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NECフィールディング

配送計画に量子コンピューティングを適用し
ベテラン社員が2時間かけていた業務を12分に短縮

業種:
  • 製造・プロセス
  • 運輸・物流
業務:
  • 物流
製品:
  • その他
ソリューション・サービス:
  • 共通業務/その他

事例の概要

課題背景

  • どこに、どの順番で届けるか。保守部品の配送計画は非常に複雑でベテラン社員頼み
  • 条件の組合せが膨大でAIやスーパーコンピュータを使うだけでは配送計画の立案に時間がかかりすぎる
  • 豊富な経験を持つベテラン社員は貴重な人材。配送計画以外の業務でも活躍してほしい

成果

配送計画の立案時間短縮

量子コンピューティングで配送計画を自動生成でき、精度もベテラン社員とほぼ同じ水準となったことで、業務の大幅な短縮に成功。前日までに受け付けた配送依頼の計画業務を2時間から12分に短縮できた。

導入成果を最大30%の効率化にまで拡大

今後、量子コンピューティングの大量・高速計算を活かし、さらにチューニングを重ね、緊急発注にも対応できるように適用範囲も拡大すれば、最大30%の業務効率化が見込める。

限られたベテラン社員にほかの業務でも活躍してもらう

計画業務を自動化したことで、豊富な経験を持つ貴重なベテラン社員にはほかの業務でも活躍してもらえるようになった。運用保守サービスのさらなる価値向上が期待できる。

導入ソリューション

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NECフィールディングの量子コンピューティング活用イメージ

保守サービスでの複雑な条件の保守部品要求を満たす配送ルートの組合せは1日だけで10の753乗にも及ぶ。これまでは、前日までに受け付けた配送依頼を、ベテラン社員の裁量により人手で2時間かけて配送計画を立案していた。今回導入したアニーリングマシンにより、ベテラン社員とほぼ同じ水準の配送計画業務を12分に短縮した。

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事例の詳細

導入前の背景や課題

NECフィールディング株式会社
取締役執行役員常務
山崎 正史

ベテラン社員の「職人の技」に依存しない新たな方法を模索

NECグループの一員として、サーバや医療機器、工場設備など、ICT領域から非ICTまで幅広い機器に対する運用保守サービスを提供しているNECフィールディング。全国に展開する約360の拠点網と24時間・365日稼働の体制で、お客様が利用する機器の稼働、ビジネスの継続を支えています。

運用保守サービスは、スケジューリングされた定期メンテナンスと、機器の故障のようなトラブル対応に分けられます。後者は、いわば緊急事態。いつ発生するかわからないトラブルに柔軟かつ迅速に対応しなければなりません。

対応力を強化するため、NECフィールディングでは長年、さまざまなチャレンジを行ってきました。しかし、克服できていない課題もありました。立ちはだかったのはベテラン社員の「職人の技」への依存です。

機器故障への対応依頼があると、エンジニアの派遣を調整すると同時に、保守部品の配送と故障部品の回収を手配します。どこで、どのような故障が発生しているかは毎日違いますから、どの保守部品を同じ車に積み、どのようなルートと順番で届けるか、配送計画はその都度立てなければなりません。エンジニアの到着に合わせた配送時刻、数百もの配送場所、約15万点ある部品の種類、そして、軽車両やバイクといった配送手段などを考慮すると配送計画の組合せは何と10の753乗にもおよび、AI(人工知能)やスーパーコンピュータを使うだけでは配送計画の立案に時間がかかりすぎます。

「ベテラン社員は、この膨大な組合せに『距離は遠くても、こっちを通った方が早い』『この曜日は、この道の渋滞が多い』といった経験や勘に基づいて、前日の内に最適な配送計画を立ててきたわけです。そのため、この業務の後継者を育成するのは非常に困難。ベテラン社員の職人技に依存しない新たな方法を模索していました」とNECフィールディングの山崎 正史氏は言います。

選択のポイント

量子コンピューティングに課題解決の活路を見出す

課題解決のために同社が活用したのが量子コンピューティングです。

近年、話題に上ることが多い量子コンピューティングですが、最大の特長は圧倒的な計算能力。従来とは異なる方法で単純な計算パワーだけではスーパーコンピュータでも膨大な時間がかかるといわれるような処理を超高速に実行することができます。

