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NECプラットフォームズ
量子コンピューティング技術の活用で
複雑な生産計画立案の自動化に成功
~設備稼働率15%向上、計画立案工数90%削減を実現~
- 業種:
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- 製造・プロセス
- 業務:
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- 生産管理
- 製品:
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- その他
事例の概要
課題背景
- 多品種少量生産や製品ライフサイクルの短縮化、さらには半導体部品の需給ひっ迫といった要因により生産計画がさらに複雑化。熟練作業者でも効率的な計画立案が難しくなっていた。
- プリント基板を製造する表面実装(SMT)工程では、1ラインで異なる複数の品種を生産する混流生産を行っているが、部品や設定などを変更する「段取り」はラインを停止して行うため、段取りが増えると生産性の低下を招いてしまう
- 生産計画立案業務が熟練作業者に集中し、属人化していた。AIを含む既存の仕組みでは自動化は難しく、スキルの継承が課題だった
成果
生産計画立案の自動化と複数ラインの同時最適化を実現
量子コンピューティング技術を活用し、膨大な組み合わせパターンから最適解を高速に導くことで、従来は熟練作業者しか担えなかった生産計画立案の自動化に成功。また、複数ラインの同時最適化にもチャレンジ。ライン同士の段取り時間をずらすことで、作業者の負担軽減など付加価値のある計画が出せるようになった。
設備稼働率15%向上、生産計画立案工数を90%削減
生産品種が変わるごとに数百種類ある部品や設備設定を変更する「段取り」を効率化。「いつ」「どの順番」でその日に必要な品種を生産するのが最適か、量子アニーリングによって導き出せるようになった。これにより、段取り工数50%削減、設備稼働率15%向上、生産計画立案工数90%削減を見込んでいる。
スキルフリー化による安定した生産を実現
属人的だったスキルをシステム化することで、熟練した技術を必要としない「スキルフリー化」を実現。
安定した生産を維持できるようになった。特に離職率が高い海外拠点で、人材不足の課題解決にも貢献できる。
導入ソリューション
量子コンピューティング技術により膨大な組合せ問題の超高速処理を実現する「NEC Vector Annealingサービス」を活用。熟練作業者に依存していた生産計画立案業務の自動化・生産性向上を実現した。SMTラインを持つ4事業所(福島、白石、大月、掛川)で実証を重ね、2023年3月より本格的な運用を開始。これにより生産条件の急激な変動、多様化する顧客ニーズにも動的かつ迅速に対応することが可能となる
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事例の詳細
導入前の背景や課題
複雑な生産計画の立案に量子コンピューティング技術を導入
創業以来100年にわたり、ハードウェア機器の開発・生産からシステムソリューションの提供、IoT・AIを活用した新たなソリューションの創出に至るまで、幅広いICTプラットフォームを提供してきたNECグループ。現在は、NECプラットフォームズを中心に次世代ものづくりコンセプト「NEC DX Factory」のもと、先進のデジタル技術を活用した新しいものづくりに挑戦しています。
その背景には、ものづくりを取り巻く環境が劇的に変化している状況があります。多品種少量生産や製品ライフサイクルの短縮化、生産量の変動、コロナ禍以降に顕在化した半導体部品の需給ひっ迫はその代表例です。こうしたことから、複数の品種を日々変わる要望量に応じて迅速に生産する必要があります。
そうした中で生産性を上げるためには、品種が変わるごとに部品を交換したり設備設定を変更したりする“段取り”の効率化が不可欠です。段取りは、「『いつ』『どの順番で』その日に必要な品種を生産するのか」の組み合わせによって、かかる時間は大きく変わってきます。段取り自体は付加価値を生み出すわけではないため、その時間をいかに短くするかが競争力向上に向けた重要なポイントとなります。
従来は生産工程を熟知する熟練作業者が、変動に応じて段取りを最小化するための生産計画を立案していました。しかし、多品種少量化や製品ライフサイクルの短縮化が加速し、組み合わせが複雑になると、熟練作業者でさえも計画立案が困難な状況になり、生産性低下を招く可能性があります。
そこで、さまざまな方法を検討し、最終的にNECプラットフォームズが着目したのが量子コンピューティング技術です。量子コンピューティングは、従来のコンピュータとは全く違う新しい仕組みで動作し、既存の手法では膨大な時間を要する問題を超高速に解決する技術です。同社が導入したシステムは、量子コンピュータの手法の1つであるアニーリング方式の技術をスーパーコンピュータに適用することで、大規模な組合せ最適化問題の超高速処理を実現する「NEC Vector Annealingサービス」です。
選択のポイント
教師データがなくても超高速に正解を導けることが導入の決め手に
同社はNEC Vector Annealingサービスの導入以前に、AIの一種である「機械学習」の導入を検討したことがありました。しかし、AIの学習プロセスに欠かせない「教師データ」がそろわないため、導入を断念せざるをえませんでした。
「もちろん、熟練作業者が立案した生産計画のデータはあるのですが、生産メニューのパターンが大きく変わってしまった場合は精度が悪化し、再学習を行う必要が出てしまうと考えました」とNECプラットフォームズの重岡 雅代氏は語ります。
