NEC、NTTドコモ・和歌山県・和歌山県立医科大学による5Gを活用した遠隔診療の実証試験に貢献
~28GHz帯対応の超多素子AAS基地局システムを提供~
2018年3月26日
日本電気株式会社
NECは、株式会社NTTドコモ・和歌山県・和歌山県立医科大学が実施した5Gを活用した遠隔診療の実証試験に、5G向け基地局システムの提供を通して貢献しました。なお、本試験は、総務省の5G総合実証試験(注)の一環として実施されました。
背景
和歌山県は山間部が多く、高い専門性を有する高度医療機関に通うのに時間を要する過疎地が多数存在します。また、過疎地の診療所では医師の数が少なく、専門以外の診察も少なくありません。このため、和歌山県は県内13医療機関と和歌山県立医科大学を接続する遠隔医療支援システム(インターネット回線を利用したテレビ会議システム)を構築し、山間部の町であっても専門医によるアドバイスが受けられる環境を整備しています。しかしながら、画像が不鮮明、画像送信の遅延といった課題がありました。
試験の概要と成果
和歌山県立医科大学と直線距離で約30km離れた日高川町の国保川上診療所を5Gおよび光ケーブルで接続し、5Gを活用した遠隔診療サービスの実現に向けて検証を行いました。このうちNECは、28GHz帯対応の超多素子AAS(Active Antenna System)基地局システムを設置し、5Gの無線ネットワークを構築しました。
本試験では、5Gによる大容量伝送により、和歌山県立医科大学地域医療支援センターと国保川上診療所の間で4Kテレビ会議システムによるリアルタイムでのコミュニケーション、4K接写カメラで撮影した患部画像、高精細なエコー動画やMRI画像の共有を実現しました。和歌山県立医科大学および同付属病院からは、皮膚科、循環器内科、整形外科などの医師が試験に参加しましたが、高精細大画面モニタを通して皮膚の質感が伝わりやすくなり、また問診時のリアクションや表情に臨場感が増すことで、その場にいるような感覚でのコミュニケーションが可能となり、診療の進行をサポートし、医療従事者や患者様の負担の軽減を実証することができました。
拡大する実証試験系構成イメージ図
試験参加者のコメント
NTTドコモ 先進技術研究所 5G推進室 主任研究員 増野 淳氏
「5Gの超高速通信は、エンターテイメント分野で注目を集めていますが、今回の高精細映像伝送を駆使した遠隔診療の試みは、医療分野における地域格差の是正に寄与し、社会的課題の解決にも役立つと感じています。今後も、ICTベンダーや多くの企業・団体と協業しながら、5G 活用による新たなビジネスモデルや価値を創出していきたいと考えています。」
和歌山県立医科大学 循環器内科 地域医療支援センター 卒後臨床研修センター 講師 山野 貴司氏
「専門医から的確なアドバイスを受けられる遠隔診療は、各地に赴任した経験の浅い医師にとっても心強い存在となるはずです。また、災害や事故現場から小型エコーで撮影した映像を高速伝送するなど、緊急医療においても活用が期待できます。これからも、先進技術を積極的に取り入れて、地域全体の医療を支えていきたいと思います。」
国保川上診療所 所長 平林 直樹氏
「実証試験では、まるで県立医科大学の先生がとなりにいて、患部画像を一緒に見ているような臨場感を感じました。専門医からの意見は、患者さんにとって信頼感が高まるとともに、診療所の医師にとっても専門知識の蓄積というメリットがあります。こうした先進の医療サービスは、将来和歌山県以外にもぜひ広がって欲しいです。」
NEC ワイヤレスアクセスソリューション事業部 事業部長 近藤 誠司
「今回の実証試験において、高速大容量な5G無線技術により、山間部の医療サービスの向上に向けた取り組みに貢献できて光栄に思っています。今後も5G技術の性能向上を行い、NTTドコモ様や和歌山県立医科大学様と共創しながら、新しい医療サービスの実現に貢献したいと考えています。」
NECの超多素子AAS基地局システムは、ビーム形成の精度向上を実現するフルデジタル制御方式を採用しています。フルデジタル制御により、超多素子AAS1台から同時に複数方向にビームを形成し、空間多重により隣接したユーザと干渉することなく、高速・大容量通信を高効率に実現します。
NECは今後も、ネットワークの高速・大容量化と超大量接続を実現する超多素子AAS基地局システムの開発を進め、5G技術の実用化を目指すと共に、今回の遠隔診療のように5Gを活用した新たなサービスやビジネスの創出を目指し、通信事業者やパートナーとの共創にも取り組んでいきます。
NECグループは、安全・安心・効率・公平という社会価値を創造する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進ICTや知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
- (注)本試験はNTTドコモが実施主体として総務省から請負った、平成29年度「人口密集地において10Gbpsを超える超高速通信を可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討の請負」の一部として実施されました。
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