2013年11月19日
日本電気株式会社
NECは、住宅やビル等に分散して設置された多数の定置用蓄電池や電気自動車(EV)の蓄電池を遠隔から直接操作し、個々の蓄電池の充放電を個別に制御する技術を世界で初めて開発しました。
再生可能エネルギーの導入拡大を進めていった場合、今後、電力需給バランスの短時間変動への対応が課題となります。本技術により、電力需要をリアルタイムにコントロールすること(リアルタイムデマンドレスポンス:以下 リアルタイムDR、
注)が可能となり、再生可能エネルギーの一層の導入拡大とそれによる低炭素で持続可能な社会の実現に貢献します。
現在、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及が推進されています。しかし、再生可能エネルギーによる発電は、天候に依存して発電量が急激に変動するため、普及拡大には、リアルタイムに電力需給バランスを調整する新たな仕組み(リアルタイムDR)が必要とされています。
これまで、分散する多数の蓄電池を用いて急激に変化する需給バランスの調整をするには、各蓄電池の充放電などの時間を完全に同期する必要があるため、実現は困難と考えられてきました。
このたびNECが開発した技術は、多数の蓄電池の同期を可能にし、新たな電力需給バランスの調整システムを実現するものです。
新技術は、(1)NEC独自のアルゴリズムで蓄電池の状態に応じた制御を行う「適応制御ソフトウェア」、(2)クラウド側のリモート制御と蓄電池側のローカル制御の2階層で構成される「階層協調制御システム」を中核にしています。これにより、分散蓄電池の台数によらず全体の同期をとりながら、需給バランスの秒周期の変化にも対応できる制御を行い、通信遅延などにも対応できる高信頼なリアルタイムDRを可能にします。
このたび開発した技術の特長は、次のとおりです。
- 独自の適応制御ソフトウェアにより、DRの継続性を実現
電力需給バランス調整の仕組みにおいて、蓄電池が導入された場合、全体の需給バランス状態の移り変わりに応じて、充電のみが要求されたり、放電のみが要求される、といったことが予想される。更に、需要家の蓄電池を用いたDRでは、需要家毎の蓄電池の使い方や、蓄電池の仕様の違いにより、電池の蓄電状態や制御可能な充放電出力にバラツキも存在する。これらにより、DRの充放電において、各蓄電池で満充電や枯渇(放電できない状態)が生じ、これ以上DRを継続できなくなる問題が発生する。
この問題解決のため、NEC独自の適応制御ソフトウェアにより、クラウド側で各蓄電池の蓄電状態を集中管理し、蓄電状態に応じて充放電を各蓄電池に配分することで、蓄電池の満充電・枯渇を回避し、DRの継続性を実現。
- 独自の階層協調制御システムにより、DRの高信頼・リアルタイム制御を実現
クラウド側のリモート制御と蓄電池側のローカル制御の2階層で構成される階層協調制御システムを構築。クラウド側では、電力会社が要求する需給バランス調整の総容量と、適応制御から導出される各蓄電池の状態に応じて、十数分間隔で各蓄電池に充放電の分担を割り当てる。同時に、蓄電池側では、各蓄電池に搭載したNEC独自の制御ソフトウェアで、全体の需給バランス状態をリアルタイムに把握しながら、各蓄電池の充放電の分担に応じて秒単位で充放電を制御する。
これらの制御においては、クラウドと各蓄電池との通信が十数分という長い間隔であるため、通信への依存が小さい。その結果、通信で一時的(通信間隔以内)に障害が発生しても制御の継続性を維持でき、高信頼でリアルタイムなDRを実現。
これらの技術により、再生可能エネルギーの活用時に求められる電力需給バランスの変動に合わせて、多数の需要家の蓄電池を最適なタイミングで継続的に充放電させることが可能となり、リアルタイムDRを始めとする、次世代電力システムの実現に貢献します。
NECは今後もスマートグリッドに適用する新技術を開発し、顧客の新たな価値創造と高度な社会インフラの構築に貢献していきます。
【別紙】 世界初、多数の需要家蓄電池の充放電を遠隔から制御、リアルタイム・デマンドレスポンスへの新技術を開発
以上
(注) アンシラリー・デマンドレスポンスを指す
アンシラリー・デマンドレスポンスとは、周波数調整(regulation)、瞬動予備力(spinning reserve), 待機予備力(non-spinning reserve)などの電力供給の信頼度を維持するための予備力として蓄電池などの需要側資源を用いたデマンドレスポンスを活用するもの。
現在、この役割は火力発電、水力発電が担っていますが、出力変動する再生可能エネルギーの導入増に対応して、より多くの予備力を確保する必要があり、コストを上げずに予備力を確保する方法としてアンシラリー・デマンドレスポンスが注目されています。
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