中でも先行して実用化が進んでいるアニーリングマシンは、膨大な条件から最適な組合せを導く計算が得意。まさにNECフィールディングが直面していた配送計画の課題解決に最適なテクノロジーでした。

「最適な方法がなかなか見つからず苦慮していたところ、アニーリングマシンなら解決の可能性があることを知りました。ドライバー不足、コスト上昇、カーボンニュートラル対応など、物流業界が直面している多くの課題を解決するためにも、この技術の実用性を確かめておきたい。そう考えてNECと共にチャレンジすることを決めました」と山崎氏は話します。

導入後の成果

2時間かかっていた計画業務を12分に短縮

アニーリングマシンの活用によって、同社は配送計画を自動生成できるようになり、業務の大幅な短縮に成功。「2時間かかっていた計画業務を12分に短縮できました。生成された計画を前任者であるベテラン社員もチェックしていますが、ほぼ同じ水準だと高く評価しています。中には『私たちには気付けなかったルート案もある』と新しい発見につながったものもあります」と山崎氏は話します。

今後は、さらにチューニングを重ね、適用範囲も前日の配送計画だけでなく、当日発生した緊急性の高い配送計画まで拡大すれば、稼働する車の数や走行距離、コストをさらに削減し、最大30%の効率化が見込めると考えています。もちろんCO2の削減や環境負荷の低減にもつながります。

「アニーリングマシンには、ベテラン社員にヒアリングを重ねて、彼らの豊富な経験や勘も計算条件に組み込んでいます。例えば道路の混雑状況など、これまで属人的で暗黙知でしかなかったノウハウを形式知化できたわけです。これにより、貴重なベテラン社員には配送計画以外の本来行っていただきたい業務で活躍してもらえる環境が整いました。アニーリングマシンによって実現した新たな体制を活かし、運用保守サービスのさらなる価値向上に取り組みます」と山崎氏は意気込みを語りました。

NEC担当スタッフの声

NEC
量子コンピューティング事業統括部
シニアディレクター
泓 宏優

手応えを足がかりに量子コンピューティングの実用化を加速

現在、NECは実際の量子素子によって実現する量子コンピュータおよび、量子コンピューティングの開発、実用化に向けた取り組みを積極的に進めています。

量子コンピューティングとは、本物の量子コンピュータに加え、“疑似量子”と呼ばれる量子のふるまいを取り入れたソフトウェアなどによって既存のコンピュータの処理を高速化する、いわば広義の量子コンピュータ。NECフィールディング様が利用されたアニーリングマシンは、その1つです。

アニーリングマシンは、組合せが膨大で、これまでは現実的な時間で導くことが難しかった「組合せ最適化問題」を解決します。配送計画の最適化、保守員のスキルや仕事を踏まえた最適な人員スケジュール、重量や大きさが異なる荷物の効率的な積み込み、納期、作業、コストなどさまざまな条件を踏まえた最適な配送計画を、NECフィールディング様と共に実現することができました。

今回のプロジェクトに取り組むに当たり、私も倉庫に足を運び、実際に配送計画を行っている現場を見学しました。感じたのは、ベテラン社員の方々の豊富な経験と勘、そしてなにより「度胸」のすさまじさ。アニーリングマシンで、それに少しでも近づくことがプロジェクト当初の目標でした。その目標を達成し、さらに大きな効率化の可能性も見えてきたことにNECは大きな手応えを感じています。その手応えを足がかりに、これからも量子コンピューティングの実用化、さまざまな社会課題の解決にチャレンジして参ります。

企業プロフィール

NECフィールディング株式会社

本社所在地 東京都港区三田一丁目4番28号(三田国際ビル)
資本金 96億7010万円
従業員数 4,524名(2022年3月末/単体)
概要 ICTシステムのコンサルティングから設計、構築、保守、運用に至るICTシステムのライフサイクル全領域をカバーしたワンストップサービスを提供。さらに医療・介護機器、その他各種機器の設置、修理・保守サービスを提供し、お客様のシステムをトータルにサポートする。
URL new windowhttps://www.fielding.co.jp/

NECフィールディング株式会社

事例紹介動画

「量子コンピューティングを活用した配送計画の最適化」についてご紹介します。

関連セミナー情報

「物流配送の最適化を実現した事例」についてご紹介します。

この事例の製品・ソリューション


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(2022年10月18日)

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