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在庫最適化を支えるDXの潮流~需要予測はマネージできる~

生産財Value Chainミニセミナー 開催レポート

開催日時:2019年8月28日(水)14:00~17:00
開催場所:NEC本社ビル2階会議室

今、素材業を取り巻く環境は、多品種少量生産へのシフトやリードタイム短縮要求、サプライチェーンのグローバル化に伴い、複雑化の一途。従来以上に、市場の変動を正確に捉え、需給調整の最適化を図る必要があります。
そこで、本セミナーでは、在庫最適化に向けた計画業務の重要性や在庫最適化に関する最新の取組事例、システム導入の進め方についてご紹介しました。

複雑化するサプライチェーンにおける適正在庫の在り方

株式会社日本能率協会コンサルティング
サプライチェーン革新センター長
シニアコンサルタント
茂木龍哉氏

3部構成のトップは、茂木龍哉氏が「複雑化するサプライチェーンにおける適正在庫の在り方」を4ブロックに分けて説明しました。

  1. パラダイムシフト-求められる新たなSCM戦略発想
    多品種少量・変種変量による経営スピードの変化やキャッシュフロー経営へのシフトによる企業・業績価値の変化などのSCMの背景を挙げ、複雑化する一方のサプライチェーンをマネージする必要性を確認。その上で、“メーカー論理の計画生産”から“顧客志向のプル型生産”へのいったパラダイムシフトの必要性に言及しました。

  2. SCM改革-5つの視点・解決方向・事例
    (1)事業・企業特性に合わせた機能のあるべき姿設計、(2)しくみだけでなく組織の責任・役割分担の設計、(3)評価指標の設定、(4)需要予測の精度向上がすべての原点、(5)変化に柔軟に対応する仕組み、という5つの視点や解決方向について説明しました。

  3. キャッシュフロー向上に向けた在庫適正化の考え方と進め方
    SCMの狙いであるキャッシュフローを最大化させるノウハウや在庫の捉え方などについて「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」や「在庫MAP」、事例などを用いた詳しい説明がありました。

  4. 生産/在庫管理の仕組み構築・システム導入に向けて
    システム導入における実態や問題認識、「業務改革&システムの一体化」が求められていることについて触れられました。
    2000年前後に起きたSCM・ERP導入のブーム時には、コストダウンを基軸としたシステム導入が行われ、結果として業務との不一致や企業競争力の弱体化といった失敗が見受けられるケースが存在しましたが、改めてIoT化やDXが求められる今、同じ失敗を繰り返さないためにも、システム導入が付加価値を生むことが求められています。業務改革とそれに合ったシステムを構築していくことが、在庫最適化にも重要ということが紹介されました。

NECの生産拠点における需要予測の取り組み

日本電気株式会社 IMC本部 鷲田 梓

次に、NECの社内向けデータ分析部門であるBICC機能にてデータサイエンティストを務めた鷲田が、AIとエスノグラフィ調査を用いたNECの生産拠点における需要予測の取り組みについてご紹介しました。

NECのBICC(ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシー・センター)では、データ活用をNECグループ内に浸透させるミッションの一環として、NECプラットフォームズ甲府事業所において部品在庫適正化を目的に、AIを活用した製品需要予測の実証実験に取り組みました。

甲府事業所で生産するPCサーバは、お客様の仕様に応じて1台ずつ生産する受注生産方式を採用。10万通り以上の組み合わせで、受注から最短4営業日で出荷しています。これを実現するためには一定の部品在庫が必要となり、常に製品需要の“先読み”をしてサプライヤーから部品を調達しています。この製品需要の先読み精度向上が、自社の部品在庫適正化や、注力すべき業務への人的リソースのシフト、お客様やサプライヤーとの良好な関係構築に不可欠な課題となっており、今回AIを活用した製品需要予測に取り組むことになったと背景を紹介しました。

そして実証実験では、過去売上実績や経済指数などのデータから、NECの異種混合学習技術を用いて製品需要予測AIを作成したことを説明。「課題発見」「仮説立案」「仮説検証」という段階にわけ、課題発見フェーズにおいては、経営者層や販売部門、生産現場それぞれにヒアリングし“真の課題”を把握。仮説立案フェーズにおいては、業務を内側から理解することを目的として、従来は文化人類学で用いられているエスノグラフィ調査を実施し、調査者である鷲田自らが生産管理の業務を体験・観察したことが紹介されました。さらに仮説検証フェーズにおいては、予測精度の検証だけでなく、業務で使えることとその効果の確認まで行うべきと説明。効果の確認として、机上検証において金額ベースでのシミュレーションを実施し費用対効果を考えた上で、2018年に実装フェーズへ進んだと説明しました。

実装後は、組織間の連携体制が大切であり、現在はより製品需要予測AIを活用できるよう、体制強化中との紹介がありました。

在庫適正化に向けたシステム導入の勘所

日本電気株式会社 コンサルティング事業部 井上和也

最後に、NECコンサルティング事業部エキスパートの井上が、在庫適正化に向けたシステム導入の勘所について説明を行いました。

サプライチェーン上の在庫削減のセオリーとして、まず在庫はどこにどういう理屈で存在しているかの要素に分解する必要性を説明。

次に、DX(需要予測AI活用)の可能性について言及しました。「AIとは、与えられたデータの範囲内で最適解を見出すツール」と定義した上で、サプライチェーンのどの範囲に適用するのかがポイントであると指摘。その範囲には「プロセス(部門)」と「時間」の2つがあります。

前者では、例えば特定部門として販売部門に適用すれば、予測精度向上分の安全在庫削減や計画立案業務の効率化に繋がります。複数部門を横断して適用させると、需要予測によって先々までの生産を確定することができ、在庫削減やリードタイム短縮だけでなく、操業度の安定化やそれによる品質安定などメリットは広がります。

後者では、直近における余剰在庫や欠品の排除、
中期における生産調整・平準化の実現、
長期における設備などの投資判断や収益管理への適用可能性が広がります。
次に、DXの世界で勝つための目指すべき姿について説明しました。標準化・統一化された業務とシステムにより生まれる良質なデータが競争力の源泉になると指摘。反対に、販社と工場のしくみがバラバラなどのありがちな現状にも言及しました。

最後に、NECにできることを説明。業務プロセス標準化や業務基盤の確立、展開と定着、拡張と高度化といった各フェーズを網羅するソリューションを擁し、お客様の課題に向き合った支援を行っていることについて触れました。

需要予測をマネージするために必要なプロセス改善

以上、3つのセッションを通じて、在庫最適化の実現に向けて、真の課題の正確な把握、改善策の立案および実装、検証という基本的なプロセスが改めて重要であるということと、AI活用などDX導入によるメリットや注意点を俯瞰しました。お客様の参考になれば幸いです。