全NUA 2018年度 ユーザー事例論文
受賞者インタビュー

 

最優秀賞を受賞されたMS&ADシステムズ(株)の執筆者の皆さまに執筆の動機、受賞の喜び、今回の経験で得たものなど、当事者ならではの「生の声」をインタビュー形式で紹介します。

最優秀賞

IoT活用における会議室利用状況の見える化システムの構築
〜若手層の新技術への挑戦〜

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    執筆者代表
    冨田 昌幸 氏
    MS&ADシステムズ 株式会社
    開発第六本部・副本部長 兼
    アプリケーション開発部
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    執筆者
    中村 隆一 氏
    MS&ADシステムズ 株式会社
    ITマネジメント本部
    システムデザイングループ・
    エンジニア
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    執筆者
    鏑木 智也 氏
    MS&ADシステムズ株式会社
    開発第一本部
    業務プロセス改革システム室・
    エンジニア
 

論文の概要
MS&ADシステムズは、MS&ADインシュアランス グループを支えるシステム中核会社として、損害・生命保険の基幹システムの企画・設計・開発を担っている。
2017年1月、若手社員から「IoTを活用した取り組みをやってみたい」という自発的な声が上がり、働き方改革や業務効率化につながる取り組みに対して、新しい技術を取り入れることとなった。取り組みのテーマを「会議室の有効活用」に決め、しっかりと現状分析を行い、開発・本番環境の早期構築を図るためのクラウド利用、機器選定・調達から設置、IoTの活用にRaspberry Piやビーコンを用いた仕組みまで、すべてを自分たちの手作りで安価に実現した。
本論文では、若手社員が意欲的にチャレンジし、テクニカルな部分もパートナーを頼らず自ら調べて構築。IoT活用によって作り上げたシステムのリリースまでに経験値として得た、工夫やノウハウ、苦労した点などについて記述しており、類似の活動を行う際の参考となれば幸甚である。


―― 会議室利用状況の見える化システムを構築した背景には、どのような課題がありましたか。

本社を高井戸から高田馬場に移し、分散していた拠点(千葉ニュータウン、聖蹟桜ヶ丘、竹橋など)の社員の約8割を本社勤務とし、開発の品質・生産性向上を目指すと共に、働き方改革として職場環境に工夫を施しました。
その一環として、フリースペースや個人集中スペースなどを設置し、働きやすい環境作りを行いました。一方、大規模プロジェクトが複数並走する状況のため、打ち合わせに使用する会議室の枯渇化が問題となってきました。そこで実態調査を行ったところ、会議室が予約で一杯だが、実際には使われていないというケースが30%もあることが判明しました。
この事実は、社員数に対して会議室が少ないというわけではなく、会議室の利用ルールが遵守されていないことが大きな課題だったことを物語っています。そこで、会議室を本当に今使っているのかを見える化したいという声が大きくなってきました。


―― システムにIoTを活用しようと考えられた理由をお聞かせください。

IoTは保険ビジネスにおいてもイノベーションを起こし始めています。MS&ADインシュアランス グループのIT戦略を担うMS&ADシステムズとしては、今後のビジネス戦略に対応することを見越し、社員がIoTを身近に活用することで、そのノウハウを蓄積しておくことが重要であると考えたのです。


―― 若手社員が自発的に手を挙げチャレンジしたそうですが、どんなプロセスでプロジェクトを承認し、開発体制を整えたのでしょうか。

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組織面では、アプリケーション開発部内にR&Dを担う体制を確立しているため、そのメンバーで体制を整えました。実担当は若手社員2名とし、組織長やマネージャは開発の進め方やレビュー、そして他部署との折衝などを担当しました。
若手2人がIoTを活用したいと手を挙げたときは、クラウド、Raspberry Pi、Pythonなどを使って、会議室の見える化を検知できる仕組みを作り、経験することを目的としていました。しかし、前述したとおり、会議室の枯渇化は、会社として解決すべき重要な課題となっていました。これを受け、正式なシステムとして構築するに至ったのです。


―― IoTの活用では、どのようなツールを選定し、どのような工夫をしましたか。

オープンソースソフトウェアでの構築や、極力安価で容易に手に入るデバイス(例.Raspberry Pi、SORACOM SIM)を選定し、低予算での実装を実現しました。
加えて、実運用を考慮し、以下の工夫を施しました。

  • ビーコンの電池交換を不要とするため、コンセント給電式を採用した。
  • 会議室に設置したRaspberry Piに改修の必要が生じた際、各会議室へ足を運ばなくてもすむようにリモートアクセスで自席からの対応を可能とした。
  • ビル内の計画停電や連続稼働による機器の消耗を防ぐため、全台シャットダウンや定期再起動等のジョブを組み込み、メンテナンスの効率化を図った。

―― システム構築をすべて手作りで行う上で、どのような苦労があり、どう克服していきましたか。

社内では初の試みのため、周りに有識者がおらず、すべて手探りの状態での開発なので、情報不足に苦労しました。そこで、まずIoT展や電気街をめぐり、情報の収集に努めました。
そして開発段階では、デバイスを購入し、トライアル&エラーをくり返し、東奔西走しつつ2人で協力しながら一つひとつ課題を克服していきました。


―― システム展開後の効果について、定量的と定性的、両面からの効果を教えてください。

定量効果としては、空予約が30%もあった状況から、2カ月後には12%にまで下がりました。その結果、約200回分の会議室の有効活用ができました。
一方、定性効果として得られた主なものには、次の3つがあります。

  • ① 社員一人ひとりが、利用する他の社員のために、ルールを遵守する意識が高まり、会議室利用におけるマナーが向上した。
  • ② 未経験領域であったIoT活用に対して、若手社員が積極的に取り組み、作り上げることで、若手層が成長を遂げた。
  • ③ 機器を購入した同ビル内の会社と情報交換会を開催するようになり、社外交流が広がった(副次的効果)。

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―― このような取り組みに対し、会社として今後どのようにバックアップしていかれますか。

弊社もデジタル人財の育成を中期経営計画に掲げており、これからも社員がトレンドなテーマに関われる機会を増やしていきます。具体的には、11月からクラウド、ビッグデータ、AI、ドローンなど、9つの社内研究会を立ち上げて活動を開始しています。


―― 論文執筆のきっかけと実際に書かれた感想を聞かせてください。

本取り組みは、社内の社長賞を受賞したこともあり、社長よりNUAユーザー事例論文に応募してみないかと促されたことが執筆のきっかけでした。
そして実際に書くことで取り組み内容の振り返りや知識の整理をすることができ、またノウハウを社内外に展開できるなど、論文として形にすることは非常に有意義でした。
今回、論文がありがたくもご評価いただけたことで、新たな活動への意欲が再燃しました。
今後、何等かのテーマで再投稿することも目指して新技術活用に挑戦していきます。


―― ユーザーフォーラムでご講演された感想など、今回の経験で得たものについてお話しください。

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さまざまな企業が参加するユーザーフォーラムで、1つのセッションとして講演をさせていただいたことで当社のプレゼンス向上に貢献でき、私達自身の社内での評価もかなり高めることとなりました。
「素晴らしい」と声をかけられるたびに味わう達成感と、さらにチャレンジしていきたいというモチベーションアップに繋がっています。
社外講演をするという経験はなかなか得づらいと思いますが、資料構成の検討から当日の緊張を含めて、自信と度胸を養う貴重な体験となりました。
また、フォーラムは普段関わることのない業種の方々と交流することができる素敵な場所でした。そこで伺った情報も新たな挑戦に活かしていきたいと考えています。

過去の受賞者インタビュー

 

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