マネジメントフォーラム2019 in 広島
広島電鉄株式会社 取締役 交通政策本部長 仮井 康裕 氏

マネジメントフォーラム2019 in 広島の分科会にて、広島電鉄株式会社仮井氏よりご講演をいただきました。

  • 講師

    広島電鉄株式会社 取締役 交通政策本部長 仮井 康裕 氏

    <講師ご紹介>
    仮井氏は1983年に広島電鉄株式会社に入社、広島市内フィーダーバス路線の子会社化(「ボン・バス」=エイチ・ディー西広島㈱)や、呉市交通局からの全バス路線移管といったプロジェクトに、その準備段階から携わり事業を軌道に乗せてこられた。高速バスの新規路線開発に8年間、バス子会社化に6年間従事された。また、広島県下の交通系共通ICカード「PASPY」は立ち上げ当初から関わり、参加事業者29社、累計発行枚数180万枚に達している。呉市交通局よりバス事業を承継し、1日で切り替えを行う(190人動員)などの実績を積まれている。2014年に取締役バス事業本部長に就任され、2015年より現職につかれている。「わかりやすく利用しやすい」公共交通の実現を目指し、バスも電車も見ておられる。

    前田 育男 氏
  • 概要

    ●広島のご紹介

     ①Bridge(ブリッジ)⇒71か所存在
     ②Branch(ブランチ)⇒大手企業の支店が多い
     ③Bus(バス)⇒バス会社が7社も存在
     ④Baseball(ベースボール)⇒広島東洋カープ
     ⑤Bomb(原爆ドーム)⇒広島世界遺産
     ⑥Bar(飲み屋)⇒リーズナブル
     ⑦Bank(バンク)⇒地銀・都銀合わせて多数

    広島市は平地が狭く、土砂災害が多い。これは花崗岩で出来た山が多く、土砂がすぐに流れ出てしまうためである。橋が多いことも影響している。30数年前は山地を削って団地をつくって土地の有効活用を行っている。そのために坂道が多く、車は交通手段として欠かせない。

    ●広島電鉄の歴史

    広島は軍港があったため、1941年に大本営が置かれ、一時期首都化した。これは国の出先機関や物資が多く集まったためである。
    当時、大阪に本社を置いていた大林組が広島に軌道をつくろうとして大正元年に広島電気軌道が設立された。昭和初めに8社あったバス事業会社を併合し、バス事業も立ち上げた。1945年8月6日、原爆投下で街が燃えたが、その3日後の8月9日には一部区間にて電車運行を再開させた。
    広島電鉄の路面電車の特徴としては、全国及び海外からも不要となった車両を集め、走らせていることであり、まさに「動く電車の博物館」と称されている。

    ●広島電鉄の概要

    広島電鉄は鉄道事業、自動車(バス)事業、不動産事業を3つの柱としている。
    広島電鉄はこれまで、行政と一緒になって軌道と鉄道の融合・整備を行ってきた。広島港からすぐ駅に直結する、鉄道とバス間の乗り継ぎの整備(例えば待合所のエアコン整備やバリアフリー化など)、低床車両の導入、バス事業7社との調整で駅前バスの渋滞解消し、他地域へ配備するなどである。また、バス事業においてすでに電車で実施している同一区間運賃をバスに設けた。定期券もバス事業7社で共通化し、特定のバスしか乗れないという不便さを解消した。途中下車についても、最終地点に到着した段階で乗車地点からの運賃で算出する方式にした。バス停留所の切込み無し化(低床車両が増えてきたため、切込みにうまく寄れなくなってきた)にも取組んでいる。

    ●これからの広島~公共交通とまちづくり~

    今後ますます高齢化社会になってくることが想定される中、65歳以上の方が載れる交通ということに注力する必要がある。昨今、高齢者ドライバーの運転事故ニュースが散見されるが、高齢者の運転事故を無くすには運転する必要がない環境をつくること、即ち公共交通の便利化を図る必要がある。現在広島市では都市再生緊急整備地域として指定されており、広島駅周辺のコンパクトなまちづくりを目指して整備している(ひろしま都心活性化プランの策定)。駅前大橋ルートの整備や広島駅南口広場の再整備(電車が駅ビルの中まで入る)、宮島口地区整備事業(広島世界遺産の玄関口)、西広島駅周辺の再開発、広大跡地プロジェクトなどがそうである。
    観光事業においては経済効果が薄い。というのも広島までの交通の便が良いので京阪神で泊まって広島へ出かけるというスタイルが多いためだ。世界遺産は国内よりも欧米の方に人気があり、スポーツツーリズムについても広島東洋カープ・サンフレッチェ広島・広島ドラゴンフライズなどのスポーツチームの存在や、瀬戸内サイクルなど目玉は多い。広島はB級グルメ(お好み焼き、あなご飯、牡蠣料理など)が有名であり、安く済んでしまう。そのため、単価が高い夜の食事を広島で取っていただく方策が期待される。
    観光事業において、いかに便利・快適に過ごしていただけるかが課題となり、モビリティサービスが注目されている。モビリティサービスとは「移動が一つのサービス」であり、自動車の代替手段である公共交通を便利にするものであり、例えば支払方法、運賃体系、行先表示、時刻表などを統一して便利かつ分かりやすくする。ヘルシンキ(フィンランド)では「Whim」というサービスがあり、タクシー・トラム・バスが定額で乗り放題となっており、大変便利である。広島版MaaSの検討を早急に進める必要がある(MaaSとは、ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1 つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念)。
    広島の今後の目指す姿として、仮井氏はこう締めくくった。

     ①移動しやすい街
     ②住みやすい街
     ③(県外から)来て楽しい街

    これらをどう実現していくかが広島電鉄の課題であり目標であると。