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学生のみなさんへ2019インタビュー:伊藤 伸志

2019年2月4日

大学で研究をつづけながら
世界のトップへ

データサイエンス研究所
伊藤 伸志(いとう しんじ)

2015年入社後、機械学習・数理最適化分野での研究に従事。ICMLやNIPSなどの最難関国際会議にも論文が複数採択されている。2018年4月からは、自身の研究をさらに深めるために博士課程へ進学。企業研究と大学での研究を両立させている。

社会に役立つ技術研究をめざしてNECへ

私は現在、不確定な環境における意思決定支援アルゴリズムの研究を進めています。学術的にいうと、数理最適化に関わる領域です。あるアクションに相関して指標がどう変化するかがわからない環境下でも、最適化の手法を適用させようというのが大きなテーマです。たとえば最近ではポートフォリオ・オプティマイゼーションと呼ばれる投資最適化問題に取り組みました。投資というのはまさに、結果がどうなるかわからない不確定な領域です。そのような環境下でも、投資による利益を最大化するためのアルゴリズム開発に取り組みました。
NECに入社した理由は、技術が実際に社会で役立つ現場に貢献したいと思ったからです。大学では応用数学をやっていたのですが、「応用」とはいうものの、社会へ直接的なインパクトを与えられる場所からは、まだまだ遠いところで研究しているという印象がありました。博士課程に進むという選択も想定はしていましたが、やはり社会への実用ということを重要視し、企業研究者への道を選びました。
NECは、私が就職先を探していた当時から人工知能や機械学習の領域で高いプレゼンスがある企業でした。また、トップレベルの国際会議、ジャーナルなどで論文がコンスタントに発表されていたので、学術的にも画期的なことにチャレンジして結果を残している企業だという印象がありました。面接では、実応用への情熱をもつ研究者の社員の方と話す機会があり、NECが幅広い事業を展開していて、実際の社会に役立つソリューションを展開しているということがわかったので、非常に魅力的に感じて入社を決めたのが経緯です。

「応用」のために必要な「基礎」を学ぶため、博士課程へ

一方で、会社に入って研究をしていくなかで、やはりアカデミックな部分も大事だと思うようになりました。基礎的な部分や理論面でも、理解の不足を感じることが多くなったからです。こうした能力を伸ばすため2018年の4月から大学の博士課程に在籍し、会社で働きながら、大学での研究もつづけています。もちろん、両方の研究を並行して進めるのはなかなか大変ですが、それ以上に大きなやりがいや刺激を得られていると感じています。これは会社に入ったときも思ったことですが、今までのコミュニティと違ういろんなタイプの人と関われるというのはとても面白いものです。課題意識や研究するうえで大事にしていることもそれぞれ違うので、大きな刺激になります。
特に、企業と大学では研究の姿勢が大きく異なります。企業の研究では、社会にどう役立つかや、どのようにしてビジネスに結びつけるかという視点が重要視されますが、大学の研究室では社会にすぐに役立つことが必ずしも重要ではありません。ずっと未解決だった問題や未知の原理、現象を解き明かすことこそが重要視されます。
この二つの価値観は、どちらが良いということではなくて、どちらも重要な姿勢だと思います。結局、応用系の新しい論文をみていても、源流は理論です。理論の最新研究を追うことが応用という観点からしても大事だと考え、いまは理論と応用の両方を重視して研究に取り組んでいます。

会社の枠を超えて、積極的な研究が可能

NECで良かったと感じるのは、研究者がやりたいと言ったことには、きちんと応えてくれる環境だという点です。私の所属するチームには、社外との共同研究にも積極的に取り組む人が多くいます。私自身、入社して間もない頃からNII(国立情報学研究所)にアポをとって、共同研究に取り組んでいきました。当時は自身の研究能力に不安があったため、研究の進め方や論文の書き方をNIIの先生に指導いただきたいと考えたことがきっかけでした。ここで築いた関係は、いまでも続いています。その結果もあって、2018年には機械学習分野において最難関国際会議といわれるNIPS、ICML、AISTATSに論文が採択されました。
こうした共同研究なども、上司はきちんと説明すれば許してくれますし、むしろ勧めてくれます。会社という枠にとらわれない研究環境は、非常に恵まれていると思います。
そもそも、本当は論文の社外発表ということ自体も、会社としてはデメリットも多いはずだと思います。企業によっては、社外発表に制限をかけるところもあると聞きます。現在注力して投資している技術情報が漏れてしまうリスクもありますし、論文発表で注目された研究員が引き抜かれてしまうリスクもあるからです。しかし、NECはそういうことをせず一人の研究者として国際的なプレゼンスを上げ、キャリアを築くことを大切にしてくれるという考え方が根付いていると思います。
こうした環境のなかで切磋琢磨しながら、実応用への情熱をもってともに研究できる新たなメンバーの加入を、私も心待ちにしています。