2013年12月3日
日本電気株式会社
NECは、スマートフォンなどのモバイル端末のみで、3G/LTEや無線LANアクセスポイントを使わずに、多数の端末が集中した環境でも高速な情報配信ネットワークを構築する技術を世界で初めて開発しました。
大規模災害時など、通信事業者のネットワーク設備の損壊、通信の混雑、停電等により広域で通信が利用できなくなった場合、情報伝達はきわめて困難になります。また、日常生活においても、多くの人が一斉に集まるイベント会場やスタジアム、主要ターミナル駅などでは、無線通信を利用する端末が集中するため、通信速度の極端な低下が発生し、ネットワークにアクセスしにくくなるという課題があります。
こうした課題に対し、NECは、利用者が日常的に使用しているモバイル端末の端末間通信のみで、大規模で高速な情報伝達を可能にする技術を開発しました。
本技術により、通信インフラが途絶した状況や、通信端末が集中する過密環境でも、高速性を保ったまま、データ量の大きい写真や動画なども配信・共有することができます。従来の無線通信とは異なり、数万人が一斉に密集するスタジアムや混雑するターミナル駅などでも高速な情報共有が可能になります。
このたび開発した技術の特長は次のとおりです。
- 多数の端末に対するデータ欠落のないマルチキャスト配信を実現
従来のマルチキャスト配信は、動画やストリーミングのように、配信途中のデータ欠落を許容するアプリケーションにしか適用できなかった。これに対し、データ欠落の発生しない、DTN(注1)マルチキャスト配信技術を世界で初めて実現。送信側は従来と同じく一斉配信を行うだけで、配信途中のデータ欠落を多数の受信端末同士で補完しあうことにより、モバイル端末を持った人が一斉に集まり、パケットロスが頻発する過密環境でも、安定した大規模情報配信を実現。
- 端末の過密環境における通信速度の低下を抑制
多数のモバイル端末が密集して通信を行う場合は、著しい通信速度の低下が発生するが、これを回避する技術を世界で初めて開発。各端末に搭載したアプリケーションが、電波が届く範囲にある多数の端末の送信タイミングを自律分散的に数10ミリ秒から数100ミリ秒単位で制御。複数の端末からの同時送信を回避し、パケットの衝突(注2)を抑制することで、過密環境でも通信速度を低下させず、データ量の大きい写真や動画も高速に配信・共有が可能。
- 緊急性が高い情報を優先的に発信・拡散
ネットワーク全体の状況を把握し、情報の優先度に応じて各モバイル端末の送信タイミングを決定する技術を東北大と共同で開発。警報や応援要請など緊急性が高い情報を優先的に発信し、低遅延で広範囲に拡散することが可能。
NECは本技術を、地方自治体における災害情報配信・共有システムや、防災無線をはじめとした社会インフラネットワークに広く適用し、安心・安全な情報配信ネットワークの実用化を目指します。さらに、大規模イベントの会場など通信端末の過密環境における情報配信システムへの適用など、快適な情報配信・共有の実現に貢献します。
なお、このたび開発した技術は、平成24年度よりNECと東北大学が参画している、総務省の委託研究「大規模災害時に被災地の通信能力を緊急増強する技術の研究開発(災害時避難所等における局所的同報配信技術の研究開発)」の一環として進めてきた研究成果です。
【別紙】 モバイル端末のみで大規模な情報配信ネットワークを構築する技術を開発
以上
(注1) DTN(Delay/Disruption/Disconnection-Tolerant Network)
リンクの切断が多発したり大きな遅延が生じたりする不安定なネットワークにおいても、各ホップでデータの蓄積を行いながら通信可能時に小セグメント単位でデータの転送を行うことにより信頼性の高い通信を実現する方式。
(注2) データを送信している途中で、パケットがぶつかり合うことで消失し、データを送れなくなってしまう現象。
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私たちNECグループは、
「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現する
グローバルリーディングカンパニー」を目指しています。
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