に重要な指標になります。
第18回で「現場力向上の視点」を紹介しましたが、モノの流れ、作業の流れの視点から、3つの構成要素を考えると次のようになります。

現場力向上の視点と生産性

現場力向上の視点と生産性

出典:藤本隆宏・ものづくり改善入門より作成

第一に、サプライヤーから原材料を購入し、付加価値を付加した製品を顧客まで届ける「モノの流れ」の視点です。いかに淀みなく良いモノの流れを実現するか、その為の評価指標が、速度:リードタイム、密度:Σ 正味作業時間/リードタイム、精度:直行率、歩留になります。この時、留意すべき点はリードタイムです。サプライヤーからの原材料入庫から、顧客への製品出荷までをリードタイムとして考える必要があります。モノづくりの現場では、大量ロットによる購入や、製造の方が効率が良いという誤った思い込みがありますが、原材料入庫から製品出荷までを考えると、明らかに効率が悪いことが分かると思います。
明確な定量データとして捉える場合「個当りリードタイム」が有効です。100個のロットを考えた時、1番目のリードタイムと100番目のリードタイムの平均値を利用します。需要に対してロットサイズが大きすぎる場合、100番目の製品は在庫として淀み続けます。
横のモノの流れの評価指標としては、密度:Σ 正味作業時間/リードタイムを活用します。これを、NCTR(Net Conversion Time Ratio)といいます。この比率は、1/200~1/300といった数字も珍しくありません。すなわち、ほとんどの時間、倉庫や、現場の仕掛として停滞しているわけです。

第二に、原材料に効率よく付加価値を付与する「作業の流れ」の視点です。いかに効率の良い作業の流れを実現するか、その為の評価指標が、速度:正味作業時間、密度:Σ 正味作業時間/労働時間、精度:不良率になります。この時、留意すべき点は、密度:Σ 正味作業時間/労働時間です。作業は作業者または設備が行いますが、その時の密度は、優良な現場でも20%、多くの現場では5%程度です。ほとんどの時間を手待ちや、設備の調整、段取替えなどに費やしているわけです。この時、段取替え回数を少なくするために、ロットサイズを大きくすることは、モノの流れの淀みを作り出す原因となります。

横の「モノの流れ」と縦の「作業の流れ」は、それぞれを個別に改善するのではなく、まず、「モノの流れ」から淀みを発見し、その淀みの原因を作り出しているボトルネックとなる作業を特定し「作業の流れ」を改善します。その結果、良いモノの流れを創り出すことができます。さらに、コスト削減へのアプローチへとつながります。

実績収集ポイント

実績収集ポイント

現場力向上システムの導入を検討する際、最初のステップは、現場での事実情報を収集する実績収集システムから始めます。付加価値はモノと共に顧客に向かって流れていきますので、「モノの流れ」に注目して、保管、移動、停滞、正味作業の開始/終了時刻情報を収集します。不良による手直しに関しても、事象として捉えるだけでなく、手直し時間として整理します。その結果、リードタイムを構成する時間要素が明確になり、淀みとその原因を見つけ出すことが可能になります。代表的な改善は小ロット化です。

次に「作業の流れ」に注目します。既に自工程の正味作業時間は分かっていますので、Σ 正味作業時間と共に、作業者、設備の手待ちや、設備の調整、段取替えなどの開始/終了時刻情報を収集します。その結果、労働時間/設備稼働時間を構成する時間要素が明確になり、淀みとその原因を見つけ出すことが可能になります。代表的な改善は段取時間の短縮です。
また作業の流れにおいては、正味作業時間の短縮も非常に重要であり、作業者の要素作業分析や、作業者と設備の連合作業分析など、IE(Industrial Engineering)手法も積極的に活用する必要があります。この際、ビデオ撮影は非常に有効です。

付加価値の流れは、サプライヤーから顧客へのパイプとして表現できると思います。淀みがあればパイプは長くなり、ムダが削除されればパイプは短くなります。パイプを短くするために必要な時間情報の収集から始めます。この時、詳細な時間情報よりも全体俯瞰に重点を置いた方が容易に導入できます。次にボトルネックのパイプの径を太くするために必要な時間情報を収集しますが、この時は詳細な時間情報が必要になります。作業者に負担をかけることなく、設備からの収集や、ビデオ撮影などを活用します。

これらの実績収集は、既存のERPシステムなどの実績収集システムと共通化できるのが理想ですが、現場では指示通りにモノが作られていなかったり、十分な指示が出ていない場合が少なくありません。このような場合、独立した実績収集システムの導入を検討します。この時、作業者に負担をかけないのは勿論のこと、作業指示情報を全てQRコード化し、トランザクションデータだけで完結できる実績収集システムの導入をお勧めします。モノづくりの現場での本当の事実情報の収集に特化します。

現場での事実情報を収集したら、前述の「モノの流れ」「作業の流れ」の視点から、速度、密度、精度の見える化を行い、現場改善に取り組み、サプライヤーから顧客の「付加価値のパイプ」を短く、径を大きくします。

現場力向上システム

現場力向上システム

現場力の向上(リードタイムの短縮、生産性向上)を実現することは、基礎体力を上げることです。その結果を最大限に活用するためには、ERPシステムや、生産管理システムの基準情報に反映するのは勿論のこと、生産スケジューラーや、シミュレータの活用を検討します。生産スケジューラーや、シミュレーターの導入がうまくいかなかった大きな理由の一つは、現場の事実情報を十分に把握していないことです。現場の経験豊富なベテランの頭の中にしかない現場の事実情報ではうまくいくはずがありません。現場力向上の第一歩となる現場での本当の事実情報の見える化によって生産スケジューラーや、シミュレータを有効に活用することができます。

ここまで、原材料入庫から、製品出荷までの「モノの流れ」「作業の流れ」の視点から、現場力向上システムについて説明しましたが、更にサプライチェーンや、エンジニアリングチェーンからみた「顧客への流れ」「設計から製造への流れ」といった視点も重要です。
「顧客への流れ」は、欠品せずに顧客へ提供する出荷リードタイムを短縮します。この時、動的バッファ管理(DBM:Dynamic Buffer Management)により、最適な物流在庫計画を実現します。
「設計から製造への流れ」は、生産準備リードタイムや、商品開発リードタイムを短縮します。これらは、CCPM(Critical Chain Project Management)の活用や、経験豊富なベテランの知見の有形化などによって実現していきます。

これらは、全て原材料に付加価値を付与し顧客まで届ける「付加価値の良い流れ」を創ることにつながっています。製造業の現場力とは、付加価値の良い流れを創る力であり、その為の人材を創る力といえます。本コラムでは、モノづくりIoTと題して、良いモノの流れ創り、良い付加価値の流れ創りについて紹介してきました。製造業を取巻く環境は大きく変化しています。これらの変化に迅速に対応し、生産性を向上する上で、ITの活用は必須です。従来からのマネジメント力の向上は勿論のこと、現場力の向上にITを積極的に活用することが、まさに生き残りにつながると考えています。

本コラムは今回で終了します。最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。
読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。

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