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「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2019」基調講演

Digital Inclusion
~デジタルのチカラで、ひとりひとりが輝く社会へ~

創設120周年を迎えたNECのビジョン

NECは今年、創設120周年を迎えました。1899年に日本初の外資系企業としてスタートしたNECが手掛けた最初の事業は、電話機の輸入でした。1964年には世界初の衛星同時中継を実現し、その後本格的に人工衛星事業に乗り出しました。それが現在も進行中の小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトにつながっています。また、現在のインターネットの基盤となってる海底ケーブル敷設などに取り組む一方で、AIの開発も早い時期から進めてきました。その代表例が数々の世界No.1を取得している生体認証です。

NEC代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 新野 隆

現在、NECは未来の社会として「Digital Inclusion」を掲げています。デジタルトランスフォーションが進み、デジタル技術が社会のすみずみまで浸透した社会の姿がすなわちDigital Inclusionです。Digital Inclusionが進んだ社会では、情報の見える化と分析が進み、世の中のさまざまな仕組みが最適化されることになります。その中で、人々は性別、年齢、人種、障がいの有無などに関係なく多様な能力を発揮することができるようになるでしょう。そのような社会において「安全・安心・効率・公平」を守ること。そして、「人が生きる。豊かに生きる」社会をより確かなものにしていくこと。それが私たちNECの役割であると考えています。

NECは、2014年に7つの社会価値創造テーマを策定しています。Digital Inclusionを推し進めるに当たって、ベースとなるのはそれらのテーマです。7つのテーマに基づき、NECが保有する広範な資産を生かして、さまざまな社会課題の解決を目指していきます。

具体的な事業分野を見れば、NECが取り組む事業は大きく二つに分けられます。安全・安心で便利な社会基盤を構築し、人々の生活を支え、生活をより豊かにするサービスの実現を目指す「NEC Safer Cities」、 そして、人とモノとプロセスを産業の枠を超えてつなぎ合わせることで新たな価値を生み出す「NEC Value Chain Innovation」です。

NECが目指す社会価値創造

SDGsの目標達成に寄与するために

7つの社会価値創造テーマは、SDGsで掲げられている17の目標とそれらを達成するための169のターゲットとさまざまな部分で共通しています。つまり、NECの活動はSDGsの目標達成にも大いに寄与するものであるということです。その目標をテクノロジーによって実現する取り組みが、現在アフリカで進められています。

生体認証技術によって幼い命を救いたい

NECバイオメトリクス研究所 主任研究員 幸田芳紀

私はこれまで、指紋認証をはじめとする生体認証技術に20年以上携わってきました。「国民IDシステム」は、その中でもとりわけ多くの国で活用されているテクノロジーです。例えばインドでは、10億人にのぼる国民一人ひとりの生体情報の登録や管理にこの技術が使われています。

NECバイオメトリクス研究所 主任研究員 幸田芳紀

世界には法的人格をもたない人々がおよそ11億人いると報告されています。出生証明や出生登録から始まる法的人格がなければ、教育、医療、福祉といった公的サービスを享受する機会を失ってしまいます。

とりわけ乳幼児にとって、法的人格の有無は生存に関わる大きな問題です。5歳未満で亡くなる子供の数は全世界で560万人。そのうち258万人は生後1カ月以内に亡くなっています。それらの多くは、適切なワクチン接種の機会さえあれば失われずに済んだ命です。しかし出生登録が不十分なため、誰がいつどのワクチンを受けたのか、あるいは受けるべきなのかがわからず、ワクチンが子供に届けられないケースが非常に多いのです。

いま世界で起きていること

乳児は自分の名前を言うことも、IDを提示することもできません。しかし、生体認証の仕組みがあれば、身体のみで本人であることを証明することができます。それによってワクチン接種が可能になるので、幼くして命を落とす可能性が大きく下がります。私たちが新生児登録に生体認証の仕組みが必要であると考えたのはそのためです。

現在、全世界の5歳以下の子供の27%は出生登録されていないと言われています。SDGs16.9では『2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。』ことを目標に掲げています。NECは、その目標達成に寄与すべく、技術的に難しいとされてきた新生児の認証への挑戦を何年にもわたって続け、生後2時間を含む生後24時間以内の新生児の微細な指紋の撮像と照合に世界で初めて成功しました。この技術を実用化し、多くの国に出生登録の仕組みを提供することによって、世界中の子供が平和で公正な社会で暮らせるようにしたいとNECは考えています。そのための取り組みをこれからも続けていきます。

生体認証技術で国際課題の解決へ

社会に受容されるテクノロジーを

テクノロジーによる社会課題の解決を目指すには、テクノロジーが社会に受け入れられること、すなわち「社会受容性」が重要になります。とりわけ、AIのような新しいテクノロジーは、人々の理解と納得のもとで活用されていかなければなりません。

NECは社会に受容されるAIの提供を目指して、この4月、「NECグループ AIと人権に関するポリシー」を発表しました。このポリシーは、AIの社会実装を進める際に、プライバシー保護や人権尊重を全社的に強化することを謳ったものです。これはまた、世界に率先してわが国が提唱している「人間中心のAI」を具体化する取り組みでもあります。

社会に受容されるAIの提供に向けて

このポリシーを踏まえてNECが注力しているのが「ホワイトボックス型AI」と呼ばれる説明可能なAIの技術です。NECはAIの技術開発を二つの方向性で考えています。圧倒的な効率化が実現する一方で、発見したルールを説明できない「ブラックボックス型AI」と、発見したルールを説明可能にし、人への示唆を高度化する「ホワイトボックス型AI」です。私たちは、とりわけ後者の技術を磨いていくことがAIの社会受容性につながると考えています。

