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研究開発について

2018年8月29日

西原 基夫
日本電気株式会社 執行役員(中央研究所担当)

研究所の概念を変えるエコシステム型R&D

革新的な社会ソリューションを、世界中の人材や資材を投入してスピーディーに実現

― 自ら世界と対峙し、事業化を推進する研究所へ

研究所というと、シーズ技術の研究に専念する場所だとイメージする方が多いかもしれません。しかし、いま私たちが取り組んでいるのは、こうしたバックエンド型の研究所からの脱却です。まずは研究者自らがフロントに立って事業化まで足を踏み入れること。そして、アーリーステージから技術を公開し、お客様や外部パートナーと密接に連携することで、スピーディーに事業化を果たしていく研究所をめざしています。
私たちの研究テーマにおいて大きな比重を占めるAIやIoTは、急速な技術革新が進む領域です。激化する競争を生き抜いていくためには、事業化のスピードこそがカギとなることは言うまでもありません。もちろん、NECはこれまでも世界でNo.1、Only 1と言える数々のコア技術を開発し、事業部と連携しながら高品質で高精度なサービスを市場に投入してきました。しかし、こうしたパイプライン的な事業化フローではスピードに限界があります。だからこそ、これからは世界中の人材や資金を集結させて、技術の開発初期段階から広く外部と連携し、効率よく事業化を達成するエコシステム型研究が重要だと考えています。
そのために実施した策の一つが、2018年7月にシリコンバレーに設立した「NEC X, Inc.(以下NEC X)」です。NECの技術を核に、シリコンバレーに集まる優秀な研究者やアントレプレナー、アクセラレーターと共創し、社会にインパクトを与える事業をスピーディーに起ち上げることを目的として設立されました(プレスリリース)。事業化に成功すれば、そこから得られる利益をシェアしていくことで、パートナーとWin-Winの関係を築くことができます。いわば、研究者による事業インキュベーションを会社がフルでサポートするようなイメージですね。
NECは昔から、世界に誇る強い技術と優秀な研究者を抱えてきた企業です。これは現在においても間違いありません。事実、AI系の難関学会でもNECグループ発の論文が多数採用されています。だからこそ、事業化という点において世界中の外部パートナーと連携することで、必ずめざましい成果を挙げることができると考えています。

― 世界トップレベルの研究を加速させる組織的サポート

昔からNECが非常に強いのは、実世界センシングの分野です。NISTでNo.1*の精度・スピードを実証した顔認証などの生体認証はもちろん、光センシングや画像、音響、そしてニオイ解析・分析においてもNECは世界の研究を牽引しています。顔認証のように客観的なベンチマークをとれる技術が少ないのは残念ですが、どれも世界でトップレベルの技術を持っていると自信を持って言える分野です。
また、総合力も大きな強みです。NECはAIやIoT以外にも、セキュリティやハードウェア、光通信などさまざまな分野で事業を続けてきた実績があります。最近(2018年7月現在)では、Googleと共同して発表した光通信についての論文が世界中で話題となりました。機械学習を用いることによって、大陸間の光ファイバーの通信性能が、大きく向上するという内容だったのですが、これも機械学習だけでなく光通信分野でも多くの実績を積んできたNECならではの成果といえるでしょう。
そして何より、こうした強みを創りあげているのは、優秀な研究者であることを忘れてはいけません。NECグループにはいま、国籍や人種を問わず約900名の研究者が在籍しています。日本人の研究者はおよそ半数程度ですね。ここ数年で、さらにグローバルな組織へと変貌を遂げました。
優秀な研究者というのは、非常に強い技術の研究能力とともに、社会にインパクトを与えたいという事業マインドも併せ持っているものです。実際に、NECでもそういった方々が大きな成果を挙げています。しかし、これまでの事業化においては、こうした研究者の個人芸に頼るところが大きかったという反省がありました。だからこそ、これからはそうした意欲のある優秀な研究者に対し、会社としてフルでサポートしていこうとしています。たとえば、予測分析自動化技術を開発した藤巻主席研究員は、会社のサポートのもとで2018年4月26日に新会社「dotData,Inc.」をシリコンバレーに設立しました。もちろん、予測分析自動化技術の権利は彼自身が保有しています。
こうした新会社設立といった形式にとどまらず、在籍する研究者の待遇についてもグローバル水準にあわせ、優秀な人材には役員相当の待遇を用意するなど、積極的なサポート策も展開しているところです。

  • *
    MBGC 2009 (Multiple Biometric Grand Challenge)
    MBE 2010 (Multiple Biometrics Evaluation)
    FRVT 2013 (Face Recognition Vendor Test)
    FIVE 2017 (Face In Video Evaluation)

― 「機械学習2.0」を皮切りに、思い切ったイノベーションをめざす

私たちNECの研究所では、ICTを中心とした技術革新を核にして新たな社会ソリューションを生み出しつづけていきます。この姿勢は、これからも変わりません。しかし、これまでのやり方を10%変える程度のイノベーションでは物足りません。思い切って10倍は変えてしまうムーンショット(月面着陸)くらいのイノベーションが重要です。デジタルトランスフォーメーションの進展によって、これから10年から20年の間に社会システムは大転換を迎えることでしょう。従来型ソリューションの「カイゼン」にとどまらない、イノベーティブな研究開発にこそ、大きな意味があると考えています。
たとえば、いま私たちは「機械学習2.0」という概念を打ち出しています。現在の機械学習技術は、膨大なデータや専門家による長時間にわたる分析が不可欠です。しかし、これでは現場ですぐに活用することが難しく、なかなか普及が進まないという現状があります。だからこそ、誰でも効率的に分析ができる新しい機械学習である「機械学習2.0」を創り出すことが、次の技術革新につながるはずだと考えています。その実現に向けてNECでは既に予測分析自動化技術や機械学習を高速化するコンパクトなベクトル型コンピュータの開発を進めてきました。さらに少量のデータでも分析が可能になる技術など、革新的な技術が次々に芽を出し始めています。こうした技術を武器にして、AIやIoTの普及をさらに加速していきたいですね。
このように、いま私たちは大きな変革の真っ只中にあります。そして、その原動力となるのが優秀な研究者たちです。いま私たちは世界に約900名の研究者を抱えてこれに取り組んでしますが、これからも優秀な研究者の方々にはNECに参加していただけたら嬉しいと思っています。私たちも、全力で活躍できる環境を整備していくつもりです。私たちが持つさまざまなノウハウやアセット、顧客チャネル、資金を踏み台にするくらいの気概をもって新事業にチャレンジしてくれる方は、大いに歓迎したいと思っています。


組織体制・拠点

中央研究所

データサイエンス研究所 Data Science Research Laboratories
バイオメトリクス研究所 Biometrics Research Laboratories
セキュリティ研究所 Security Research Laboratories
システムプラットフォーム研究所 System Platform Research Laboratories
価値共創センター Value Co-Creation Center

海外拠点

NEC Labs America 北米研究所
NEC Labs Europe 欧州研究所
NEC Labs China 中国研究院
NEC Labs Singapore シンガポール研究所

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