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中堅生産財卸・商社にもとめられる差別化戦略とは 【第1回】

~事例に見る成長戦略の5つのポイント~

講師:片山和也 氏

第1回
押さえておくべき、中堅生産財卸・商社を取巻く事業環境
(2008年6月公開)

講師:片山 和也 プロフィール
(株式会社船井 総合研究所 シニアコンサルタント)

景気も踊り場を迎えつつあり、好況を呈してきた生産財業界においても、業績の二極化が見られるようになってきました。

今回は生産財業界でのコンサルティング、マーケティング戦略の策定に豊富な実績を持つ、株式会社 船井総合研究所の片山和也氏を講師に迎え、5回に渡り『卸・商社に求められる差別化戦略』について連載をいただきます。

収益力を上げるためのマーケティング戦略、生産性を上げるための業務改革について、講師が現場で取り組んでいるコンサルティングの事例を中心に、具体的にわかり易く、自社でも実行できるノウハウを中心に解説いたします。

1. 卸・商社の存在意義とは何か?

経済の変わり目や商社がからむ不祥事、さらにインターネット等の技術革新が起きるたびに「商社不用論」という言葉が持ち上がります。また日産リバイバルプランでは、カルロス・ゴーン社長が「商社を通しての購買は基本的に行わない」との方針を打ち出しました。

しかしそうした「商社不用論」が起きた結果、商社を通しての購買が無くなるかというと、ほとんどの場合そうはなりません。日産の場合も多くの資材設備をいまだに商社から購入していますし、商社がらみの不祥事が紙面をにぎわせたことも、記憶に新しいところです。また、インターネットに代表されるIT技術が進展し、卸・商社機能の多くがWebにとって変わられると言われた時期もありました。しかしB2Bの世界においては、Webを介してのインターネット取引はそれほど伸びず、いまだに人的販売がその中心におかれています。

ではなぜ、いつの時代も卸・商社は無くならないのか?それは卸・商社が経済合理性に基づく存在だからです。
卸・商社の存在意義として挙げられる卸・商社機能として、代表的なものに次の5つの機能を挙げることができます。

  1. 金融機能
  2. 与信機能
  3. 物流機能
  4. 販売代行機能
  5. 購買代行機能
いわゆる総合商社に代表される様な大手商社は、上記1、2、3を中心とした機能を強みとしています。逆に地域密着商社と呼ばれるような中小卸・商社の場合は、上記3、4、5を中心とした機能を強みとしているのです。
すなわち卸・商社ビジネスの特徴的なところは、その企業規模によってビジネスの中身が変わってくるということなのです。

2. 生産財卸・商社の事業規模によるビジネス形態の違い

そのような傾向が最も分かりやすく出ているのが生産財業界です。生産財の中でも「主資材」と呼ばれるような鉄・プラスチック・化学原料に代表される主原料は、大手商社かメーカー直販による取引が中心になります。「主資材」は“購入単価”も大きく、継続的に購入されることから“購買頻度”も高い、いわゆる“おいしい”商材であるといえます。それに対して「MRO」と呼ばれるような工場用品・設備・機械部品などは、中小卸・商社による取引が中心となっています。

「MRO」とは、メンテナンス・リペアー・オペレーションの略語であり、直訳すると「生産設備の稼動や修理に必要な資材」ということになります。「MRO」の多くは“購入単価”が低く、“購買頻度”も相対的に低い商材です。例えば「MRO」の中でも機械部品の場合、それこそ1個数円のパッキンやネジから数百万円の機械設備まで、そのアイテム数は天文学的数字に及びます。 しかもその中には数年に一回程度しか購入しないようなアイテムもざらにあります。

メーカーの立場に立つと、数年に一回しか購入しないユーザーと直接取引するというのは、非効率以外の何者でもありません。ユーザーの立場に立っても、数年に一回しか購入しないメーカーのために、取引口座を設定するのは非効率です。

その点、商社は複数のメーカーを扱うことにより、継続的にそのユーザーと取引することができます。しかしこうした機能は労働集約的なものになり易く、生産性の向上に限界が生じてきます。

ですから中小企業が主体になり易いのです。言い換えれば、大手企業ほど生産性の高いビジネスを手がけているのに対し、中小企業は労働集約的なビジネスを手がけており、それがコスト構造の差を生み、業界における棲み分けにつながっているのです。つまり卸・商社ビジネスにおいては、必ずしも規模が小さいことが不利にはならず、コスト構造の壁が大企業から中小企業を守っているのです。例えば生産財の中の一ジャンルである機械工具業界の場合、卸・商社の数は全国で1万社以上にのぼりますが、そのうち7割は年商10億円以下の卸・商社なのです。

3. 生産財卸・商社の事業規模による成長性と生産性の違い

つまり、卸・商社ビジネスを考える上で重要なことは単なる売上規模ではありません。大手卸・商社は総合力と資本力で生産性の高いビジネスを展開し、地域密着の小規模卸・商社はフットワークとローコストオペレーションで大手卸・商社が行えない細かなビジネスを展開しているのです。

こうした背景の中、卸・商社ビジネスにおいて最も悩みが多いのが大手卸・商社と小規模卸・商社にはさまれた“中堅卸・商社”なのです。全国区の大手卸・商社がおおよそ年商500億円以上、地域密着の小規模卸・商社はおおよそ年商50億円以下。そう考えると“中堅卸・商社”の事業規模は年商100~300億円前後と考えることができると思います。

実際、私は生産財卸・商社を中心に数多くのコンサルティングを手がけていますが、特に人の問題や戦略実行力で最も悩まされるのが年商100億円から300億円前後の卸・商社なのです。経験的にそうしたことを感じていましたが、今回はこうした傾向を定量的に分析してみることにしました。