NECは社会課題解決を2つの面で捉え、AI技術を進化させる

ほかにも、量子コンピュータ、5G、パーソナルデータの利便性とセキュリティを同時に実現するサイバーセキュリティ技術などのテクノロジーによって、NECは、Digital Inclusionを今後いっそう推進していきます。

社会価値を創造するためのさまざまな取り組み

デジタル技術による社会価値創造の実例をいくつかご紹介しましょう。

NECは2018年、国連の電子政府ランキング2018で世界1位を獲得したデンマークのトップITベンダーであるKMDホールディングを買収しました。これによって、世界中で進む「行政のデジタル化」を支える取り組みが大きく前進したと私たちは考えています。

また近年、全国のコンビニエンスストアが新しい社会インフラに位置づけられています。災害時などにはコンビニが物資提供の重要な拠点となるからです。しかし、コンビニ業界における労働力不足は年々深刻となっており、営業時間を短縮する店舗も出てきています。そこでNECは、顔認証AIの技術を用いた入店管理、自動釣銭機能に対応した完全セルフレジ、店舗状況をリアルタイムで確認できるクラウド型カメラサービスなどを提供し、従業員が不在となる時間帯にも安心してストレスなく買い物ができる仕組みを提供しています。

それだけではなく、快適で心地よい顧客体験を生み出し続ける店舗の実現に向けた取り組みも進めています。店舗を支える仕組みとして、AI・IoTを活用した発注提案や設備の稼働管理を導入すると共に、お客さまのお買い物体験の向上として、生体認証を活用したウォークスルーでの入店やキャッシュレス決済を実現しています。これらを通じて、お客さまと店舗の従業員にやさしい店づくりを実現しています。

さらに新しい取り組みとして挙げられるのが、コンビニATMの「次世代化」です。現在実証実験が進んでいる「コンビニ第4世代ATM」は、顔認証によって口座開設や引き落としができるまったく新しいATMです。このATMはさらに、AIによって故障予測を行い、トラブルを未然に防ぐことも可能です。振り返れば、金融自由化にともなってコンビニ店舗内に設置可能になったATMを最初に提供したのはNECでした。そのATMをさらに進化させるプロジェクトが現在進んでいます。

デジタルを活用した新たな生活サービスの創出

デジタル技術によってさまざまなものや人がつながる新しい社会

もう一つ、NECが現在注力しているのが生体認証技術を活用した顧客体験の変革です。人々の行動や生活動線を、顔認証を始めとする生体認証技術によってシームレスにつなぐ仕組みづくりを私たちは現在進めています。それがいち早く実現しているのが、国内外の数多くの旅客が利用する空港です。

訪日外国人の数は、2018年末に初めて年間3,000万人を超えました。日本政府は2020年に4,000万人、2030年には6,000万人まで訪日外国人を増やすという目標を掲げています。今後日本の人口が減り労働力が不足していくなかで、増大する出入国の業務をスムーズに行うには、テクノロジーの力が欠かせません。そこで力を発揮するのが、顔認証技術であり、それによって実現したサービスが成田国際空港の「One ID」です。「One ID」は、チェックイン、手荷物預け、保安検査場への入場、搭乗ゲートへの入場のすべてを顔認証だけで可能にする技術です。これによって出入国管理のオペレーションが効率化し、出入国者も煩わしい手続きから解放されることになります。この仕組みは2020年春に実現する予定です。

正確な本人確認とスピーディな搭乗を実現 日本のおもてなしを具現化

さらに和歌山県の南紀白浜では、空港だけでなく、ホテル、各種商業施設、テーマパークなどの施設を顔認証で利用できる仕組みの構築に向けた実証実験を行っています。顔認証システムが地域社会のインフラとなって、安全・安心で快適な観光が実現する。それが私たちのビジョンです。

この7月には、世界最大の航空連合スターアライアンスと顔認証技術を活用した本人確認プラットフォーム「スターバイオメトリクスハブ」の共同開発を行うことを発表しました。アライアンス加盟26社は現在、194カ国1,300カ所以上の空港で毎日1万9,000便以上を運航しています。「スターバイオメトリクスハブ」が実現すれば、手荷物預け、ラウンジ入場、搭乗ゲート入場などの際に必要だったパスポートと搭乗券の提示が不要となり、顔認証による本人確認のみで手続きができるようになります。このサービスも2020年3月にスタートする見込みです。

新しいコンセプト「I:Delight」

以上、デジタル技術によってさまざまなものや人がつながる新しい社会のイメージの一端をご紹介してきました。このような社会を実現するためのNECの新しいコンセプトが「I:Delight」 です。旅行、毎日の通勤、オフィスでの仕事、日常の買い物など、社会生活のあらゆる場面で、デジタル技術を活用し、安全・安心で、効率的で、誰もが利用できる快適な仕組みを実現したい。そんな思いがこのコンセプトには込められています。このコンセプトが実現することによって、すべての人たちが「自分だけ」の体験を楽しむことができるようになる。そう私たちは考えています。

I:Delight 信頼が生み出す自分だけの冒険

NECはこれまでさまざまな「できたらすごい」を実現してきました。これからも私たちは、「できたらすごいを社会に創る」というビジョンのもと、生体認証やAIを始めとする最新のテクノロジーを活用し、多くの企業や研究機関などとの共創によって社会価値を生み出し続けていきます。