2015年3月25日
日本電気株式会社
NECは、NFV(NFV: Network Functions Virtualization、ネットワーク機能仮想化、注1)技術を活用し、複数の異なるベンダ環境で構成されたネットワークの性能設計(注2)を、従来に比べ約1/400(注3)の時間でできるソフトウェア技術を開発しました。
今回開発した技術は、ネットワークを流れるトラフィックデータから、高精度・リアルタイムにネットワーク全体の動的な状態変化を推定し、シミュレーションを行うことで、ルータやファイアウォール等のネットワーク機能の新規構築や増設などに伴う性能設計作業の自動化を実現するものです。 これにより、従来と比較して約1/400の時間でNFVネットワークの変更ができることから、通信事業者はユーザからのアクセス数の急増など、ネットワーク需要の変動が生じた場合においても、迅速・柔軟なサービス提供が可能になります。
NECは社会ソリューション事業に注力しており、その中核領域であるNFV/SDN事業の強化を進めています。今後もNFV/SDN関連の技術やソリューションを継続強化することで、ビジネスや暮らし、社会に貢献するICTシステムを実現していきます。 |
背景
近年、通話アプリや動画配信サービスの利用に向け、ネットワークリソースの需要が高まっていますが、これらのサービスはウェブ閲覧等のサービスとは異なり、サービスに必要なデータ量が急激かつ大きく変化するという特長を持っています。通信事業者がデータ量の変動に左右されず安定的にサービスを提供するためには、大容量のネットワークを確保する必要があるため、運用コストが課題となっています。
NFV技術は、従来専用ハードウェアを必要としていた「ルータ」や「ファイアウォール」などのネットワーク機能を仮想化し、汎用サーバ上でソフトウェア実装するものです。ソフトウェアでネットワーク構築を一括制御することで、構築に伴う時間の大幅な削減が可能になるとともに、需要に応じた機能増強が容易となるため、ネットワークサービスの効率的な運用が可能となります。
しかし、専用ハードウェアと同等の性能を出すためには、計算リソースやネットワークリソースの配分に工夫が必要なことから、「ネットワーク性能設計」は複雑となり、難易度も高いため、性能設計に要する時間の短縮や手間の低減など、運用の効率化が課題となっています。
今回開発した技術は、ネットワーク機能構成の性能設計の自動化を可能にするものです。ネットワークを新規構築・増築する際、機能の構成案と性能要件をシステムに入力するだけで、自動でネットワークの性能設計が可能になる事から、大幅な性能設計時間の短縮に貢献します。
新技術の特長
図1:ネットワーク設計時間の比較 |
- マルチベンダの環境でネットワークの性能把握が可能
ルータやファイアウォールなどのネットワーク機能は、ベンダごとに内部構造が異なっていることから、従来、それぞれの性能を正確に把握することはできませんでした。今回、ネットワーク機能の処理時間やリソース使用量など、外部から測定できるデータを基に性能の推定を実現にする「統計解析モデル」と、データのトラフィックの遷移を推定する「離散事象システムモデル」を独自に開発しました。これら2つのモデルを組み合わせて「ネットワーク性能モデル」を生成し、高精度(注4)にネットワーク全体の性能を把握することができます。機能ごとの性能推定が可能になるため、複数の異なるベンダの機能によって構成されたネットワークであっても高精度にネットワーク全体の性能把握を実現します。
- ネットワークの性能設計時間を従来比1/400と大幅に短縮
従来、NFVネットワークの新規に伴う構築・増設の性能設計を行う際、各ネットワーク機能の性能や動きをリアルタイムに把握することが難しかったことから、性能設計に時間と手間がかかり、運用の効率化が課題となっていました。今回、「ネットワーク性能モデル」を活用し、ネットワーク状態をリアルタイムに反映したシミュレーションが可能なることで、自動でネットワークの性能設計を実現します。これにより、従来と比較してNFVネットワークの増設を大幅に短縮することが可能になります。
NECグループは、「2015中期経営計画」のもと、安全・安心・効率・公平という社会価値を提供する「社会ソリューション事業」をグローバルに推進しています。当社は、先進のICT技術や知見を融合し、人々がより明るく豊かに生きる、効率的で洗練された社会を実現していきます。
以上
(注1) 「ルータ」や「ファイアウォール」などといったネットワーク機能を仮想化し、汎用サーバ上で稼働するソフトウェアとして実現する技術
(注2) ネットワーク機能のサイジングや、ネットワーク帯域のサイジング
(注3) 5営業日(6時間x5日=1800分)⇒数分で約1/400に短縮
(注4) 既存技術である待ち行列ネットワークモデルの誤差30%程度から、誤差6%程度に大幅に改善
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