まず図表1をご覧いただきたいと思います。これは生産財業界の専門誌である「設備資材」が決算期ごとにまとめた、主要生産財商社の決算データをもとに、船井総研で加筆修正したものです。この図表1をもとに売上規模別に分析を行ったものが、図表2になります。

図表1拡大する

【図表1:主要な主要生産財商社における売上・粗利・従業員数データ(金額単位:百万円)】



図表2

【図表2:売上規模別 成長性と生産性比較】

まず“成長性”ですが、2006年から2007年にかけて、図表1に示す大半の企業が増収(売上増加)を果たしています。しかし2007年は生産財業界も踊り場的な年であったため、一部の企業で減収(売上減少)が見られます。

そこで図表2からわかることは、各売上規模において最も減少社数が多いのは売上100~300億円未満のグループです。同グループは26社中、5社が売上減少しており比率で見ると最大の19%となっています。 次に“生産性”ですが、“生産性”とは要するに従業員一人あたりの粗利のことです。粗利から人件費等の販売管理費をひくと営業利益となりますが、営業利益は人件費を低くおさえることで高く見せることができます。しかし従業員一人あたりの粗利は、その会社の本当の実力を示すと考えてよいでしょう。

一般に正しく組織が運営されていれば、人が増えれば増えるほど生産性はあがります。大企業が一般的に給料が良いのは、生産性が高いためです。ところが各売上規模において最も生産性が低いのは売上100~300億円未満のグループなのです。同じく図表2を見ると、100億円未満のグループが1500万円の一人あたり粗利(=生産性)に対し、100~300億円未満のグループは1430万円という結果となっています。そして売上規模が300億円以上になると一人あたり粗利が大きく上がっていることがわかります。

以上のことから、年商100~300億円の中堅卸・商社は、成長性の面でも生産性の面でも、その上下クラスの商社にはさまれて相対的に苦戦していると言わざるを得ないのです。

4. 悩み多き中堅生産財卸・商社の実態

このようなことが起きる要因として考えられるのが、人員の問題です。図表2より、100~300億円未満のグループは従業員の平均が170人となっています。それに対して100億円未満のグループは従業員の平均が83人です。

組織論の原則として、一人のリーダーが社員の顔と名前が一致し、正しい評価ができる人員の限界は100人と言われています。つまり経営者のリーダーシップだけで組織が回るのは100人が限界で、それを超えると経営者のリーダーシップに加えて、本当の意味での“組織(=システム)”をつくらなければならないのです。こうしたことから、100~300億円未満のグループは本当の意味での組織づくりが不十分であるのではないかと推察されます。

また、組織形態は大きくわけて「エリア別組織」と「事業別組織」に分かれます。一般に「エリア別組織」は効率的な反面、専門性が低く“御用聞きスタイル”の営業になりやすくなります。それに対して「事業別組織」は縦割りの弊害があるものの、専門性が追求できるため付加価値の高い営業スタイルをとることができます。事実大手商社は“管工機材事業部”“産業機械事業部”といった形で、「事業別組織」で展開しているケースが大半です。その結果専門性が上がり、生産性が上がっていると考えて良いでしょう。

しかし100~300億円未満のグループは、「事業別組織」をつくるには人員が足りず、「エリア別組織」では会社としての専門性が発揮できないというジレンマを抱えることになります。メーカーでも商社の場合でも同様なのですが、従業員が300人以上いれば大概の問題がクリアできます。メーカーでいえば生産技術部門や保全部門などの本格的なスタッフを設置できるようになります。商社の場合も同様で、営業企画やマーケティング等の専門スタッフを配置できるようになってきます。ところが100~200人前後の人員では、そうしたスタッフをラインから捻出するのは難しく、そして管理は300人以上と変わらず大変なのです。

5. 地域密着と全国区のはざまで悩む中堅生産財卸・商社

また、人員の問題(=マネジメント)に加えて、販売面での問題(=マーケティング)もあります。
一般に卸・商社の場合、年商100億円未満の場合は「地域密着」型のビジネス構造となります。それに対して年商が300億円を超えてくると商圏が「全国区」となってきます。地域密着型ビジネスと全国区ビジネスの違いは、その会社のビジネスモデルの強さによるものです。すなわち、地域密着企業がなぜ地域密着なのかというと、新たな商圏でゼロから顧客開拓を行うことが難しいからといえます。業種に限らず、卸・商社は川下になればなるほど何でも取扱わざるを得なくなります。そうなると営業スタイルが御用聞き的なものとなり、他社との差別化を図ることが難しくなります。

それに対して商圏が全国ということになれば、特定の分野に絞込み、専門性を追及していくことが可能になります。そうした専門性が差別化要素や価格優位につながっていくのです。当然のことながら、何でも扱うよりは専門的に扱った方が生産性は上がります。こうしたことから、図表2でもわかるように、卸・商社は売上規模が上がれば上がるほど、言い換えれば全国区商社になるほど、生産性が高くなるのです。

こうした「地域密着」と「全国区」のはざまに挟まれているのが年商100~300億円の中堅卸・商社です。このクラスの卸・商社は「地域密着」型の商社と比べると企業規模は大きいのですが、「全国区」の大手卸・商社と比べると見劣りしてしまいます。そうした中で、中堅卸・商社としていかに特徴を持ち、自社の存在意義を訴求していくかということが非常に大切になってきます。すなわち中堅卸・商社こそ、「戦略性」が何よりも重要になってくるのです。そのためには強力な事業戦略を打ち立てると同時に、先ほどから述べている「成長性」と「生産性」を阻害する要因をつぶしていかなければなりません。

そのためにも、次号ではそうした中堅卸・商社が抱える構造的な諸問題についてさらに掘り下げていきたいと思います。

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