BREAK TIME

山口温泉

暑い盛りに、温泉・・・?　これが意外といいんです。標高の高い避暑地や火山地帯に湧く硫黄泉はまさに夏向きですが、今回ご紹介するのは硫黄系とは少し趣が異なり、甲府盆地の意外な場所からこんこんと湧き出る、ややぬるめの炭酸泉。ミネラル成分がたっぷりで、“浸かって良し、飲んで良し”の日帰り温泉施設について、記してみました。

甲府市の中心部から、5km。中央自動車道 甲府昭和I.C.からだと、約2 km。山口温泉は、「えっ、こんなところに・・・?」 と思うような、ごく普通の住宅街の一角にある入浴施設です。流行りの“絶景”や、“湯治場的情緒”などとは無縁のロケーションですが、この施設の最大の魅力は「泉質」にあります。

甲府盆地の地下には、太古の植物が土砂に埋もれて有機物が堆積し、長い年月の間に炭化した「亜炭(あたん)」という地層が広がっています。山口温泉は、地下水がこの亜炭層を通過してできた温泉（モール泉と呼ばれています）で、植物系の有機物を多く含んでいます。そのため肌触りがまろやかで、まるで上質の化粧水に浸かっているかのような浴感なのです。

約41度の源泉は地下920mから湧出しており、加熱も加水もされず、しかも途中でタンクなどに貯められることもなく、男女別の内湯と露天風呂に注がれています。ですからお湯が極めて新鮮で、すべての湯口で飲用ができます。ひと口すくって飲んでみると、甘みととろみがあり、金気、そして炭酸の混じった味がします。毎分680リットル（1日で約100万リットル !!）もの湯量は県内屈指で、当然ながらすべての浴槽が源泉かけ流し、塩素殺菌なども一切されていません。

薄く黄緑がかったお湯に体を沈めると、やがて体中の産毛に、サイダーのような細かい気泡がびっしりと付いてくるのには驚きです。大量の気泡は湯面に向かってシュワシュワと立ち上り、あまりの泡の多さにお湯が白く濁ってみえるほど。この驚きと独特な浴感を、ぜひACOSユーザの皆様にも体験していただきたい・・・と、「Break　Time」執筆担当は思いました。地元の人は銭湯代わりに利用しているそうですから、まったく羨ましい限りです。

浴槽での温度は37～8度とぬるめで、夏でもじっくりと長い時間、お湯に浸かってリラックスすることができます。住宅地とはいえ、国道20号からも高速道路からも少し離れており、閑静で落ち着いた周辺環境も魅力です。ここ山口温泉は大人がひとりで、または少人数で訪ね、ふだんの仕事や日常から完全に離れて心を沈静させることのできる場所。仲間との大声でのおしゃべりやケータイなどは、くれぐれも慎みたいですね。

山口温泉のオーナーによる、手書きの温泉解説。とにかくわかりやすい。源泉に自信があるからこそ言い切れる、充実の内容。脱衣場に掲示されています。

執筆担当から、ひと言

日本には、すべての都道府県に温泉があるのですが、正直な印象として、温泉のイメージがすぐに浮かぶところと、温泉とはあまり縁のなさそうなところがありますよね。山梨県は、その周辺の長野、静岡、群馬などと比べると、温泉地のイメージがやや希薄（?）なのかもしれません。しかし、今回ご紹介した山口温泉をはじめ、じつは山梨には上質かつ個性的な源泉を保有する施設が相当数あります。桃の収穫期とも重なる夏はもちろん、季節を変えて甲州を訪れ、いろいろ探索してみると、さらに楽みが広がるはず。

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