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マティアス・ニーパート

2018年9月28日

マティアス・ニーパート
博士(コンピュータサイエンス)
NEC 欧州研究所
システム・機械学習研究グループ主席研究員

統計的関係学習とニューラルネットワークを研究

現在私たちが取り組んでいる研究テーマは、機械学習モデルの開発です。デジタルヘルスや小売、金融など、社会に存在するいくつかの複雑なシステムは、グラフ構造データにモデル化することができます。
私はそのなかでも特に、関係学習を専門にしています。現在は、高次元かつノイズが多いデータに適した深層学習アプローチをベースとするニューラルネットワークと、関係学習を統合しようと試みているところです。私たちは、多くの応用領域から得られるデータから、機械学習モデルを開発することをゴールに設定しています。これらのデータは、一連のエンティティとエンティティ間の一連の関係性としてモデル化されるもので、新しい知識や知見を生み出すことができます。
私たちが開発している技術は、多くの人々の生活を改善し、社会をより安全にすることができるものと考えています。事実、さまざまな応用領域で、エンティティ―間の潜在的な関係性を発見することは重要です。
たとえばデジタルヘルスの分野では、遺伝子情報や医用イメージングデータの種類に基づいて、患者間の潜在的な関係性を見つけられる可能性があります。そのため、私たちはいま、このような潜在的関係を発見して、新薬の発見や患者の疾病の検出、薬の個別化を目標に掲げて研究をつづけています。

異なるデータを組み合わせるという挑戦

私たちがいま取り組んでいるメインの研究課題は、画像やテキスト、スピーチ音声などの高次元でノイズの多いデータを、企業のデータベースなどによく見かけられる関係データと組み合わせることです。パターン照合には深層学習が非常に適しており、私たちもこの領域では非常に大きな進歩を遂げています。
しかし、このようなデータがない場合や、推論を行ったり人の背景知識を組み込んだり、アルゴリズムの結果を推測したりしたい場合が問題です。こういうケースでは、深層学習に基づく既存のパターン照合アプローチと、AI分野でまだ開発されている関係学習アプローチを組み合わせることが極めて重要になってきます。

さまざまな専門家との共創が重要

機械学習の研究者たちは、優れたモデルや製品を提供するためには、その領域の専門家と協力することが必要不可欠であることを認識しているものです。たとえばデジタルヘルスの分野では、医療専門家と協業してデータの意味を本質的に理解し、新しいアイデアを提案していくことが非常に重要となります。機械学習の研究者にとって、特定領域に精通して深い知識を持ち、その領域で働く人の言語を理解できるようになることは極めて重要なのです。
私たちの研究テーマがこれから10年の間にどうなるか。予想は非常に困難です。この分野の進歩スピードと変化は著しいですから。しかし、これだけは確実に言えるというトピックもあります。それは将来「説明可能なAI」や「説明可能な機械学習」の重要性が増すということです。
「説明可能」とは、ただ予測に長けているだけでなく、なぜそのような予測をしたのかという理由をユーザーに説明することができるという意味です。私の主な研究目標の一つは、関係学習型のAIとニューラルネットワークをベースにしたAIを組み合わせることですから、今後も引き続きこの課題に取り組めることを楽しみにしています。
もう一つ、薬の個別化についての例を挙げてみましょう。現在の医薬品は、一人ひとりの遺伝子等の情報に関係なく、全ての人々に同じものが処方されています。
私たちはこうした現状に対し、AI技術によってドクターの診断がより適切なものになるように支援したいと考えています。患者一人ひとりの遺伝子情報や医用イメージングデータにあわせて個別化することで、よりふさわしい診断ができることでしょう。
薬の個別化だけでなく、私たちはさまざまな領域で専門性のある研究者を多数育て、その領域での専門家と共創していく必要があります。こうした取り組みこそが、次のブレークスルーを生み出していくことでしょう。

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マティアス・ニーパート博士

アメリカのインディアナ大学で博士号を取得。
ワシントン大学ではPedro Domingos教授の指導の下で助教を務め、2015年からはNEC欧州研究所の上級科学研究員を務めている。ICML、NIPS、AAAI、IJCAI、UAI等の主要な会議や学会誌、ワークショップで40本以上の論文を発表。同氏は構造化データを扱う機械学習の専門家であり、最優秀論文賞を数回、Google社の教員研究賞(faculty research award)、またアメリカとドイツでそれぞれ国内の研究賞(national research award)を受賞している。

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