サイト内の現在位置

学生のみなさんへ2019インタビュー:高本 亮

2019年2月4日

宇宙物理学から生体認証へ

バイオメトリクス研究所
高本 亮(たかもと まこと)

約10年間、日本の大学やドイツのMax-Planck Instituteで高エネルギー宇宙物理の研究に従事。2018年にはスーパーコンピュータ「京」を使った研究で優秀成果賞を受賞した。その後に、NECへ入社。生体認証の研究に意欲的に取り組んでいる。

宇宙物理の研究者から生体認証の企業研究者へ

私は2018年にNECへ入社するまで、宇宙物理学の分野で長く研究をつづけてきました。大学院やドイツの研究機関などで約10年ほど研究をつづけてきたのですが、研究が一段落ついたことを機に、NECへの入社を決めました。新しい研究テーマとして、機械学習や人工知能に取り組みたいと考えたからです。
この分野に興味をもったのは、宇宙物理学での研究がきっかけです。数値シミュレーションを用いた最先端の宇宙物理学研究では、扱うデータ量が「テラ」を超える「ペタ」単位となるほど膨大なものになるんですね。日本最速のスーパーコンピュータ「京」を使って計算していたほどなのですが、そんな膨大なデータ解析を人手で行うのは、さすがに限界があります。そこで、解析の一環として初歩的な機械学習の技術を使っていました。技術に触れるうちに、この分野はこれからさらに大きく飛躍する技術だと興味をもち、新しいテーマとして取り組みたいと考えるようになりました。
宇宙から生体認証に移ったわけですから、かなり大きな変化ですよね。いちばん大きく変わったのは、研究の時間感覚でしょうか。宇宙物理学で扱う理論は、下手をすると100年や1000年かかっても証明できない可能性があります。主な研究対象は、地球から光の速さで1000年以上かかっても到達できないような距離で起きる現象でしたからね。それが生体認証では、うまくいけば開発した技術が1年後には世界へ広まっていくかもしれない(笑) このスピード感が大きな違いだと思います。
また、「知識」はやはり大きく違いますからね。新しく習得する必要がありました。しかし、研究の基本的な進め方や数学的な基本は同一です。上司や仲間のサポートもあったので、キャッチアップもスムーズにできていると思っています。

異分野のノウハウを活かして、新しい可能性に挑戦

現在は、今岡さんのチームで顔認証を中心とした生体認証に取り組んでいます。2018年には、顔認証システムにおいて顔の向きを推定するエンジンの開発などにも携わりました。
いまはまだ新しい分野での研究に慣れようとしている途中ではありますが、ゆくゆくはこれまでの自分の研究分野のノウハウを活かして、新しい技術を創り出したいですね。これはどんな領域でも同じだと思いますが、異なる分野の知識や発想は、非常に強い武器となります。従来その領域で存在しなかった知識や発想は、新しい応用やアイデアを生み出す土壌になるものです。ノーベル賞をとった学者の方々もよくおっしゃっていますが、常に人と違うことを考えること、人を出し抜くような発想をすることこそが、新しいイノベーションへとつながります。
それに、機械学習や人工知能の分野はとにかく研究者のコミュニティが大きくて、進展も非常に速い。だからこそ、他の企業と同じようなことをやっていては、規模で押しつぶされてしまいます。現在の機械学習分野のコアとなる深層学習の技術進化は目覚ましいものがありますが、問題はこの技術に「何をさせるか」です。ほとんど無限に近い可能性のなかから、誰も考えていなかったような方向性をどのように引き出していくか。そこが、機械学習や人工知能研究の肝となります。
そういう意味でも、宇宙物理学をつづけてきた私の考えた方や知識は、機械学習や生体認証技術における新しい可能性の開拓につながるはずだと信じています。いよいよ私もいま、勤続2年目を迎えようとしていますから、その可能性をより野心的に模索していきたいと考えています。

子育てもしやすい労働環境

NECに入って良かったと感じたことは、非常に働きやすいという点ですね。上司は休暇の取得を推奨してくれますし、勤務時間についてもよく気をつかってくれます。これまで働いているなかで、残業を強制されるようなことは、まるでなかったですね。
現在は裁量労働制で勤務しているため、会社としての定時である17:35頃の退社を目安にしつつ柔軟な働き方が可能になっています。そのおかげもあり、帰宅後には2018年の2月に生まれた第一子をお風呂に入れたり、ご飯をつくったり食べさせたりして家族と一緒に過ごすことができています。NECには育休制度も整っているので、ジェンダーに関わらず育児休暇を取得することもできます。大企業ということもあり、社会保障はもちろん、さまざまな福利厚生やシステムが整っています。まだ自分でも把握しきれていないほどです(笑)
NECに入る前は大学でポストドクターとして働いていましたが、そのときと比べるとかなり働きやすい環境になったと思います。子どもを育てるためにも、良い労働環境で働くことができているのは、本当に助かっています。