IFRS(国際会計基準)が企業に与える影響とは?
第3回 IFRS(国際財務報告基準)適用に向けた取り組み
(2010年2月8日公開)
講師:上條 圭(NEC コンサルティング事業部 エキスパート)
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日本におけるIFRS強制適用はまだ確定しているわけではありませんが、実施される場合は2015年または2016年からになるとされています(企業会計審議会「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」(以下、「中間報告」)より)。IFRS自身も改定作業が続くなど不透明な部分がありますが、企業では現在情報収集、あるいは自社における影響度分析などを始めようとしているようです。 今回は、IFRS適用に向けた企業の取り組みついて概要を解説します。
1. 制度対応の検討ポイント
会計制度としてのIFRSへの対応としてさまざまな論点がありますが、業務や情報システムへの影響を考えた場合、おそらくどのような業種の企業においても主に以下の3点がポイントになるのではないでしょうか。
- a. 財務諸表と連結決算システム、会計システム
- b. 収益認識
- c. 固定資産
以下それぞれについて概要をお話します。
a. 財務諸表と連結決算システム、会計システム
IFRSの財務諸表は現在の日本の財務諸表とフォーマットが変わります。そのため業務またはシステムの見直しが不可欠になります。問題は、どのように見直すか、です。
「中間報告」では「連結先行」の考え方が提示されており、IFRSの適用は連結決算を先行させて実施することが盛り込まれています。逆に言うと現時点で日本基準の財務諸表を開示している企業にとっては、連結決算のときだけIFRSを適用すればよいということになります。そうなると個別決算は日本基準(海外の関係会社は現地基準)、そして連結決算時に個別財務諸表をIFRSへ変換し連結する、という対応方法が考えられます。
IFRSの任意適用を検討している企業の多くは、この方法を検討しているようです。通常の日本企業でも連結決算において、在外子会社の財務諸表は日本基準、アメリカ基準、IFRSのいずれかに実務上は変換させなければならず、上記方法はこのやり方の延長で考えられるため業務のイメージがわきやすいのも採用される理由かと思います。
このケースでは連結決算システムの見直しが必要になってきます。取り込むデータ(いわゆる連結パッケージ)や、出力帳票が変わってきますし、勘定科目マスター等の変更も必要になるでしょう。市販のシステムを使っている際には、リリースされる予定機能を見据えながら、バージョンアップ計画をたてる必要もあります。
なお2011年以降、財務諸表の開示についてはIFRS自身の改定も検討されており、その動向にも留意が必要です。
b. 収益認識
IFRSでは、物品の所有によるリスクと経済価値の移転等が収益認識の要件になるため、一般的には出荷基準での売上計上が認められなくなります。多くの日本企業では出荷基準を採用していることから、この影響は大きいものと思われます。
納品・検収基準での売上を把握するための工夫と、それに必要な業務の見直し、販売・物流システムからの自動仕訳の改修などが必要になりますが、まずは販売に関する取引の洗い出しを行い、IFRSの要件を満たしているかどうか確認する作業を行うことになります。取引の洗い出しに関しては内部統制の検討の際にすでに実施されている企業もあることと思いますので、それらを活用して検討します。
なお小売業等では消化仕入のマージン部分のみの収益計上、顧客へのポイント制度を導入している場合は販売時のポイント付与分の収益繰延なども求められるため、自動仕訳のロジックも大幅に見直す必要がでるでしょう。製造業・小売業にかかわらず、ネット通信販売等を行っている場合はこれらに該当することもあり、さらに出荷基準で収益認識していることもあるため、確認が必要です。
c. 固定資産
固定資産に関してはさまざまな論点があります。その中でも有形固定資産の減価償却については大きな影響がでるものと考えられます。
IFRSでは償却期間について、資産の実際の使用期間を反映させたものにすることが求められていますが、多くの日本企業では税法の規程に基づいて償却期間を設定しています。そのため現在使用しているすべての固定資産について、償却期間の見直しと再計算が必要になる可能性があります。 また重要な資産に関しては資産を部分に分けて、それぞれの償却期間で償却する処理も必要になります。これも税法基準で機械設備等を一括で償却している場合は、資産を分割して上記の償却期間の登録・再計算をしなければなりません。
いずれにせよ税法と乖離した処理が求められるため、固定資産に関するIFRS帳簿と税務帳簿を保持する仕組みが必要になります。
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