サイト内の現在位置

研究開発領域のデジタル化とMIの取り組みについて

生産財Value Chainミニセミナー 開催レポート

開催日時:2019年8月29日(木)14:00~17:00
開催場所:NEC本社ビル2階会議室

デジタル技術の進歩とともに、材料の研究開発を取り巻く環境も変化しています。新たな材料を効率よくスピーディーに開発することが求められる中、情報科学が果たす役割に大きな期待が寄せられています。その最たるものが「MI(マテリアルズ・インフォマティクス)」。
そこで、本セミナーでは、MIの取組事例のご紹介を通じて、材料工学と情報科学の融合の現状をお伝えしました。

機能高分子設計のための機械学習とその実践(イオン伝導性などを例として)

早稲田大学
理工学術院 先進理工学研究科 教授
小柳津 研一氏

第一部は、早稲田大学理工学術院教授の小柳津研一氏が、イオン伝導性などを例に、機能高分子設計のための機械学習とその実践について講演しました。

データ科学を必ずしも専門としない材料開発・高分子合成の研究者の立場として、MIに対してどのようなアプローチが可能か、機能性高分子材料を例に、データ収集から機械学習までを実践した例を報告しました。
今、電気自動車などに搭載するリチウム電池の開発競争が激化する中、全固体電池が最強の存在として脚光を浴びています。そのキーを握るのが、全固体リチウムイオン電池用電解質の伝導性をいかに高めるか。小柳津氏のアプローチは、その研究開発を大いに加速するものといえます。

小柳津氏が行ったアプローチは、数百本の公開学術論文という既知の情報から、分子構造や複合比率、誘電率、各種相互作用といった1万以上のデータを抽出し、それらの組み合わせがどういったイオン伝導度やイオン伝導の活性化エネルギー、リチウムイオン輸率になるかを機械学習するモデルを開発。次に、所望する予測物性を示す化合物をコンピュータ上で設計するという手法を取りました。これにより、従来は数カ月から数年かかっていた新たな構造の有効性の実証が、1~2週間でできるようになったといいます。
小柳津氏は、早稲田大学や高分子材料の関連学会における動向も併せて報告し、講演を結びました。

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用したスピン流熱電変換材料の開発

日本電気株式会社
システムプラットフォーム研究所
石田真彦

続いて、NECシステムプラットフォーム研究所の石田が、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用したスピン流熱電変換材料の開発について発表を行いました。

光デバイスのレーザーの冷却や、身近なところではホテルに設置された小型冷蔵庫やローラー美顔器などに用いられる熱電変換材料。そのターゲットとして、電子の持つ重要な性質であるスピンを活用してエネルギー変換を行う新しい原理に基づいた「スピンゼーベック効果」に着目しました。スピンを活用するメリットとして、素子形状がシンプルになり、低コスト化やシートやブロック、管など多様な形状に加工することが可能になる点が挙げられます。

そのための最適な材料開発の効率化がテーマとなり、研究者が考え、実験し、評価し、結果をまとめ、また考えるという一連のサイクルを、機械学習やロボティクスなどを用いて多重化・自動化する戦略が取られました。その手法として、網羅的にサンプルを作製し実験を行う「コンビナトリアル実験」や、理論の面からも予測モデル構築を試みる「コンビナトリアルシミュレーション」などについての説明を行いました。

次に、それによって生じた膨大なデータをいかに効率的に処理するかが課題となり、異種混合学習アルゴリズムを用いたパラメータ抽出や、木探索型ベイズ最適化による探索を行ったことについて説明しました。
こうした効率化により、研究者は実験・分析結果を見ることに時間が割けるようになり、新材料開発における新たな気づきを促進する効果が確認できました。

AI活用を成功させるキーテクノロジー

日本電気株式会社
AI・アナリティクス事業部
青木 勝

最後は、NECのAI・アナリティクス事業部の青木勝が、AI活用を成功させるキーテクノロジーとしてWhiteBox型AI「異種混合学習技術」についての説明を行いました。
まず、今Explainable AI(XAI)が注目されている理由について言及。これまで、“品質管理”や“安全な街づくり”などゴールが定まった問題について、圧倒的な効率化を実現させるためにAIやロボットが用いられてきました。今後は、“経営判断”や“対人ケア”といったゴールが1つではない問題に対し、人間の判断を支援するために判断の根拠を説明できるAIが求められていることが説明されました。このXAIをNECではWhiteBox型AIと呼び、既に実用化しています。

AIにおける“精度”と“解釈性”は相反する要望です。NECは、精度は低いが、解釈性の高い従来の統計解析手法を高精度化することで、異種混合学習技術を開発しました。異種混合学習技術は、多種多様なデータから複数のデータのパターンを自動的に場合分けし、規則性を見つけ出すNEC独自のアルゴリズムです。解釈性の高い予測モデルを自動生成する特長について説明。これまで300件以上の導入実績があることを報告し、小売業の需要予測や従業員の健康管理に活用されている事例を紹介しました。
次に、さらに、品質要因分析に適用できる技術として、NEC独自のWhiteBox型AI「インバリアント分析技術」を説明。これは、2点のセンサー間の相関性を分析し、正常時と異常時のモデルを比較して、要因抽出を行うアルゴリズムです。複数の特徴量抽出と複数の特徴量選択のアルゴリズムを同時に実行させることで、より精度の高い要因分析が実現できたことに言及しました。

最後に、NECからのご提案として、AI活用ライフサイクルにおける検証フェーズの重要性を指摘。その効果検証サービスに触れ、発表を終えました。

データ収集・データ分析の双方で進むAI活用の取り組み

以上、3つのセッションでのAIを活用したMIにおけるデータ収集・データ分析の取り組み事例や「異種混合学習技術」の効用についての報告を通じて、改めてAI活用の意義が共有されたことと思われます。各社様の参考になれば幸いです。

関連サイト