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データサイエンス研究所

2018年10月25日

AIを拡張し社会へ浸透させる研究開発
データサイエンス研究所 所長
広明 敏彦

実世界の見える化と高度なデータ解析から人を超える予測・最適化、効率化を実現し新たな社会価値を創造

― データサイエンス研究所ではどんな研究をしていますか?

データサイエンス研究所では、AIに関わる研究開発に取り組んでいます。当研究所には中央研究所内のAIに関するスペシャリストが集結しているのですが、2018年度からはソフトウェアだけでなく、ハードウェア系のメンバーも加わり、AIに関わる研究スピードのさらなる加速をめざしています。
研究はさまざまなアプローチから取り組んでいますが、その一つが計算処理スピード向上へのチャレンジです。AI技術の中核である機械学習は、膨大な計算処理能力を必要とします。実際の現場ではリアルタイム性を求められることが多いのですが、現状ではまだ処理速度が非常に遅く、実用化へのボトルネックとなっているという場合も少なくありません。わたしたちの研究所では、ハードウェアとソフトウェアの専門家が密接に連携しながら、AI技術のより一層の高速化を精力的に進めています。
また、センシング能力の拡張も重要なテーマです。例えば、光に関するセンシング技術の開発をベースとして、人間では感知できないような情報を取得することをめざしています。人間の感覚器の能力を高めるイメージですね。このセンシング技術は実世界をデータ化する「見える化」のために、とても重要です。従来のデータは、わたしたちがキーボードやマウスを通して入力してきましたが、今後はこれらに加えて、人の処理能力を超えるような、ユニークかつ膨大な情報を活用可能にすることが、AI技術の進化において大きなポイントになると考えています。

― データサイエンスにおけるNECの強みは何でしょう?

NECでは、半世紀以上も前から、文字認識技術を含むさまざまなAI技術を研究しつづけてきました。こうして長年にわたって培われてきたノウハウが、非常に大きな強みです。技術的な蓄積はもちろんですが、データや人材も一朝一夕では手に入らないものですから。また、実際に技術を運用する際には独特な調整作業が必要になるのですが、ここでも長年受け継がれてきた「秘伝のタレ」のようなコツが決定打になることもしばしばです。
もちろん、世界をリードする独自のコア技術も多数保有しています。たとえば、ビッグデータの分析に用いられている「異種混合学習」は、その分析結果の根拠まで示すことができる技術です。従来のディープラーニングでは、確かに結果を導き出せるものの、その根拠がわからない「ブラックボックス」である点が不安材料となっていました。これに対して、異種混合学習では分析結果の根拠を数式として示すことができるので、出力結果が予測可能となり、安心してシステムに組み込むことができます。
また、「プリスクリプティブ・アナリシス」という最先端分野にも取り組んでいます。これは、単純な予測にとどまらずに、最善の打ち手までを推測し提示する分析方法です。たとえば、ある店舗がパンの値引きキャンペーンをいつうつべきかを考える場合、パンの売れ行きが伸びることで、おにぎりの売上が落ちてしまうかもしれない、といった要素が複雑に絡みあってきます。プリスクリプティブ・アナリシスは、このような膨大な可能性をすばやく計算して提示することができる技術です。今後、ビジネスにおける意思決定を支援する重要な技術として広まっていくと考えています。
さらに、スモールデータ分析もNECが先行している研究テーマです。例えば、何か異常を発見することを考える場合、従来の機械学習では多数の異常を示すデータを必要としますが、異常なデータはそもそも数が少ないため、あまり手に入らないというジレンマを抱えています。そのため、より少ないデータでも実用レベルの性能を出せる技術の開発は、いま非常に重要なテーマとなっています。NECはこの技術分野においても、社外の研究機関などとも連携しながら強力に研究を推進しています。

― どんなビジョンを描いていますか?

AI技術によって、安心・安全で、超高効率な社会を実現することをめざしています。そのためには今後、AI同士が利害調整する必要性も生じるでしょう。人間の利害を代表するAI同士がネットワークでつながり、交渉・調整して最適解を導き出していくような時代が、そう遠くない将来にやってくると考えています。たとえば、自動運転車同士が互いにうまく協調し制御し合う事で、交通事故や渋滞を無くすこともできるはずです。こうした新たな社会基盤についても、コンピュータとネットワークの双方に強いNECが大きく貢献できる領域ですね。
わたしたちが取り組む研究や技術は、社会の基盤を支える裏方的なものが多く、決して外から目立つようなものではないと思います。しかし、一人ひとりが安全で安心に、かつ快適に暮らせるような社会の実現には不可欠なものです。新たなAI技術の研究開発を通じて、そのような明るい未来社会の実現に大きく貢献していきたいと考えています。