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印刷CNTトランジスタで世界最高の動作速度を実証 ~ シート型電子機器への応用を目指す ~

2013年9月24日
日本電気株式会社
TASC



NECとTASC(技術研究組合 単層CNT融合新材料研究開発機構、注1)は、大面積の電子回路を低価格で製造可能とする「印刷カーボンナノチューブ(CNT)薄膜トランジスタ」(以下 印刷CNT-TFT)において、高速動作させた際の寄生成分(注2)の低減と出力電流の向上に成功し、電子機器の制御回路への応用が可能な動作速度500kHzを実現しました。

印刷技術を用いて、あらゆる物の上に電子回路を形成するプリンテッドエレクトロニクスは、電子機器の製造を低価格かつ手軽に行えるとともに、薄いシート状や変形できる電子機器などを可能にする技術として注目されています。これらの電子機器を実現するためには、演算・スイッチングなどを行うための制御回路が必要であり、印刷で製造可能なTFTの開発が求められています。
NECおよびTASCが開発を進めている印刷CNT-TFTは、単層CNTの持つ導電性などの特長を活かした低電力で高速動作が可能な素子として注目を集めてきました。これまでNECは、CNTを使用しない一般的な印刷トランジスタの10倍以上の移動度(電荷の流れやすさ)を有する印刷CNT-TFTを実現していますが、電子機器の制御回路に応用するためには高速動作時の寄生成分の抑制や出力電流の向上が課題でした。
このたび開発した印刷CNT-TFTは、高速動作時の寄生成分を一般的な印刷トランジスタの1/10以下に抑えるとともに、数十倍の出力電流を実現することにより、一般的な印刷トランジスタの10~50倍の500kHzという動作速度を実現しました。これにより、制御回路に必要な性能を得ることができ、今後曲げられる大型ディスプレイや、多数のセンサを搭載したシートなど新しいデバイスへの応用が期待されます。
開発した技術をさらに高めることにより、数MHzを超える速度で動作する印刷CNT-TFTも期待でき、将来的には薄型の無線通信機器や紙のようなコンピュータへの応用が可能となります。

このたび開発した技術の特長は、次のとおりです。

  1. スーパーインクジェット(SIJ)印刷法での微細電極を用いることで寄生成分を低減
    これまでのTFTでは、電極同士の重なりが生じてしまい、その部分での寄生成分がトランジスタの出力電流を大きく上回ってしまうため、数10kHzを超える高速動作は困難でした。NECでは、極細印刷が可能なSIJ印刷法(注3)を用いて、極細の電極を形成することで電極同士の重なりを極限まで小さくし、寄生成分を一般的な印刷トランジスタの1/10以下に低減させることに成功しました。このことにより、出力電流に対する寄生成分の割合を低減させることができました。


  2. 高純度なCNTインクの採用により、高い出力電流を実現
    CNTインクを製造するため、半導体型成分と金属型成分で出来ている単層CNTの中から半導体成分のみを取り出す「半導体金属分離」を行う際に、CNT純度を98%(従来は95%)に向上させることに成功しました。また、分離に使用した溶液中に含まれる添加剤(CNTの分散安定剤)の除去手法を開発し、CNTインクにおける添加剤の含有量を1/50に低減させました。この高純度・低添加剤CNTインクを用いることにより、従来よりも高い導電率を示すCNT薄膜を実現することができ、大きな出力電流を示す印刷CNT-TFTを作製することが可能となりました。

このたび開発した技術の一部は、TASCが平成23年度より独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託された「低炭素社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」の成果に基づくものです。また、このたび開発した技術の一部は、東京大学との共同研究で進められました。

今後、これらの技術を、複数のトランジスタ素子を組み合わせた論理回路に応用し、さらに複数の論理回路を組み合わせた印刷制御回路に応用していく予定です。NECは、印刷CNT-TFTの研究開発を進め、より使いやすい電子機器への応用を目指します。

なお、NECは今回の成果を、2013年9月25日~9月27日まで福岡市で開催される「SSDM 2013」で発表します。
http://www.ssdm.jp/index.html


【説明資料】 印刷CNTトランジスタで世界最高速の動作速度を実証


以上



(注1) TASC: Technology Research Association for Single Wall Carbon Nanotubes

(注2) 寄生成分:配線の抵抗、また配線間・対接地間の静電容量や抵抗など

(注3) スーパーインクジェット(SIJ)法
一般的なインクジェット印刷法の1000分の1の体積を噴射させることができる印刷法。
直径1µmのパターンを描画することができる。


本件に関するお客様からのお問い合わせ先

NEC 研究企画本部 広報グループ
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