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セキュリティ研究所

2018.5.21

OT/IoTを支える確かなセキュリティを実装
セキュリティ研究所 所長
谷 幹也

社会インフラに対する様々な脅威からシステム・情報を守る先進技術やソリューションを創出

― セキュリティ研究所ではどんな研究をしていますか?

セキュリティ研究所では、データセキュリティとサイバーセキュリティの両面から社会の安心・安全を守る研究をつづけています。データセキュリティは、暗号や秘密計算、ブロックチェーンなどの技術によってデータの秘匿性を守りつつ活用するという研究分野です。サイバーセキュリティは、外部からのサイバーアタックに対してどう防衛していくかという研究ですね。
最近では、AIやIoT技術の進化に伴って新たなニーズも生まれています。たとえば自動運転では、道路標識に少し変化が生じたり、いたずらされたりしただけで、車が誤誘導されてしまうリスクも生じます。こうした技術的な課題を解決し、安全に制御できるAIを実現するための新しいセキュリティ研究もわたしたちが積極的に取り組むテーマです。
また、逆にAIを活用するセキュリティシステムも重要な研究テーマです。一般的に「デジタルシャドー」と呼ばれる技術によってシステム全体の組成をサイバー空間に写し取り、サイバー攻撃をシミュレーションする研究にも取り組んでいます。さまざまな攻撃をサイバー上で試すことによって適切な対処を導き出し、実際に攻撃があった場合に備えるわけですね。サイバー攻撃は日々進化していますから、今後は攻撃者側がAIを活用してくる恐れも大いにあります。AI対AIを想定したセキュリティ対策は急務です。
また、NECが得意とするバイオメトリクスにおいても、セキュリティは非常に重要です。生体情報は基本的に一生変えられないわけですから、仮に流出してしまった場合の被害は恒久的かつ甚大なものになります。だからこそ、特徴量のデータが万が一流出しても問題ないような暗号化や分散化は不可欠です。また、実際の運用時においては、データの中身を見なくても照合結果だけを提示できるような秘密計算の実装も、プライバシーの保護のために重要ですよね。NECはこれらの技術に古くから取り組んできたことで、世界をリードする独自技術を多数保有しています。

― セキュリティにおけるNECの強みは何でしょう?

まず一つ言えることは、秘密計算やブロックチェーンにおいて世界No.1の技術を保有していることですね。秘密計算においては、情報を分散したまま処理する独自の「マルチパーティ計算」を活用することで、世界トップクラスのスピードを実現しています。これは、ビッグデータのリアルタイムな処理やAI活用のために、非常に重要な技術です。2016年には世界No.1の処理速度を実現し、難関国際学会でも採択されました。*1 その後、他社も同等の速度の方式を発表しましたが、依然としてNECはその他社と並んで世界No.1をキープしています。*2
ブロックチェーンにおいても、従来比100倍の処理性能を誇る世界でも圧倒的な処理スピードを実現しました。毎秒10万件以上の記録性能*3を達成する世界最速*4のブロックチェーン向け合意形成アルゴリズムによって、IoTデバイスからの高速かつ安全な閲覧も可能になります。こういったコア技術は、わたしたちセキュリティ研究所の大きな強みです。
また、NEC全体としてセキュリティに古くから取り組んできたことも大きな強みですね。NECは創業当時から官公庁や防衛、警察に関わるような大型システムを構築しつづけてきました。公共性の高いデータを扱うことが大前提となるため、秘匿性の確保や安心・安全の構築は常に取り組み続けてきた実績があります。こうして蓄積されてきた長年のノウハウは非常に大きなものですし、わたしたちの事業上の大きな強みとなっています。

  • *1
    T. Araki et al., High-Throughput Semi-Honest Three-Party Computation with an Honest Majority, ACM CCS 2016
  • *2
    NEC調べ、2018年5月現在
  • *3
    取引記録に参加するノード数200ノード程度の大規模接続環境下において
  • *4
    NEC調べ、2017年12月1日現在

― どんなビジョンを描いていますか?

セキュリティの最大の目的は安心と安全の追求です。しかし、技術を突き詰めることによって、新しい価値を創造することもできるのがセキュリティです。たとえば、暗号技術を基盤とする新たな方式の開発は、電子投票を実現するためのブレークスルーにもなり得ます。誰が誰に投票したという情報の秘匿性は保ったまま、最終的な得票数のみ取り出すことができれば、安全かつ確実な電子投票システムを構築できるからです。この技術が実用化できれば、投票所へわざわざ出かけなくても効率よく投票することができますよね。さらには、遠洋漁業に出ている方や海外赴任している方々でも、より気軽に投票できるようになるので、公平性を高めることにもつながります。セキュリティ技術の進化は、今まで実現できなかった新しい価値やソリュ―ションを生み出すことにもつながるのです。
また、先端技術の研究開発では、国際標準やデファクトスタンダード策定への取り組みも重要です。最先端の研究に取り組む各企業や国々の意向をまとめあげながら、新しいスタンダードを創りあげなければなりません。わたしたちも、欧州研究所を中心とした海外研究拠点と密接に連携しながら、国際的な標準化に取り組みつづけています。世界との連携によってセキュリティ技術をさらに進化させ、一人ひとりが特に意識せずとも自然に安心・安全を享受できる社会を創造するために、これからも取り組んでいきたいですね。