NEC Vector Annealingサービスをベースに検討を重ね、最終的に同社が構築したのが、熟練作業者に依存してきた生産計画立案プロセスを一般化・汎用化したモデルです。
まず福島(福島県福島市)事業所を舞台とし、計画立案が複雑な電子部品の表面実装(SMT ※1)ラインに同モデルを適用。2019年9月から2020年2月まで実証実験を実施しました。ここでは熟練作業者が立案した生産計画とNEC Vector Annealingサービスが導き出した生産計画を、過去データと比較する形で検証が行われました。
- ※1電子部品の表面実装…電子部品をプリント基板に実装すること
結果は、期待を上回るものでした。具体的には、これまで熟練作業者が毎日1~2時間かけて立案していた生産計画を、計算時間はわずか数秒、データの準備や人による結果確認などの付帯作業を入れても10分程度と大幅に短縮したのです。「熟練作業者が立案した計画は精度が高く、最適解に近いものだったので、それと同等以上の結果が出たことに驚きました」と重岡氏は評価します。
この成果を受けて同社は、NEC Vector Annealingサービスで構築した生産計画立案モデルを福島事業所のほか、白石(宮城県白石市)、大月(山梨県大月市)、掛川(静岡県掛川市)の各事業所にも展開。この計4つの事業所で繰り返し実証とチューニングを重ねながら、モデルの精度を高めてきました。
導入後の成果
複数ライン×混流生産では難しかった高効率な生産計画立案に成功
「実際の現場では複数ラインでの混流生産※2を行っており、ライン間の作業者や治工具などのリソースまで考慮する必要があります。当然のことながらパラメータの組み合わせはさらに膨大な数となり、熟練作業者でも最適な計画の立案は難しくなります。
しかしこれを解くことで、人手が必要な段取り時間の重なりを短くしたり、同時に生産できない製品の生産中断時間を減らしたりと、これまで実現できなかった高効率な生産計画立案に成功。最適化のスコープを広げていくほど全体コスト削減につながるという新たな価値を得ることが出来ました」(重岡氏)
この成果を受けて同社は、2023年3月より4事業所のSMT工程において同モデルを本格導入することを決定しました。精度を高めてきた生産計画立案モデルは、現在、段取り工数の50%削減、設備稼働率の15%向上および生産計画立案工数の90%削減が見込まれるまでのレベルに達しています。
生産条件の急激な変化に素早く追従した生産計画立案を可能にするとともに、属人的だったスキルをシステム化することで、熟練した技術を必要としない「スキルフリー化」を実現したことも大きなポイントとなっています。
同社は今後、4事業所と同様にSMTラインを持つタイ工場への同モデルの展開を進めていく予定です。もともと人材の入れ替わりが激しい海外拠点では、なかなか熟練工が育たないという問題があり、安定した生産活動を維持するためにも生産計画立案の自動化が喫緊の課題となっているのです。
将来的にはサプライチェーン全体のさまざまな工程・業務の最適化を視野に、量子コンピューティングの活用拡大を進めていく考えです。「ものづくりの現場以外でも、解決できていない組合せ最適化問題※3は幅広く残っています。こうした領域でも量子コンピューティングを活用することで、さらなる生産性最大化・棚卸最適化へつなげていきます」と重岡氏は今後の取り組みを見据えています。
- ※2混流生産・・・異なる複数の品種を同一ラインで生産する方式のこと
- ※3組合せ最適化問題・・・膨大な選択肢からベストな選択肢を選び出す問題のこと
NEC担当スタッフの声
熟練作業者でも難しい複数ラインの同時最適化にチャレンジ
生産計画で難しいのは、数百のオーダーの中から「当日加工すべき製品を選択する問題」と、どの順番で加工するのが効率的かを求める「順番決め問題」の2つです。
どちらも量子コンピューティング技術が得意とする問題で、NECが独自に開発したアルゴリズムとSX-Aurora TSUBASAが搭載しているベクトル技術によって、膨大な組み合わせの中から効率且つ高速に正解を導き出すことができました。
もっとも困難がなかったわけではありません。NECプラットフォームズのSMTラインに導入する過程では、まず熟練者の頭の中にあるさまざまなルールを引き出し、試行を繰り返す必要がありました。この作業は苦労を重ねましたが、試行錯誤の中から複数ラインの生産計画を同時に最適化するという現場ならではの提案をいただき、チャレンジすることにもつながりました。
結果として、当初の目的であった段取りが最短になるだけでなく、ライン同士の段取り時間をずらすことで作業者の負担も軽減するといった、より付加価値の高い生産計画を自動的に立案できるようになりました。
企業プロフィール
NECプラットフォームズ株式会社
所在地 | 〒101-8532 東京都千代田区神田司町 2-3(東京本社) |
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創業年 | 1918年(日本電話工業株式会社として大阪で設立) |
事業内容 | ICTシステム機器の開発、製造、販売、設置、保守およびシステムソリューション |
資本金 | 103億3100万円 |
売上高 | 3175億円(単独2022年3月期) |
従業員数 | 7010名(単独2022年3月末現在) |
URL | https://www.necplatforms.co.jp/ |
事例紹介動画
量子コンピューティング技術で実現!生産計画立案の自動化~NECプラットフォームズ(2023年3月公開) [02:56]
この事例の製品・ソリューション
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(2023年3月31日)