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カメラ画像から商品補充のタイミングを自動通知 - その仕組みと効果とは?
TECH+掲載日 2024/05/21 11:05 著者:丸山篤
注目の新しいサービスや技術にスポットを当て、深掘りしていく本連載。第1回は、小売業の人材不足を補うサービスとして期待されるNECが提供する「NEC棚定点観測サービス」を取り上げる。
現在、国内のあらゆる業界で人材不足が深刻だ。小売業もその例に漏れず、ITを活用した業務の効率化が求められている。そんな中、NECは2024年3月、小売店舗のDXを支援する「NEC棚定点観測サービス」を強化し、スマートデバイスを活用した棚割自動判定機能を追加した。
はたして、同サービスは、店舗の業務効率化にどれくらい効果が出せるのだろうか。サービス担当のスマートリテール統括部 映像アナリティクスグループ 主任 髙畠真彩氏に聞いた。
「NEC棚定点観測サービス」とは
「NEC棚定点観測サービス」は2022年2月、スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売業向けに提供が開始された。このサービスは、商品棚を映したカメラ映像からAIがリアルタイムで品棚の在庫量を可視化し、商品の補充が必要なタイミングを従業員に通知するものだ。
画像は10分ごとに撮影され、クラウドに保存。在庫があらかじめ設定した「しきい値」を下回ると、担当者に知らせるという機能を持つ。これにより、店舗担当者は、現場に出向いて商品在庫を確認することなく、別の場所にいても品出しタイミングを把握できる。
特に、バックルームが別のフロアにあるビル型店舗、従業員が少なく店舗が大きい郊外店などで効果が見込めるという。なお、このサービスは東急ストアやイオンリテールが先行導入している。
サービス価格は、初期費用が7万4,800円から(カメラ+アプリ設定費用、カメラの台数により異なる)、月額利用料がカメラ1台につき3,980円からとなる。
「主な用途は、売り場の棚在庫を検知して、適切なタイミングで品出しが行えるように通知を行うことです。在庫が少なくなると自動で従業員の端末に通知がくるので、欠品を気にすることなく、従業員は接客など、別の業務に専念することができます」(髙畠氏)
ある大手GMS(General Merchandise Store)では、納豆・豆腐カテゴリで補充回数が約50%削減したほか、補充で23時間、棚までの往復で4.4時間の計27.4時間の時間削減(月間)につながったという。ただ、バックヤードまでの距離や作業人数、店舗の大きさにより効果に差が出ており、東急ストアやイオンリテールでは、このあたりを店舗ごとに検証しながら導入しているという。
スマホアプリによる数回の撮影で「棚割」を自動設定
「NEC棚定点観測サービス」を利用する場合、まず、「棚割(たなわり)」の作業を行う。「棚割」というのは、棚のどの部分に、どんな商品が置かれているかを指定する作業だ。これにより、商品ごとの在庫状況が把握できる。同社は顧客からの要望を受け、2024年3月の機能強化では、スマホアプリで数回、棚を撮影することにより、「棚割」を自動設定できるようにした。なお、「棚割」は手動で設定・修正も行える。
「棚割」では、値札に商品情報を登録した二次元コードを貼っておくと、スマートフォンのカメラがその情報を読み取り、商品情報も自動で登録できる。実際の在庫状況は、スマートフォンではなく、店舗内に設置した定点固定カメラにより判定するが、「棚割」で使用したスマートフォンの画像と定点カメラの画像をマッチングすることで、定点カメラによる在庫状況の把握を可能にしている。これには、NECの特許技術を利用しているという。
「本当は棚のカメラだけで2次元コードまで読み取れることがベストですが、今は(定点カメラの)画質が追いついていないため、スマホで撮影をしています」(髙畠氏)
商品を置く位置や面積を変えるとく在庫を正しく把握できないため、基本的には、棚のレイアウトを変更した場合、「棚割」を再登録する必要がある。
在庫量は商品の面積で把握
「NEC棚定点観測サービス」は、在庫数を正確に把握して、品出しタイミングを通知するわけではない。「棚割」で指定するのは、あくまで棚の最前列部分だ。カメラで確認できる最前列に置かれた商品の面積の変化によって在庫量を判定している。そのため、棚の奥にある商品在庫は考慮しない。
「一部、奥行きが見える列もありますが、基本はフロント(最前列)の商品がある部分のパーセンテージです」(髙畠氏)
「NEC棚定点観測サービス」は、わざわざ現場まで在庫を確認する手間を省くことによって効率化するサービスのため、そこまで正確に在庫を捉える必要はないということだ。逆に正確な在庫を捉えようとすれば、さらに別の機器が必要になり、コスト高になってしまう可能性がある。撮影される棚画像は担当者がスマートフォンで確認できるため、最終的に補充するかどうかは、画像を見てからの判断になる。
定点カメラは、10分おきに棚の画像を撮影しているが、顧客が映り込み、商品が隠れてしまうこともある。そのためこのサービスでは、「人物消去」という独自の技術を入れており、人が棚の前に立っていても、人を消して棚を撮影できるようにしている。
さらにピッキングリストとして、欠品している商品だけを一覧にでき、例えばカテゴリを絞ったり、充填率30%以下の商品を一覧で出したりすることもできるという。
ただ、このサービスでは在庫率の判定が難しい商品もある。それは、ハンギング(吊るすタイプの陳列)の商品だという。
「グミなど、ハンギングされているものは、めくってもめくっても後ろに商品があるので、なかなか面積で測れません。ただ、野菜などは空き枠が見られれば大丈夫です」(髙畠氏)
「NEC棚定点観測サービス」は、本部の社員が利用することも想定している。
「例えば、本部が作っている基本の『棚割』が、実際の店舗でどうなっているのか、本部は店舗を訪問するまで確認できませんが、このサービスの機能を使えば、実際の『棚割』がどうなっているのかを簡単に確認できます」(髙畠氏)
すべての商品在庫を捉えることは想定していない
現在、定点カメラとしては、動作確認が取れた2種類(iProとAXIS)が推奨されているが、1台のカメラでカバーできる棚の数は3~4(幅3~4m)。店舗内のすべての棚をカバーするとなると、数十台のカメラが必要になるが、このサービスは、店舗内のすべての棚にカメラを設置することは想定していないという。
「基本的には、牛乳やヨーグルト、納豆、豆腐、パンなど、賞味期限が短く1日で回転するものにカメラをつけていただいくことを想定しています。商品を特定せず、特売品のような名前にして、そこにどんな商品がきても大丈夫といった使い方を行っている店舗もあります」(髙畠氏)
今後の展開
同社は2026年度末までに4,000契約を目標にしているが、今後の拡大に向けては、既存の在庫システムと連携を検討する必要があるという。
「在庫状況や自動発注といったシステムと一気通貫でつなげたいという要望は、お客さんからもたくさんいただいているため、既存の在庫システムと連携できないかという点は議論しています。ただ、スーパーさんによって導入しているシステムが異なるので、そこをどこまでカバーできるかといった課題はあります」(髙畠氏)
また、これまでは補充の効率化を効果として訴求していたが、今後は欠品による販売ロスも算出して指標に入れて効果を訴求していくことを考えているという。
転載元:TECH+
2024年05月21日掲載記事より転載
記事URL:https://news.mynavi.jp/techplus/article/newtechservice-1/
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関連サイト
[事例] イオンリテール株式会社様
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[製品サイト] 棚定点観測サービス
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[プレスリリース]
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