サイト内の現在位置

世界デジタルサミット2018(主催:日本経済新聞社、総務省) 講演より

Digital Inclusion
~デジタルのチカラで、ひとりひとりが輝く社会へ~

代表取締役 執行役員社長 兼 CEO
新野 隆

AIは人の能力を超えるが、人が支配されることはない

zoom拡大する
手塚治虫氏のイラストで描いた未来の社会(1979年1月1日朝日新聞広告)

1977年、NECはコンピュータ技術とコミュニケーション技術の融合を意味する「C&C」という新しい概念を発表。この「C&C」が実現する未来の社会を手塚治虫先生に描いていただきました。

40年たった現在、ここで予想したシーンの多くが現実のものとなりましたが、それを裏で支えているのがデジタル技術の進展です。近年、クラウドやビッグデータ、IoTやAIのようにデジタル技術は急速に進展していますが、その先にはAIが人の文明を超える「シンギュラリティ」がくると言われています。

NECでは、シンギュラリティには2つの面があると考えています。ひとつはAIが人の能力を超えることです。これは技術の進歩において必ず「起こる」ことです。もうひとつは、AIが人を支配することです。これについては「起こらない」ですし、NECとしては「起こさない」と考えています。

もちろん技術開発は進めていきますが、それとともに人が過度にAIへ依存せず、意志を持ってAIを使いこなせるよう意識の醸成にも取り組みます。これにより、人の知的創造活動を最大化することで、NECが掲げる「人が生きる、豊かに生きる社会」の実現につながると信じています。

このような将来のシンギュラリティまで見据えた上で、現在のデジタルトランスフォーメーション時代に、NECが提供できる価値にはどのようなものがあるでしょうか。

実世界にはさまざまなデータがありますが、NECは、すでにあるデータに加え、まだデータになっていないものもデータに変えて、見える化を行います。AIのエンジンを活用し、ヒト・モノ・コトに新たな意味性を付加。深い知恵や知識を現実のものにして実世界へ返すことで新しい価値を創造してゆくのです。今回は見える化の代表例であるNECの生体認証ソリューション「Bio-IDiom(バイオイディオム)」と、最先端AI技術群「NEC the WISE」の2つを紹介します。

生体認証で新たな価値を提供する「Bio-IDiom」

Bio-IDiomはNECが2018年4月に立ち上げた生体認証のブランドで、複数の生体認証を組み合わせて新たな価値を創出することを目指しています。現在NECでは、顔認証や指紋認証に加え、虹彩、声、耳の穴の形(耳音響)、指静脈、以上6つの生体認証技術を持っています。指紋認証の分野では2003年から合計8回、顔認証でも2009年から2013年の間に合計3回、それぞれ世界一の評価を獲得しました。また2017年には動画での顔認証、2018年には虹彩認証でも世界一となっています。

デジタルトランスフォーメーションにより社会がますます便利になる一方で、「他人によるなりすまし」などのセキュリティ面での問題が生じます。そこで、NECでは、ヒト自身が持っている生体情報を重要な「鍵」と位置付け、Bio-IDiomを駆使して高度な認証をデジタル世界の入口に構築していきます。

「ブラックボックス型AI」と「ホワイトボックス型AI」を使い分ける

AIについては、実世界を「見える化」「分析」「対処」の3つのプロセスで捉え、社会価値の創造を行っていきます。そして「NEC the WISE」のAI技術群を、お客様のニーズに合わせ最適なソリューションとして提供します。

NECでは、AIの方向性を「圧倒的な効率化」と「人への示唆の高度化」の2つで考えています。「圧倒的な効率化」は、ゴールが定まっている問題に対しAIが迅速に答えを導き出すもので、ディープラーニングを活用して一刻も早く答えが知りたいケースなどがこれに該当します。このようなAIでは判断根拠が問われませんので、NECでは「ブラックボックス型AI」と呼んでいます。速さと正確性が求められるようなAIが得意な作業をAIに任せることで、人は人が本来やるべき創造性の発揮などへ注力できるようになるわけです。

一方、ゴールが定まっていない経営判断や社会課題の解決の際には、「なぜそれを選ぶべきか」という理由(判断根拠)の説明が必要になりますが、このような判断根拠が示せるAIを「ホワイトボックス型AI」と呼びます。人はAIが出したさまざまな示唆に基づき、より高度な意思決定を行うことができるようになります。

ホワイトボックス型AIの事例としては、NECが自ら実践したデジタルマーケティングにおける潜在顧客の予測があります。Webサイト、メールマガジン、セミナーやイベントなど、さまざまな顧客接点から得られた情報を「予測分析自動化技術」で分析。結果に基づいてメール配信を行ったところ、クリック率は従来の10倍以上、キャンペーンの申し込みも4~5倍になりました。

2つめの事例は、アサヒビール様とNECが進めている需要予測です。新しいコンセプトの商品を出したとき、市場でどのような需要行動が起こるかを、過去データなどをベースに「異種混合学習技術」を用いて予測。欠品や不良在庫を減らす取り組みを進めていますが、AIの判断に人の知見を加えることで、熟練の担当者でも難しい新商品の予測についても、人と同等以上に精度を高めることができるのです。

このように、AIが得意なことはAIに任せてしまい、人はやるべきことに集中するとともに、AIによる「人への示唆の高度化」を受けることで、人はこれまで以上に高度な判断を行い、創造性を発揮させることができるようになります。こうした人とAIとの新たな関係を築いていくことで、人の知的創造活動を最大化できるとNECでは考えています。

  • 1
  • 2

次へ